求められる英語力は昔とどう違う? 2024年英語共通テストの傾向と対策|中高一貫校入学前に考えておきたい【英語】の話#1
小学校から中学校に進学するとき、学習面で気にかかるのが「英語」の授業。特に中高一貫校は、一般的な公立中に比べて授業進度が速く、中2の時点で中学3年分のカリキュラムを終えてしまう学校も珍しくありません。
—— 進学後に備えて英語を習わせたいけれど、中学受験の勉強で時間が取れない。でも、本当にこのままで大丈夫だろうか…
そんな不安を感じる保護者さん、中学受験ナビと一緒に子どもの「英語力」について考えてみませんか?
取材に協力してもらったのは、全国に英会話教室「イーオン」「イーオンキッズ」を展開する株式会社イーオンで、教材制作をご担当されている堀田和江さんと、講師育成に携わる岡村知子さん。
英語教育のエキスパートであるおふたりから、子どもの「英語力」をテーマにたっぷりお話を伺いました。
連載第1回となる今回は、現在の大学入試で求められる英語力について。2024年大学入学共通テストについての分析も見逃せませんよ。
2024年共通テストはこう変わった!
2020年から始まった新学習指導要領の改訂により、子どもたちを取り巻く英語の教育環境は大きく様変わりしています。
たとえば、小学校ではそれまで5年生からだった英語授業の必修化が3年生に前倒しされました。ご自身やお子さんの実体験として、変化を感じていらっしゃる保護者さんも多いかと思います。
出題される英文は長文のみに変化
では、この改訂を受けて、大学入試における英語試験はどのように変化したのでしょうか。
「まずお伝えしたいのは、現在の共通テスト全問が長文で出題されているということ。『長い英文が読めて当たり前』という前提で構成されており、この傾向は今後も維持され、さらに英語を実生活で使うことができるかということが問われる見通しです。」(岡村さん)
昨年の大学入学共通テストに登場した英単語は約6,000語だったのが、先日行われた2024年度の共通テストでは6,200語にまで増えました。
一方で、かつての「センター試験」では、英文法の適語補充や単語のアクセントについて問う基本問題が試験の冒頭に出題されるのが定番でしたが、こういった「サービス問題」はほとんど見られなくなっています。
「SNSなどでは、共通テストの英語入試が難化したと受験生の間で話題に上がりました。けれど、30代以上の保護者世代がイメージする『センター試験の英語』と比べて、出題される英単語や文章そのものの難易度が上がったわけではありません。
英文を読むスピードは問われるものの、リーディングもリスニングも、出題された問題の6割は、高校の授業をきちんと理解できていれば解ける基礎的な問題です。
逆にいうと、得点を伸ばし、ライバルに差をつけられるかどうかは、残りの4割にかかっているといって良いでしょう。」(岡村さん)
求められるのは「英語力」と「国語力」
この合否の分かれ目を握っている「残りの4割」とは、いったいどのような問題なのか。
それは、出題文全体をしっかり読み取った上で考えなければならない「思考力型」の問題です。
「思考力型の問題とは、たとえば『登場人物が〇〇というセリフを言ったのはなぜか』『ブログに対しての適切なコメントは?』といった問いのことです。
これらの問題を解くためには、出題文全体をしっかり読み取った上で考えを深めなければいけません。」(岡村さん)
では、正答を導き出すためには、具体的にどういったスキルを身に付けておく必要があるのでしょうか。
「まず大前提として、長文を理解したうえで思考するためには、ある程度の語彙力がなければ話になりません。
そのほかに、文章の『行間』を読む感性。短い時間で文中の必要な情報を拾い、処理できるスピードも試されます。
英単語や文法を丸暗記しているだけでは、現代の入試英語で高得点をとることはできないと考える必要があります。」(岡村さん)
英語の知識・技能はもちろん、「国語力」も鍛えておく必要があるともいえそうです。この点は、中学受験を潜り抜けた子どもたちにとって、そうでない子に比べれば一日の長があるかもしれません。
海外留学に必要な4つのスキル
また、中高一貫校を目指すお子さん・保護者さんの中には、「国内の大学ではなく、海外留学したい」といった夢をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、海外の大学へ進学する場合に必要な英語力についても訊いてみました。
「海外の大学では、とにかくたくさんの英文を読んで授業に臨むことが必要です。そして、授業では、読んできた内容をもとにディスカッションをすることも多いですし、レポートや論文もたくさん書きますので、まとまった英文を書く力も求められます。また当然ですが、授業は全て英語で行われますので、大量の英語を聞く力はもちろん必要です。
とにかく、「4技能5領域、全てのスキルを横断的に大量に使う」というイメージですね。
海外の学生は、驚くほど一生懸命に勉強します。そういった人たちと一緒に学ぶわけですから、生半可な気持ちでは付いていけません。
また、クラスメイトは母国語が英語でない学生も多いため、英語力だけでなく、相手の文化や価値観を理解する下地や柔軟性が必要ですね。」(堀田さん)
①英文のリーディングが苦ではないこと
②大量のリスニングに耳を慣らしておくこと
③ライティング・スピーキングを通して自分の意見を英語で表現できること
④多様な文化や価値観を理解しようとする共感力を持つこと
これらのスキルを身に付けておくと、留学後の生活はグンと楽になりそうです。
もちろん実際に現地へ渡った後で鍛えられる力ではありますが、中高生のうちからぜひ意識して身に付けてほしいポイントです。
「使える英語」の習得がスタンダードになる
さて、ここで振り返っていただきたいのが、先ほどお伝えした「日本の大学入試の変化」について。
入試英語で求められる能力と、海外留学するのに求められる能力。似通っていると思いませんか?
「グローバル化が進む現在、海外との接点がどんどん増えています。たとえ国内企業に勤めていても、同僚が外国籍の方だったり、海外を相手にビジネスしたりするのは特別なことではなくなりました。
今の小学生たちが大人になる頃には、海外との垣根はさらに低くなっているでしょう。留学や海外勤務をする気がなくても、実践的な英語力を求められる社会になっているはずです。
新学習指導要領改訂で、文科省は【聞く】【読む】【話す[やりとり]】【話す[発表]】【書く】の4技能5領域のほか、【思考力・判断力・表現力】を重視するとしています。
次世代を担う子どもたちに、社会で通用する英語力を身に付けさせたいという文科省の意図が、入試英語にも反映されているというわけですね。
変化した大学入試への対策がそのまま、これからのグローバル社会を生き抜く力につながるといえます。」(堀田さん)
まとめ
大学入試英語の変化についてのお話、いかがだったでしょうか。
中学受験もこれからなのに、大学なんてまだまだ先の話……そう考えていても、あっという間に時間が経ってしまうもの。いざという時に焦らないで済むよう、少しでも心構えを持っておくと安心ですね。
次回の連載第2回では、中学進学後の「英語力格差の現実と乗り越える方法」について取り上げたいと思います。
中高一貫校への進学が決まっている6年生親子も、受験はこれからという下級生も、中高6年間でどういったことを考え実行すべきかのヒントとなれば幸いです。
※記事の内容は執筆時点のものです
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