「家から近いのがいい塾」は本当か? 徒歩圏内の地元塾に通うことのデメリットも。書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く#8
中学受験の新学年は2月スタート。今の時期は、塾選びに本腰を入れておいでのご家庭も多いことでしょう。
さて、ある塾の経営者がいいました。「家から近いのがいい塾」。確かにそうでしょう。
徒歩圏内や一駅ぐらい向こうにある塾なら、通塾に子ども本人も負担がありませんし、塾のお迎えも楽です。自習室に通って勉強をしたり、宿題で分からないところがあれば塾に行って講師に質問もできます。
しかし、家の近くの塾に通うデメリットはないのでしょうか。
『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)の著者で、塾事情に詳しいノンフィクションライターの杉浦由美子さんにお話を伺います。
Contents
家から近い塾のメリットは大きい
――「家から近いのがいい塾」。この意見をどう思われますか。
私自身、中学受験のときに、家から徒歩10分の個人塾に通っていました。図形の問題が苦手でしたが、塾長さんが根気よく教えてくれたのを覚えていて、今でも感謝しています。
週末は電車に乗って大手塾の授業を受けに行っていましたが、通うのに体力的な負担を感じました。
なので、近所の塾がいいという意見には納得です。
とくに今、中学受験生の家庭は大半が共働き世帯ですから、電車や車を使って送り迎えをしなくてもいいのは助かりますよね。
子どもは通いやすく、保護者も講師と距離が縮まる
地元密着型の塾だと、ママたちが夕飯を作るついでに塾弁も詰めて、塾に持ってくるということもあるそうです。
そうやって保護者がマメに塾に顔を出すと、校舎長や講師ともコミュニケーションが増えますし、情報も入ってきますよね。
「あの学校の美術部は活動が盛んで、美大の先生が指導にくるそうですよ」「あの学校はお弁当のデリバリーは500円で、おいしいそうですよ。」といった学校に関する些細だけど大切なデータを得ることもできそうです。
それに保護者と講師の距離が縮まると、講師もその保護者の子どもに目をかけますよね。
小学校の人間関係を塾に持ちこむことのデメリットも
――いっぽうで、近所の塾のデメリットはありますか。
同じ小学校の児童が集まるので、それがトラブルになりかねないということです。
成績マウントでのいじめは、今でも起きている
成績上位層が、下のクラスの子をいじめるというケースは、残念ながら今でもあります。
また、その反対のケースも。
あるご家庭の息子さんはおとなしくて、学校で若干いじめられることがあったそう。
そのため、男子校に行った方が居場所を作れるんじゃないかと思って、中学受験のため、近所の塾に入れました。
そうしたら、半年後にはその塾でトップの成績になりました。成績で席が決まるから息子さんが一番なのは丸わかりです。
結果、同じ小学校の塾生たちから攻撃が始まったそうです。
「陰キャのくせに一番なんて生意気な!」ってことなんでしょう。
それで塾を変えることになって、結局、電車に乗って通塾することになったそうです。
いじめトラブルが起きたらどうする? 塾は対処してくれるのか
――今でも塾内のいじめなんてあるんですね。受験生の保護者世代だとよくあったと思いますが。
私も驚きました。取材しているとわりとそういう話を聞きますよ。
トラブルに対応してくれる塾を選ぶ
いじめられた場合の対策としてはまず、塾に相談することですが、キチンと対応してくれるところとしてくれないところがあります。
大手塾の多くは、まずちゃんとしてくれるのではないでしょうか。実際、浜学園、希学園や四谷大塚ではちゃんと対応をしてくれたという例を聞いています。
大手塾は比較的、コンプライアンスがしっかりしていることが魅力です。
中~小規模の塾や個人塾は、差がありますね。中には成績がいい子を守って、他の子たちを切り捨てる塾もあります。
トラブルが起きにくい塾風を選ぶ
――そうした、偏差値カースト関連のトラブルを避ける方法はありますか。
中学受験で中堅校を目指すのであれば、偏差値カーストを煽らない塾風のところに入れることですね。
「高い偏差値が偉い」という価値観をたたき込むから、生徒が偏差値の上下で諍いを起こすわけです。
いっぽう、”煽らない”塾は競争意識が緩くなるから、中堅校対策の塾になりますね。
中堅校対策の塾でも難関校を目指すことはできますが、多少は不利にはなります。
家から離れた塾を選ぶ
「なにがなんでも難関校」を目指すなら、「偏差値カーストで煽らない」といった塾風の穏やかさは諦めて、難関校対策が得意な、合格実績が高い塾に通った方がいいでしょう。
その場合、同じ小学校に通う子が多い塾よりも、同じ小学校の子がいない塾に電車に乗って通うほうが、いじめのような集団によるトラブルは起きにくいです。
志望校やお子さんの性格に合った塾を是非選んでいただきたいです。
※記事の内容は執筆時点のものです
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