算数嫌いの子に算数をどう教えるか?―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
中学受験で合否を分ける科目と言えば算数!
ということで、算数の勉強に力を入れているご家庭は多いと思います。
でも、苦手な子って頑張ってもなかなか成績が上がらないですよね。
お父さんお母さんが一生懸命教えても、全然伝わらないっていう事が多いんじゃないでしょうか。
どうして伝わらないのでしょうか? どうすれば伝わるのでしょうか?
今回は算数が苦手な子の算数力を上げるためのポイントについてお話しします。
算数の成績を上げるために必要な2つの能力
算数ができるようになるためには、土台となる「算数のセンス」と、公式や図の書き方といった「解法の知識」と、両者がバランスよく必要です。
算数のセンスとは、例えば「数の大きさや割合の感覚」「図形の形をとらえる感覚」「空間・立体の感覚」といったものです。
それに対して、解法の知識とは、例えば「この問題は食塩水の問題だからてんびん図を書こう」「この速さの問題は途中で速さが変わっているからつるかめ算だ。面積図を使おう」といったものです。
これら算数のセンスと解法の知識が両方揃わないと算数の成績は伸びません。
そのことを示す研究として、例えばカーネギーメロン大学のリサ・ファツィオらが行ったものがあります。
(拙著『「記憶」を科学的に分析してわかった小学生の子の成績に最短で直結する勉強法』より)
小学5年生の子供たちに、 イメージを使うタイプの問題(上段のようなもの)と、数式を使うタイプの問題(下段のようなもの)をたくさん解かせました。
また、これとは別に、算数の一般的なテストを受験させました。
そして、これらの点数を比較したところ、イメージを使う問題がよくできた子は、算数のテストの点数が高くなりました。
また、数式を使った問題がよくできた子も、算数のテストの点数も高いことがわかりました。
しかし、イメージを使った問題の点数と、数式を使った問題の点数の間には関係がありませんでした。
算数ができるようになるためには「数の大きさや割合の感覚」と、数式に関しての「知識」の両方が必要だということがわかります。
そして、イメージを使った問題の点数と数式を使った問題の点数の間には関係が無かったことから、「数の大きさや割合の感覚」を育てれば「知識」も身に付くとか、あるいは「知識」を教えれば「数の大きさや割合の感覚」も育つ、といったわけではないことも分かります。
だから、一方が足りない場合は、そちらを鍛えるためのトレーニングが必要ということなのです。
「数の大きさや割合の感覚」だけでなく、「図形の形をとらえる感覚」「空間・立体の感覚」もそれぞれ同様です。
図形の面積や体積の公式を知っていても、複雑な複合図形の中で「おうぎ形」や「台形」や「三角すい」が見えなければ、問題は解けないのです。
頑張っても算数の成績が上がらない理由とは?
ちゃんと勉強しないから成績が上がらないという場合には、「解法の知識」が不足している可能性が高いです。
それに対して、本人も一生懸命勉強しているのにできるようにならないとか、親がどんなに説明しても伝わらないといった状態であれば、それは「算数のセンス」が不足している可能性が高いです。
あなたのお子さんに足りないのはどちらでしょうか?
もし「算数のセンス」が不足しているとしたら、こちらはテキストの問題を解いても鍛えることは困難です。
なぜなら、この「算数のセンス」は「自転車の乗り方」や「泳ぎ方」と近いもので、実際にやりながら体得していくしかないものだからです。
「泳ぎ方」を図解で解説をされても、動画で上手な人が泳ぐところを見せられても、それだけで泳げるようにはなりませんよね。
泳ぎ方を身に付けようと思ったら、ビート板を持ってバタ足の練習をしたり、ヘルパーをつけて泳いだりしながら、スモールステップで練習する必要があります。
それと同じように、「算数のセンス」を身に付けるためには、スモールステップで少しずつ練習する必要があります。
算数が得意だった親御さんが我が子に算数を教えようとしてうまくいかない場合というのは、自分が算数のセンスを知らずに身につけていて、塾や学校の授業で解法の知識を習ったら算数ができてしまったため、子どもも同じように解法の知識を覚えれば算数ができるようになるだろうと思って何度も解法を説明していることが多いです。
その子にとって必要な練習をさせていないのですから、いつまで経ってもできるようにならないのは当然ですよね。
どうすれば算数のセンスは身に付く?
算数のセンスを身に着ける方法はシンプルで、その算数のセンスを使うということです。
例えば伸学会の中では、算数パズルを使って図形的なセンスを鍛えるトレーニングを行っています。
「なぞぺー」「チャレペー」などの市販の教材もいろいろありますから、購入して毎日少しずつ取り組んでみると良いのではないかと思います。
『考える力がつく算数脳パズル なぞぺー1 改訂版』著者:高濱 正伸、出版社:草思社
『「考え抜く力」が身につく!天才くらぶ チャレペー1 総合編【数・かたち・考える】』著者:算数オリンピック数理教室アルゴクラブ 、監修、読み手:高濱 正伸、出版社:実務教育出版
また、日常生活の中で数の感覚を意識的に使っていくのもおすすめです。
ご飯のおかずやおやつや飲み物を分けるときに、「40個の餃子を親子4人で分けると1人分は?」とか「16個のから揚げを子どもの方が1個多くなるように親子3人で分けると子どもの分は何個?」といったことを毎日少しずつやっていけば、自然と割合や比の理解が深まります。
具体的なイメージを持てるようになると算数が少しずつ得意になっていきますよ。
まとめ
- 算数ができるようになるためには、「算数のセンス」と「解法の知識」の2つが揃っている必要がある。
- 算数が苦手な子はセンスが無い子が多い。
- 算数のセンスは泳ぎ方を覚えるのと同じように、実践を通じて体得させよう。
ということでした。
センスが無いと努力しても成長できず、悔しい思いをして、どんどん算数が嫌いになっていってしまいます。
そうならないように、しっかり鍛えてあげてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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