
金星の見え方を図で理解する! 地球との位置関係がわかれば暗記は必要ない
中学受験理科の天体分野では、太陽や月だけでなく、他の天体が問題になることがあります。その中でも金星はよく出るので、基本的な知識を押さえておく必要があります。特に金星の見え方に関する問題は受験生が苦手としがちです。理屈からしっかり理解できるように、わかりやすく解説します。
金星とはどのような天体か?
金星の見え方の前に、金星に関連する基本的な知識を解説します。これらの知識は中学入試でしばしば問われます。基本の知識がない状態で、その場でいきなり考えてもわからないので、しっかり理解しておきましょう。
内惑星と外惑星
【問題1】東京からは真夜中に金星を観測できません。その理由を説明しなさい。
太陽系の惑星は、公転軌道が太陽から近い順に、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星と並んでいます。このうち、地球よりも太陽に近い軌道を公転する(地球より内側を公転する)水星・金星が「内惑星」で、火星から海王星が「外惑星」です。
深夜に金星を観測するためには、地球から見て金星が太陽の反対側にこなくてはいけませんが、内惑星である金星は、その位置にくることはないわけです。【問題1】の答えは「地球よりも内側を公転するから。」です。
地球型惑星と木星型惑星
【問題2】金星は地球とつくりが似ている惑星です。どのような点が似ているのかを説明しなさい。
金星には固体の大地があり、密度が高いのが特徴です。このような惑星を「地球型惑星」といいます。水星・火星も地球型惑星です。一方、木星から海王星はガスでできていて、密度が低いという特徴があるため、「木星型惑星」に分類されます。したがって、【問題2】の答えは「固体の大地があり、密度が高い点。」です。
ちなみに、金星は表面の温度が460℃で、硫酸の雨が降り、秒速100mの風が吹きます。地球とつくりが似ていても、人間が住める環境ではありません。
金星の見え方を図で理解する
金星の見え方については、知識として暗記するのではなく、図をもとにその場で考えることが大切です。図が与えられるとは限らないので、自分で描けるようにしましょう。
地球から見た金星の形
次の図のように、太陽を中心として金星と地球の公転軌道を描きました。アからクは金星です。
ポイントは、北極側から地球を見た図を描くことです。そうすると、地球の自転・公転、金星の公転は全て西から東(ちなみに金星の自転は東から西です)なので、これらの向きを反時計回りに決定できます。
また、地球と金星は、太陽の光が当たっていない部分を黒く塗りつぶします。
この図を使って、エの位置にある金星の見え方を考えましょう。具体的には以下の手順通りに作図します。
- 地球の中心(北極)と金星の中心を結びます。
- 金星の中心を通り、1の線と垂直な線を引きます。
- 2の線より地球側を見て、金星の見え方を判断します。
エの金星は図1の水色部分が見えるので、肉眼で観測した場合は図2のようになります。一方、上下左右が逆になる望遠鏡で観測した場合は図3のようになるので、問題文をしっかり読んで左右を間違わないようにしましょう。
上で紹介した手順に従うと、アからクまでの金星を肉眼で観測した場合の見え方は次の通りです。
金星は地球から離れれば離れるほど小さく見えるので、たとえばクの金星はカの金星よりも小さく見えます。
アの金星は太陽の陰に隠れるので、実際には観測できません。このように、金星・地球・太陽が一直線に並び、地球から見て金星が太陽の反対側にある場合を「外合」といいます。
一方、オの金星も太陽の光が当たらない部分が地球の方を向いているので観測できません。このように、金星・太陽・地球が一直線に並び、地球から見て金星が太陽の手前にある場合を「内合」といいます。
金星が見える方角と時間帯
【問題3】ある日、東京で明け方に金星を観測しました。このとき金星が見える方角を東西南北で答えなさい。また、肉眼で観測できる金星の形を次のアからエから一つ選び、記号で答えなさい。
金星に限らず、天体の問題では東西南北の方角がよく問われます。地球の中心から線を引くだけでは方角がわからないので、地球を拡大して考えましょう。下の図のように、北極側から見た地球を描きます。
太陽の光が当たる部分が昼、当たらない部分が夜なので、夜から昼へ変わる時間帯が明け方です。北半球にある東京が明け方になるときの方角は、北極を向いている方角を北として南東西を決定します。この図から、金星が見える方角が東であるとわかります。
また、金星は水色部分が見えるので、肉眼で観測できる金星の形はエです。
【問題3】のように、明け方に東の空で観測できる金星を「明けの明星」といいます。一方、夕方に西の空で観測できる金星は「宵の明星」といいます。
金星の見え方を暗記しないために
金星の見え方を暗記で済ませようと考える受験生がいるかもしれません。しかし、理屈抜きで暗記しようとしても記憶に残りにくい上、入試本番の緊張状態で混乱する可能性もあります。図を描いてその場で考えられるようにすることが大切です。
※記事の内容は執筆時点のものです
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