中学受験ノウハウ 志望校選び

中高一貫校で盛んなアクティブラーニングは、子供のどんな能力を伸ばす?

専門家・プロ
2018年5月24日 鈴木恵美子

今、教育の世界で注目されている「アクティブラーニング」。従来のように先生が一方的に教える形ではなく、先生と生徒、あるいは生徒同士が協力しながら能動的に学んでいく学習方法です。この学びの手法がなぜ現代に必要とされているのでしょうか? また、中学受験で入学を目指す中高一貫校では、アクティブラーニングがどのように実践されているのでしょうか。子育てママを応援するプラットフォーム「Mother Quest」代表で、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに聞きました。

「21世紀を生きる力」を育む、能動的な探究型学習

※画像はイメージです

アクティブラーニングとは従来の一方通行の授業とは異なり、調べる、話す、発表するなどのよりアクティブな学びを取り入れて、生徒自らが能動的に学習する方法のことです。たとえば体験学習や調査学習、グループでの調べ学習や、相手の意見を聞きながら自分の意見を伝えるディスカッション、ディベートなどがその一例です。

今後は公立の教育機関でも広まっていく

アクティブラーニングには決まった型があるわけではなく、現場によってさまざまな取り入れ方があります。たとえば教科学習の最後に10〜15分の時間を設け、それまで学んだことについてグループで意見交換をする。あるいは実際の社会問題を題材にして、生徒たちが解決策を考えて発表するといったように、複数コマの時間を使ってひとつの課題に取り組む場合もあります。

こうした探求型学習は、すでに小・中学校の総合的な学習の時間で取り入れられてきましたが、今後はさらに公立小中高の教育現場で、教科を横断する形で広がっていくことでしょう。

グローバル時代に必要な3つの力を育てる

ではなぜ今の教育に、アクティブラーニングが求められるようになったのでしょうか。21世紀のグローバル化、情報化がますます加速する社会で生きていくには、学んだ知識をもとに自ら考え、問題を発見し、主体的に動くというスキルが求められます。たとえば企業でも「指示を理解して正確にこなす力」から「独自の視点や発想」「価値観の違いを超えて人を動かす調整力」へと、求める人材が変化しているのです。

日本でもそうした人材を育てようという気運が高まったことから教育改革が進められ、探求型の学びのひとつであるアクティブラーニングが注目されるようになりました。2020年から順次実施される新しい学習指導要領では「思考力・判断力・表現力」の育成が掲げられ、そのための取り組みとして、アクティブラーニングが「主体的で対話的な深い学び」と定義されています。

論理的思考や問題解決力を育てる、中高一貫校のアクティブラーニング

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今回の教育改革より以前から、いくつかの中高一貫校は歴史的にアクティブラーニングに力を入れてきました。とりわけ私立は、独自の教育理念のもとにカリキュラムを設定してきたため、ユニークな取り組みをしているところが多いようです。ここではそのうちの2例をご紹介します。

かえつ有明(東京都)の「サイエンス科」

「サイエンス」と言っても理科のことではなく、教科横断型の独自カリキュラムです。オリジナルのテキストを使い、あるテーマについてグループでディスカッションをしながら、論理的思考を育むための情報収集力、整理分析力、発信力を磨いていきます。

たとえば「織田信長とスティーブ・ジョブスの共通点と違う点を挙げよ」という、答えのない問題に対して自分なりの答えを導き出し、それに合う証拠や客観的なデータや資料で、自分の答えの論理性を訴求していくのです。さらに意見交換を通じて多面的なものの見方や、クリティカルシンキング(批判的思考)、自分の考えをわかりやすく人に伝える型を身につけていきます。

海城(東京都)の「探究プログラム」

社会科と連動し、中学1年生から3年間かけて行われるプログラム。「自分を知る」「地域を知る」といったテーマに沿って自ら課題を設定し、取材、文献にあたる、ディスカッション、レポートという、行動を伴った学習を学期ごとに繰り返します。そして最終の中学3年では、原稿用紙30〜50枚の論文をまとめます。

これはプロジェクトベースドラーニング(課題解決型学習)と呼ばれる方法で、まさに今社会で求められている課題発見解決力を養うもの。さらに将来に繋がる興味や関心を見つけていく、キャリア教育にも通じる取り組みです。特に中高一貫校では「中だるみ」と言われる中学3年生〜高校1年生の時期を利用して、こうしたテーマ学習を行う学校が増えています。

「人と違うこと」を怖がらない子に

これからはどんな教育現場でも「正解」を見つけて完結するのではなく、正解のない課題を周囲と協力しながら探っていく学びがより一層増えていくことでしょう。中学受験を目指す親御さんも、普段から子供の話をよく受け止めることで「もっと自由に自分の考え方を出してよいんだよ」というメッセージを伝えて欲しいと思います。

多面的な視点や批判的思考、考えを理論的に人に伝える表現力は、繰り返し訓練をすることで、はじめて身につくものです。中学受験の志望校を選ぶ際は、21世紀志向の能力を伸ばすアクティブラーニングに注目してみてもいいかもしれません。

※記事の内容は執筆時点のものです

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