中学受験ノウハウ 入試の傾向

【麻布】2018年入試の分析からみる麻布入試の傾向と対策とは

専門家・プロ
2018年5月14日 中田ボンベ

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2018年3月14日に、『中学受験情報局 かしこい塾の使い方』と『中学受験専門個別指導教室 SS-1』、そして『家庭教師 名門指導会』の3団体が「2018年入試分析からわかる! 2019年入試に向けてすべきこと」というイベントを共催しました。今回は、この中で紹介された麻布中学校(以下「麻布」)の「算数」と「理科」、そして「社会」の傾向についてまとめてみました。

麻布 入試算数の傾向と対策は?

算数では「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」の主任相談員・西村則康先生による解説が行われました。そのなかで西村先生が解説した、麻布の算数問題の傾向と対策をまとめました。

2018年入試の算数問題は「解法パターンが役に立たない」

麻布の算数問題の特徴は、一般的な解法パターンが役に立たない問題が例年多く出題されることです。「つるかめ算」など一部の問題は、解法パターンが使えますが、それ以外の問題は、どうしたら解けるか試行錯誤しながら考える必要があります。これは2018年入試も同じで、解法パターンが役に立たない問題ばかりでした。

2019年の算数入試に向けてやるべきことは?

これまでの解法パターンが役に立たない問題を解くためのキーワードは「試行錯誤する力」。これは表面的な学習や、嫌々学習しても身につくものではないと西村先生は話します。つまり「楽しみながら学習すること」が麻布の問題を解くうえで大事なのだそうです。

小4・小5から『ああでもない、こうでもない』と楽しみながら考える習慣がつくとよいでしょう。自由きままに考えるのではなく、問題文などの指示を理解して進めることが大事です。試行錯誤するという作業自体を楽しみ、粘って考えるという熱中力が身につけば、受験に強くなれるといえそうです。生まれ持った地頭勝負ではなく、上述したような学習の姿勢で培われる力を、麻布は求めているということです。

麻布 入試理科の傾向と対策

理科は「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」の主任相談員の一人である辻義夫先生が登壇し、2018年入試の理科問題について、問題傾向などを解説しました。

思考力を問う麻布の理科問題

麻布の2018年の理科問題では、「土星の衛星であるタイタンに、探査機カッシーニが送り込まれたこと」をテーマにしたものが出題されました。

探査機カッシーニについて知識がある子供は興味を持って解けたであろう問題ですが、そうでない子供にとっては初見の内容です。「初めての問題にも興味を持って考え、取り組むことができるか」という思考力を試す問題が出されるのが、麻布の特徴とのこと。

辻先生によると、こうした「思考系問題」が近年のトレンドになっており、麻布以外の難関校も同様の傾向にあるとのこと。今後もこの傾向は続くであろうと分析しています。

思考力を問う問題はどう対策すべきか

麻布で出題されるような思考力を問う問題を攻略する鍵として、辻先生は「理科のアンテナをしっかりと張ること」を挙げています。

麻布の問題は、理科のアンテナを張っているかが試される典型的な問題が多く、普段から理科の話題・問題に関して興味を持って取り組めているかが求められます。そうした「なぜ」という興味・関心があれば、初見の問題に対しても深く考察することができ、答えにたどり着ける可能性が高くなります。

興味・関心を持たせるには、理科の学習内容を身近なものに落とし込んで説明したり、子供との会話の中で天体ショーなど理科的な話題を取り入れるなど、普段から生活のなかにある事象に対して興味を抱きやすいような環境づくりが重要とのことでした。

麻布 入試社会の傾向と対策

次は社会についてです。社会では「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」の馬屋原吉博先生が、麻布の問題傾向や今後の勉強法について説明しました。

文で答える問題が半数以上を占める麻布の社会

麻布の社会は非常に特徴的で、問いの半数以上を文で答える問題が占めます。しかも「塾で解いたことがある問題」は少なく、問題文を読み、何が問われているかを考えたうえで、受験勉強の中で学んできた知識をもとに、答えを組み立てていく必要があります。

2018年の麻布の問題も例に漏れず非常に高いレベルの問題が多く、最後の論述は、報道やネットをきっかけに非難が殺到する事象、いわゆる「炎上」について、「集団の感情が燃え上がる背景」について語らせる問題でした。

こういった世の中のさまざまな事象について語らせる問題で得点するには、答えを考えるための材料となる知識を持っておく必要があります。当然のことながら、こうした知識は一朝一夕で身につくものではありません。では、親としてはどんなサポートができるでしょうか。

求められているのは「世の中について語る力」

馬屋原先生によると、子供が麻布を受験する可能性が出てきた時点で、親は社会の問題にざっと目を通しておくべきだ、とのことでした。

必ずしも本気で解く必要はありませんが、10年分も目を通せば、麻布の先生たちがどんな話題が好きなのか大体わかりますし、6年の2月に子供がその問題を解ける状態になるためには、ただ塾に通わせているだけでは難しいのではないか、ということもわかります。

そのうえで、麻布の入試問題で問われそうな話題に関わるニュースが世間で取りざたされているときは、ぜひ家庭で話題にあげて欲しい、というのが社会の先生のお願いのようです。「世の中について(ある程度)語れる」状態を目指して、日常生活のなかで子供と社会問題について話し合い、多くの情報について知り、考える機会を設けてあげることが重要とのことでした。

また、麻布の社会は、過去の入試問題と似たパターンの問題が出題されたり、過去に出題されたテーマが10年越しで帰ってきたりすることがあります。そのため、過去問を多く(10数年分)解くことも効果的です。もちろん、SAPIXのSSや早稲田アカデミーのNNといった志望校別の講座に通い、類似問題に取り組み続けるのも有効な対策です。

「思考力や探求心」が重要

麻布の算数、理科、社会の入試問題は全体的に「思考力」が重要だといえそうです。ただの暗記ではなく、「なぜこうなるのか」と常に考え、興味を深めて探求していくことが、一歩踏み込んだ理解につながります。親としては、日常生活のなかで多くの知識を得られる環境を意識し、「思考し、探求する姿勢づくりのサポート」をするべきですね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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