身近な道具から「振り子の法則」を理解する|なるほどなっとく 中学受験理科
入試理科では、理科的思考力が問われる問題が出題されることが増えています。理科的思考力を養うためには、普段から身の回りの事象に興味を持ち、その原因を考察する姿勢が大事です。
今回は、身近な事象の中から「振り子の運動」について小川先生にお話を伺います。
必ず覚えるべき振り子の法則とは?
ひもの先におもりをつけたものを「振り子」と言います。私たちの身の回りにも振り子を使った道具があります。たとえば、振り子時計やブランコ、メトロノームなどです。
振り子をテーマにした問題が入試で出題されることがありますが、覚えるべき法則はたった一つだけです。それは、「振り子の長さ」が同じなら、おもりの重さや、振幅の大きさに関係なく、周期(振り子が1往復するのにかかる時間)は同じになることです。
たとえば、同じ長さのひもに、鉄と木でできた球をそれぞれつけて振ったとします。同じ高さから手を離した場合、鉄球の方が重いので勢いがついてスピードが速くなり、周期が短くなるのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、周期は同じです。
これを、「振り子の等時性」といいます。
振り子の等時性を最初に発見したのは、16世紀の科学者のガリレオ・ガリレイだといわれています。ガリレオは、教会のランプが揺れているのを見て、大きく揺れているものも、小さく揺れているものも、揺れる時間は変わらないことに気づきました。そこから、振り子の長さが同じものは1往復する時間は変わらないことを発見したそうです。
ブランコや振り子時計で、振り子の法則を考えてみる
今度は、身近なもので振り子の法則を考えてみましょう。
身近な振り子といえば、公園のブランコです。前述したとおり、振り子の周期に重さは関係ないですから、大人が乗っても子どもが乗っても周期は同じです。しかし、大人でも子どもでも立って漕いだときと座って漕いだときでは周期が変わります。なぜなら、座って漕ぐ方が重心が下がり、振り子の長さが長くなるからです。
ちなみに重心とは、物体の重さが集中していると考えることができる点で、そこを支えることでその物体のバランスがとれる点です。
振り子の長さは、ひもや鎖そのものの長さではなく、おもりの重心までの距離であることを覚えておいてください。
振り子時計は、振り子の等時性を利用しています。つまり、おもりの重さや振れ幅が変わっても、棒の長さが同じであれば周期は同じですから、規則正しく時を刻めるのです。ちなみに夏は、振り子時計の進みが遅くなることがあります。なぜなら、暑さで金属製の棒が膨張して長くなるからです。振り子時計をよく見ると、おもりの下にねじがついているものがあります。これは、ねじを回して振り子の長さを調整するためについています。
入試ではどんな問題が出題される?
入試では「振り子の等時性」に関する問題が出題されることがあります。過去問の中には、ブランコを取り上げたものもありました。ほかに振り子の問題として代表的なのは、振り子の長さと周期の関係を考えさせる問題です。振り子の長さを変えて周期を測る実験結果を見て、どのような法則性があるかを考えさせます。
じつは振り子の長さと周期には関係性があります。地球上では振り子の長さが100cm(1m)のときの周期は2秒です(重力の関係で、北極、赤道など、測る場所でわずかに周期は変わります)。そして、振り子の長さと周期(秒)には下記のような関係性があります。
表を見ると、長さが25㎝のときの振り子の周期は1秒なのに対して、100cmのときは2秒、225㎝のときは3秒になっています。つまり、振り子の長さが4倍になると周期は2倍、長さが9倍になると周期は3倍になります。
振り子の長さと周期の関係がわかりやすいように、上の表ではキリの良い数字を示していますが、入試では、このようにキリのいい数字になっていないこともあるので、上の表を覚える必要はありません。実験結果を見ながら法則性を見つけて振り子の長さや周期を考えるのですが、表をきちんと読み取る力が必要です。
振り子は覚えるべき法則は少なく、きちんと理解できれば得点源になります。振り子を理解するには、家庭でひもの長さやおもりを変えて周期を測ったり、周期からひもの長さを考えてみたりして、振り子に親しむことが第一歩です。ブランコも振り子の法則を実際に体感できる格好の道具ですから、ぜひ親子で遊びながら、いろいろと考えてみると理解が深まると思います。
※記事の内容は執筆時点のものです
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