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浮力の求め方をわかりやすく解説! 力の図示やつり合いを使って計算問題を攻略する

2023年10月30日 みみずく

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中学受験生が理科で苦手としがちなのが浮力の計算問題です。浮力は物理分野の最後に出てくるため、塾では5年生の後半で学ぶことが多いでしょう。今回は、「浮力とは何か?」という基礎から具体的な計算方法までをわかりやすく解説します。

浮力の求め方を理解する

浮力の計算問題を考える前に、「浮力とは何か?」を理解し、浮力の大きさを求める方法を理解しましょう。

浮力とは何か?

「浮力」という言葉から、「水中にある物体を浮かせる力=水中にある物体にはたらく上向きの力」というイメージが湧くでしょう。しかし、このイメージだけでは計算問題を解く手がかりになりません。

中学受験生は「浮力」を「物体が押しのけている水の重さと同じ大きさの上向きの力」と覚えましょう。これを「アルキメデスの原理」といいます。

浮力の計算問題では多くの場合、「水1cm\(^3\)の重さを1gとします」という条件が与えられます。この条件に従うと、50cm\(^3\)の物体が水中に完全に沈めば、その物体に50gの浮力が生じることになります。ただし、50cm\(^3\)の物体でも、水中に沈んでいる部分が30cm\(^3\)の場合、この物体に生じる浮力は30gです。

浮力が生じる理由

水中にある物体は水の力を受けます。ただし、水の力には次の性質があります。

  • 水の力は水深に比例する。
  • 水の力はあらゆる方向からはたらく。

このことをふまえて、水中にある物体と、これにはたらく水の力を描くと次の通りです。

図より、水平方向では、互いに反対向きで大きさも等しい力が打ち消し合います。一方、垂直方向の力は、物体の上面にはたらく下向きの力よりも、下面にはたらく上向き力の方が大きくなり、打ち消し合いません。その結果、残った上向きの力が浮力となります。

浮力の計算問題を解く

浮力の計算問題では、物体にはたらく力を矢印で描き、力のつり合いの式を作って解くのがコツです。

浮力の計算問題の基本

【問題1】体積100cm\(^3\)、重さ80gの物体Aがあります。これについて、次の問いに答えなさい。ただし、水1cm\(^3\)の重さを1gとします。

(1) Aを水に浮かべたとき、水面より上に出ている部分の体積は何cm\(^3\)ですか。

(2) (1)のAをばねばかりでつるして、水面より上に出ている部分を70cm\(^3\)にしました。このとき、ばねばかりは何gを示しますか。

浮力の計算問題に限りませんが、物理分野の計算問題を考えるときは、物体にはたらく力を矢印で描くことからスタートしましょう。中学受験理科に登場する力には次の2つがあります。

  • 重さ(重力)
  • 触れているものから受ける力

(1)では、次の図のように、Aの重さ80gと、Aに触れている水から受ける浮力を描きます。

水に浮かんでいるとき、Aは上下に動かないので、上向きの力と下向きの力はつり合っていると考えられます。したがって、浮力=Aの重さ=80gです。水1cm\(^3\)の重さが1gなので、80gで押しのけられる水の体積は80cm\(^3\)となります。したがって、答えは100-80=20(cm\(^3\))です。

(2)も図を描くと次の通りです。Aにはたらく力は、Aの重さ、Aに触れている水から受ける浮力、ばねばかりが引く力です。

Aは、水面より上に出ている部分が70cm\(^3\)になったので、水中に沈んでいる部分の体積は30cm\(^3\)です。したがって、浮力が30gとわかります。

ばねばかりが引く力を□gとすると、力のつり合いを考えて上向きの力の和=下向きの力の和となるので、□+30=80より□=50(g)が答えです。

浮力の計算問題の応用

【問題2】100gのビーカーに水を200cm\(^3\)入れ、体積が150cm\(^3\)の物体Aを水に浮かべて、台はかりで重さをはかりました。これについて、次の問いに答えなさい。ただし、水1cm\(^3\)の重さを1gとします。

(1) 台はかりが400gを示したとき、水面より上に出ているAの部分の体積は何cm\(^3\)ですか。</p

(2) (1)のAをばねばかりでつるし、ばねばかりが30gを示すようにしました。このとき、台はかりは何gを示しますか。

【問題2】のように、ビーカー、水、物体といった複数のものの重さを考える場合、これらをまとめて1つの物体と考えると問題を解きやすくなります。今回は「ビーカー+水+物体A=物体B」と考えます。

台はかりが物体を押す力は台はかりが示す値に等しいことにも注意しましょう。

(1)は、Bの重さと台はかりがBを押す力(台はかりが示す値)が等しいので、Bの重さは400gです。この400gからビーカーと水の重さ(水1cm\(^3\)の重さが1gなので、200cm\(^3\)で200g)を引いた100gがAの重さです。

Aだけを見ると、Aの重さとAにはたらく浮力が等しいので、Aにはたらく浮力は100gとわかります。水1cm\(^3\)の重さが1gなので、100gで押しのけられる水の体積は100cm\(^3\)となります。したがって、答えは150-100=50(cm3)です。

(2)も、Bにはたらく力を描くと、次の図のようになります。

台はかりがBを押す力を□gとすると、力のつり合いを考えて上向きの力の和=下向きの力の和となるので、□+30=400より□=370(g)が答えです。

浮力は融合問題になりやすい

浮力はてこやばねなどとの融合問題になりやすいので要注意です。しかし、力を図示したり、力のつり合いに注目したりすれば、他の力の計算問題と一緒に理解できます。融合問題だからといって避けるのではなく、一つ一つの手順を確認しながら解いてみるとよいでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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