中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

子どもの成長を妨げる「怒り」の手放し方 ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年3月13日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です

今日は子供の成長を促すための、親のアンガーマネジメントについてお伝えします。

人は必ず失敗をします。特に子どもであればなおさら失敗をたくさんします。

この失敗は、成長のチャンス。問題点を把握し、改善に繋げることで、子どもは成長します。

人間は失敗をした時こそ、より多くを学ぶことができる性質を持っています。

ですから、人よりたくさん失敗をし、そこから学びを得ることができれば、人並み以上の速さで成長していくことができます。

ただし、ここで私たち大人が子どもへの対応を間違ってしまうと台無しです。

子どもは失敗から教訓を得られず、また同じ失敗を繰り返してしまいます。

実際に多くの親御さんがこのことを体験しています。

「なんで何回言っても分からないの!?」

こんな風に子どもに怒ったことがある方は多いのではないでしょうか。

そう言いたくなる気持ちはよくわかります。

しかし、見方を変えればこれは、「親が子どもの教育に失敗を繰り返している」ということでもあります。

厳しい言い方ですが、子どもの成長に繋がらない対応を、親のほうが何回も繰り返しているのです。しかも、親自身が自分の失敗に気付いておらず、成長していないから、その結果として子どもも成長していないということなのです。

「怒り」は子どもの成長を妨げる

では、子どもの成長に繋がらない、間違った対応とはどのようなものでしょうか?

それが今回のテーマでもある「怒り」を子どもにぶつけることです。

私たち人間は、原始的な感情の脳と、理性的な思考の脳を持っています。

そして、教訓を得て成長するためには、思考の脳の方を働かせる必要があります。

しかし、私たち大人が子どもの失敗に対して「怒り」の感情をぶつけると、子どもの原始的な感情の脳が発火します。

感情の脳はこれを「攻撃された」と受け止めて、攻撃に対して「闘争」か「逃走」をしようと反応します。

こうなると思考の脳は働きません。

だから、子どもの思考の脳を働かせ、成長につなげるためには、私たち大人は「怒り」の感情を手放す必要があるのです。

まずは「子どもに怒ることは、子どもの成長に繋がっているか?」「子どもに怒ることで、子どもの意識が変化しているか?」を考えてみてください。

もし「怒ることに効果は無さそうだ」となった場合には、怒らずに対応するようにしていきましょう。

子どもに怒らず対処するためのテクニック

ただ、そうは言っても、「怒らないようにしよう」という決意だけでは、なかなか怒らないようにすることは難しいですよね。

そこで今回は、子どもの失敗に怒らず冷静に対処するための方法として、「アンガーマネジメント」のテクニックを2つのステップに分けてお伝えしていきます。

子どもに対して怒りすぎて後悔したり、自己嫌悪になったりすることがあるかたは、特に今回の話が役に立つと思いますので活用してください。

1.「怒り」の衝動のコントロール

そもそも怒りに限らず感情のコントロールとは難しいものです。

ですから、上手にコントロールするためのテクニックを覚えておいてください。

まず1つ目は、「時間を稼ぐこと」です。

有名なのが「6秒ルール」ですね。理性を司る前頭葉が動き出して、感情をコントロールできるまでに6秒かかると言われています。ですから、怒りの感情に自分で気づいたら、すぐに感情のままに行動するではなく、まずは6秒間待つようにしましょう。

6秒待つための方法としては、普通に数字を数えても構いません。

他の方法としては「魔法の言葉」を用意しておき、怒りそうになったときにはその言葉を唱えてみるという方法も効果的です。例えば「怒っても無駄、怒っても無駄、怒っても無駄…」いった感じです。

他にも「とりあえずその場を急いで立ち去って、落ち着いてから戻る」のが効果的だったとおっしゃる方もいましたし、「ハッピーバースデーを1曲心の中で歌ってから対応する」というやり方がうまくいったとおっしゃる方もいました。

あなたに合うのはどのスタイルでしょうか?

試してみてください。

2つ目のテクニックは「客観視」です。

「もし自分が壁にとまっている虫だったら、今の状態はどう見えるだろうか?」といったことを考えてみるのです。

こうした他者視点で客観視する力は理性的な思考の脳の働きです。

そして、思考の脳を働かせると、感情がコントロールされていきます。

外的な状態ではなく、自分の内面について考えてみるのも効果的です。

怒りは二次的な感情と言われており、本質的な怒りという感情は存在しません。

怒りの正体は、実際にはとても強い別の感情なのです。

例えば、子どもが約束を破ったという場合であれば、「とても強い失望感」や「とても強い悲しみ」といった具合です。

そこで、怒りを感じたときには、「この怒りの正体は何だろう?」と考えてみましょう。

そして、「私は今とても強い失望感を感じていたんだ」といった感じで、本当の感情を言葉にしてみましょう。

そうすると、理性の脳が働き、怒りが落ち着きます。

3つ目のテクニックは、「データを取る」ということです。

まずは自分の怒りに対して、「どれくらい怒っているか?」を評価してみるという方法があります。

平穏な心の状態を0℃、過去最高に怒ったときを100℃とすると、今の怒りの気持ちは何度くらい?と考えて温度を評価してみましょう。

感情とは「今この瞬間」しかなく、場当たり的に動くものです。

そこに「過去の基準との比較」を持ってくると、理性の脳が働きだし、怒りの気持ちが落ち着きます。

また、記録(アンガーログ)として、「何に怒ったのか」「何℃で怒ったのか」「何℃であるべきだったか」を書いていくのもおすすめです。

データを蓄積していくと、自分の怒りの傾向がわかります。

そして、その背景にある、怒りの原因も見つけやすくなります。

2.怒りの原因となっている価値観の切り替え

1.で紹介した衝動をコントロールするテクニックは、「怒ってしまったものを鎮める」ためにとても効果的です。

でも、それよりももっと良いのは、そもそも怒らないですむ状態ですよね。

そのためのとても効果的な方法が、自分の中の価値観を切り替えていくことです。

例えば、宿題をやっていない子どもに対して、怒りがわいたとします。

このとき、怒りを感じる背景には、自分の中に「宿題はやるべき、やって当然」という価値観があるからです。

この自分の中にある常識を疑ってみましょう。

・宿題をやるというのは、果たして本当に必要なことなのだろうか? やる必要が無い課題や、過剰な課題が出されていたりしないだろうか?

・宿題をやるというのは、そんなに簡単なことだろうか? めんどくさくてサボるなんて普通のことではないだろうか?

そうやって、自分の中にある思い込みが、果たして本当にそうなのかどうか確認していきましょう。

実際のところ、大人から見た「子どもの問題行動」の大部分は、子どもが「悪意」でやっていることではありません。

「(現時点での)能力不足」によって起こっていることです。

「能力不足」な子に必要なのは、「サポート」であって、「罰」ではありません。

「○○するべき/しないべき」という価値観は、自分がそう思い込んでいただけで、実際にはそうではなかった。

そう気づくものがひとつでもふたつでも見つかれば、見つけた分だけ怒るきっかけを無くしていけます。

ぜひ、自分のなかの「べき」を見直して、価値観を切り替えていってみてください。

まとめ

以上、子どもの成長を妨げる「怒り」の手放し方でした。

1-1 「時間を稼ぐ」

1-2 「客観視」

1-3 「データを取る」

2  「怒りの原因となった価値観を切り替える」

これらのアンガーマネジメントのテクニックを使って、上手に怒りの感情をコントロールしていきましょう。

そして、冷静に理性的に、お子さんの失敗に対応できるようになっていってください。

そうすれば、お子さんの成長を早めることができますよ。

※記事の内容は執筆時点のものです

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