中学受験ノウハウ 親の関わり方

中学受験 挑戦のエネルギーになる、自己肯定感の育て方とは?

専門家・プロ
2018年5月24日 鈴木恵美子

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最近、育児や教育関連の記事で、子供の成長に重要といわれている「自己肯定感」。それはどのような感情で、なぜ大切にする必要があるのでしょうか。また、中学受験で子供の自己肯定感を高めていくために、親はどのように接すればいいのでしょうか。子育てママを応援するプラットフォーム「Mother Quest」代表で、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに聞きました。

自己肯定感とは、一生を通じて自分を支えるベースの感情

※写真はイメージです

自己肯定感とは心理学用語のself-esteemという言葉に当たるもので、ひとことで言えば「ありのままの自分を認めて受け入れる」ということ。自分が好きだという気持ちは、人がその人らしく生きる力の源であり、自分自身を支えるベースになります。良いところも悪いところも含めて自分を肯定することが、困難なものに挑戦するパワーになり、将来への希望を持つことにもつながるのです。

日本の子供は自己肯定感が低い?

ところが、さまざまな調査で、日本の子供は諸外国の子供に比べて自己肯定感が低いという結果が出ています。たとえば2014年に内閣府が公表したデータによると、日本の13歳〜29歳の若者で「自分自身に満足している」者の割合は5割弱、「自分には長所がある」と思っている者の割合は7割弱。同じ調査で上位だった国に比べて約24〜40ポイントも下回っています。

諸外国に比べて日本人の自己肯定感が低いことには、民族的・宗教的な背景や、謙譲を美徳とする社会性も影響しているのかもしれません。ただやはり、自己肯定感が低い人は自分を必要以上に安く見積り、自己を否定しがちです。「自分はダメ」「どうせ自分なんか」という気持ちを抱いいていると、子供時代だけでなく大人になってもいろいろな意味で生きづらいことでしょう。

ありのままの子供を受け止めること

中学受験は子供にとって大きな挑戦です。どんなに頑張っても、必ずしも自分の望む結果が出るとは限りません。それでも自己肯定感が高ければ、結果が出せなかったことも含めて自分を受け入れ、それを成長や次のチャレンジにつなげられるのです。

子供の根本的な自己肯定感を育むのは家庭の役割です。大事なのは、親がありのままのわが子を受け止めること。テストの点などに関係なく「あなたはあなたね」「あなたが好きだよ」と伝え続けることです。「〇〇ができるから好き」という条件付きは、裏を返せば「できないと認めない」というメッセージになるのでよくありません。まず子供を全面的に信頼して寄り添い、課題の克服法を共に考える。親としてはそんなスタンスがベストだと思います。

自己肯定感を育てながら、中学受験を頑張るためのポイントは?

※画像はイメージです

とはいえ、中学受験では模試の点や偏差値に目が行きがち。「ありのままの子供を認めよう」と頭で考えていても、結果が出なければ、親はどうしても口うるさくなってしまいます。子供の自己肯定感を大切にしながら、前向きに受験に取り組むためには、どんな声かけや働きかけをしていけばいいのでしょうか。

「手の届く目標」を何度も示してあげる

中学受験をする目的は家庭によって違いますが、そこには必ずゴールがあります。ビジネスやスポーツの世界で活用されているコーチングのメソッドに「ゴールを明確にすること」がありますが、それは中学受験でも同じです。どんな学校に行きたいのか、入学したらどんな生活が待っているのか、将来の夢は何か。それらを「見える化」してあげることで、子供は取り組んでいることの意味を理解しやすくなります。

目標が明確になったら、次はそこに到達するためのスモールステップを親が示してあげることです。子供は遠い先のことを考えて行動するのが苦手。ですから「〇〇中学に合格!」ではなく「今はこうだから、ここを少し頑張ってみよう」という小さなステップを常に整理してあげましょう。それらをひとつずつクリアし、達成感を得ることの繰り返しが、子供の自信となっていくはずです。

結果を「評価」ではなく「分析」する

たとえば模試の結果が出てきたら、点数を見て評価するのではなく、そこに至るまでのプロセスを認めることが大事です。たとえば子供が70点を取った時、親はどうしても「できた70点」より「できなかった30点」の方にフォーカスしがちです。そうではなく、まず70点取れたことを認めること。そのうえで内容を細かく見て欲しいのです。

中学受験の問題は全問正解の必要はなく、正答率が60%ほどで合格する学校がほとんどです。ただそのなかでも、必ず取らなければいけない問題を落としていたなら、しっかり対策する必要があります。点数や偏差値などの結果だけを見て「ダメじゃない!」と言っても、子供の自己肯定感を削ぐだけで何の解決にもなりません。点数は評価せず分析し、中身まで見て対策に繋げることが大切なのです。

中学受験を成長につなげるために

中学受験への挑戦で、子供のメンタルを支えるのは親の大きな役割のひとつ。親が期待通りに動かそうとすればするほど「自分はダメだ……」と子供は自信をなくしてしまいます。まず子供の存在を丸ごと受け入れ、様子をよく見て接することが大切。自己肯定感を育むことで、中学受験を実りのある体験にしたいものです。

※記事の内容は執筆時点のものです

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