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中学受験に役立つ家族旅行ってあるの!?|低学年のための中学受験レッスン#15

専門家・プロ
2023年5月29日 宮本毅

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私が小学生のころ、母親に「あんたは本当に連れて行き甲斐のない子だね」とよく責められていました。両親には幼いころから本当にいろいろなところに連れて行ってもらいましたが、その時の記憶がほとんど残っておらず、思い出話をされても「どこだっけ?そこ」というリアクションをするばかりだったからです。

せっかくいろいろなところに出かけても、子どもの記憶にほとんど残っていないのでは親としてはガッカリですよね。その気持ちはとてもよくわかります。私も毎年のように自塾の生徒を色々連れ出すのですが、生徒たちにとって楽しかった思い出は「丘の上でお弁当を食べたこと」や「バスの中でお友達とおしゃべりしたこと」など、勉強とは関係のない出来事であることが多いからです。

しかし、こういった『お出かけ体験』が、受験にとって無駄であるかといえばそんなことはありません。

私は小5から中学受験塾に通い始めたのですが、社会の授業で、聞き馴染みのある地名が次々に出てきたのです。両親とともに日本各地を訪れた記憶は、決して完全に消去されてしまったわけではなく、単に頭の引き出しにしまわれていただけで、きっかけさえあればきちんと思い出せるものだったのです。

こうした自らの経験もあり、私はたとえ生徒たちがその時は覚えていなくとも、できる限り外に連れ出して実際に目で見て体験させようと、毎年のイベントを継続しています

今回は、この経験をもとに、中学受験を考えている家庭におススメの旅行先をご紹介します。そろそろ夏休みの予定も考えなきゃ、なんて方はぜひ参考にしてくださいね。

中学受験生にぴったりの旅行先おススメ3選

ではどんな場所であれば、将来の子どもの中学受験に役立つのでしょうか?

今回の記事では国内旅行に限定して考えてみますが、正直どこでもいいと私は思います。宿泊地が中学受験では全く出題されないような場所であったとしても、その道中で見聞きしたものは体験の記憶として残ります。車窓から見えた景色やサービスエリアで食べた食べ物などの記憶と結びついて、塾で習ったときに記憶を強化するのに役立つでしょう。楽しい記憶と結びついたものならなおさらです。

とはいえ、目的地としてあえておススメを挙げるならば、1位「奈良」、2位「鎌倉」、3位「広島」ですね。

おススメ第1位:奈良

1位の「奈良」のおススメポイントはなんといっても中学受験でなじみ深い名所旧跡にあふれているところです。東大寺大仏殿・東大寺南大門・東大寺正倉院・興福寺阿修羅像・薬師寺東塔・唐招提寺・平城宮など、奈良市内だけでもこれだけ見るところがあります。レンタサイクルを借りれば一日ですべて回れる点も魅力的です。

また南の方に足を伸ばせば、法隆寺はもちろんのこと、高松塚古墳・キトラ古墳・箸墓古墳・石舞台古墳など多数の古墳がそこかしこに点在しています。奈良県内を車で走っていて小高い丘を見かけたら、ほぼすべてが古墳です。そんな体験ができる県は他にありません。しかも京都に較べて観光客が少ないのも大きな魅力のひとつでしょう。

おススメ第2位:鎌倉

2位の「鎌倉」も中学受験とはとても親和性の高い都市です。たとえば、中学受験社会の定番記述に「鎌倉は三方を山に一方を海に囲まれ、守りやすい地であった」という内容がありますね。いくつもあるハイキングコースのどの道を通っても、実際に自分の目で確かめることができるでしょう。

鎌倉というとどうしても「大仏」「長谷寺(あじさい寺)」のイメージがあると思いますが、そうした観光地は避け、ぜひハイキングコースをめぐって「切通し」などを見学してみてください。映画「シン・ゴジラ」の撮影場所にもなっているスポットもありますので、探してみてくださいね!

おススメ第3位:広島

3位の「広島」ですが、まずは宮島にわたって厳島神社の大鳥居を見てください。干潮時と満潮時の違いを体感することでそのメカニズムを学ぶのもよいでしょう。また壮大な寝殿造りの意匠を感じるのもよいでしょう。宮島には弥山(みせん)という信仰の対象の山があります。ロープウェイを使えば往復2時間半ほどで行って帰ってこられます。山頂からの多島美の眺めは圧巻です。広島市内の原爆ドーム平和記念資料館も必見です。現実の戦争はゲームや映画の中のような「カッコイイ」ものでは決してなく、悲惨で残酷なものだということが体感できるでしょう。精神的に成長することは中学受験においても非常に重要な意味を持ちます。

おススメ番外編:スキー

お勉強とは直接関係ないのですが、私は受験生の皆さんには「スキー」に行くことを強くおススメしています。スキーというスポーツは、ひとたびリフトに乗って上がってしまえば、もうどうやったって下まで降りていくしかありません。転んでも何しても、なんとかして下りるしかないのです。「つらい」状況を回避したくても、逃げることは不可能です。こうした「のっぴきならない状況」に追い込まれると、人間というものは不思議と開き直って困難に立ち向かうことができるようになります。スキーこそ、強いメンタルを育てるに最適なスポーツであると私は考えます。

またスキーの良い点は、最初の二日くらいは何度も転んで痛い思いをしたり、緩斜面も急に感じて恐怖を覚えたりするものですが、案外すぐに慣れて恐怖や痛みを克服して楽しくなります。この体験は中学受験で最初はお勉強が辛くて苦しいのですが、できるようになるとどんどん楽しくなっていくのにとても良く似ています。ぜひ取り入れてみてください!

旅行に学習効果を期待するなら、事前準備を怠らない

本格的に中受対策が始まると、家族旅行ってなかなか行けない雰囲気がありますよね。塾の先生も「受験生が長期の旅行に行くなんてとんでもない」と言うでしょう。ですからこうした旅行は、受験が本格化する前、低学年のうちに行っておくのがよいのかなと思います。

また、旅行に行くとなれば、保護者の方もぜひ、経由地の特産物や目的地の歴史や地理、関連する知見を広めておいてください。何気ない会話の中にそれらを織り交ぜることで、お勉強と意識させず楽しい旅行気分のまま、さまざまな知識を定着させることができるでしょう。子どもは「お勉強」と感じた瞬間に、心のシャッターを下ろしてしまうもの。さりげなく会話に織り交ぜるための事前準備はとても大切だと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅

宮本毅

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  • この記事の著者

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)