中学受験ノウハウ 基礎知識

「小学校プログラミング必修化」の基礎知識と教育玩具の活用

専門家・プロ
2019年8月27日 伊丹龍義

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2020年に、小学校で「プログラミング」が必修化されます。「学校の内申対策」や「中学入試対策」は不要との声がある一方で、プログラミング教育で養えるとされる「論理的な思考」を身につけることは、中学受験の学習準備として効果が高く、プログラミング玩具を活用することも効果的です。

今回は、プログラミング必修化の目的とともに、「プログラミング教室に通うことは必要なのか」「中学受験にどのように影響するのか」に触れつつ、「家でできるプログラミング教育」についてもお伝えします。

2020年プログラミング必修化の基礎知識

「2020年から小学校でプログラミングが必修化される」ということ自体は、周知されるようになりました。しかし、肝心の内容について詳しく知らない方は、まだまだ多いと思います。まずは、プログラミング必修化の基礎知識を押さえましょう。

技術の習得ではなく、プログラミング的思考の習得を目指す

2020年プログラミング必修化では、プログラミングは「新しい教科として導入されない」ことがポイントです。算数・国語などの既存の授業内への導入となり、評価の対象にもなりません。また、プログラミング必修化は、プログラミング技術自体の習得を目的としていないことも押さえましょう。

■プログラミング必修化の目的
①プログラミングを活用し、既存の教科をわかりやすく理解する
②私たちの身の回りには色々なプログラムが使われていることを学ぶ
③物事を論理的に考える「プログラミング的思考」を習得する

中学受験にどう影響するのか

今回のプログラミング必修化は「教科」の新設ではなく、学校でも評価対象ではありません。今後、入試形態の1つとしてプログラム試験を課す学校はあるかもしれませんが、現時点では中学入試でプログラミングの知識が必要となることはなく、中学受験生が入試対策としてプログラミング言語を習得する必要はありません。

しかし、プログラミング教育の目的のひとつである「プログラミング的思考」は、今後の社会で重要となるものだと考えられており、新形態の大学入試においても重要視されています。そして、社会的な流れにあわせ、大学入試を視野に入れた生徒募集を行う中学校の入試で、「条件・ルールが与えられたうえで、目の前にあるものを使って問題解決をする」といった「プログラミング的思考」を必要とする問題が増えてくることは、ほぼ確実でしょう。

また、「プログラミング的思考」は、「未知のものを学ぶ姿勢」を育むうえで大きく役立ちます。とくに、本格的な中学受験対策に入る前の小学3~4年生のうちにしっかり訓練しておくことで、その後の学習を効率化できます。

プログラミング教室ごとに目的がちがう

必修化の準備として、プログラミングを学ぼうとする児童が増え、それに伴い、プログラミング教室も急激に増えています。しかしながら、学ばなければいけない内容が決まっていないため、プログラミング教室の教育目標はさまざまで、「使用する機器」「扱う言語」などにも大きな差があります。

そのなかで一番大きな差が、「プログラミング的思考」を身につける教室と、いわゆる「プログラミング技術」を身につけるための教室があることです。

「プログラミング的思考」を身につける教室

「プログラミング的思考」を身につける教室は、「物事を論理的に考える訓練」に主眼を置いています。塾などで開校されることが多い印象です。

「Scratch(スクラッチ)」というプログラミング言語を中心に、マウス操作でプログラミングを行うことが多く、プログラムの結果が確認しやすいように、ブロックを使ってロボットを組み立てて動かす「ロボットプログラミング」が行われる教室も多くあります。

「プログラミング技術」を身につける教室

「プログラミング技術」を身につけるための教室は、まさに「プログラミング習得」に主眼を置いています。こちらは、プログラミングの専門機関で開講されることが多い印象です。

言語はさまざまで、キーボードを使ってプログラミングを行うことが多く、「Scratch」などを使ったゲームづくりを目標とする教室が多いです。

注目のプログラミング教育玩具

ここ数年、「プログラミング教育玩具」が多く登場しています。自分の目標やペースに合わせて、「プログラミング的思考」や「プログラミング技術」を家でも気軽に楽しく身につけることができるようになってきました。

プログラミング教育玩具は、プログラミング教室同様、使用する「機器」「言語」「目的」などは様々です。ブロック遊びの延長としての「ロボットプログラミング」、テレビゲームの延長としてのプログラミングなど、さまざまなかたちの玩具が発売されています。

プログラミング教室で「本格的な習い事」として行うことはもちろん有効ですが、家でゲーム感覚で気軽に始められる以下の2つの玩具に、私は注目しています。

ソニー「Toio(トイオ)」

「トイオ」の一番の特徴は、汎用性の高さです。同じ機体で、ゲーム的な遊びはもちろん、パネルを並べていくプログラミング学習、本格的なプログラミングも行うことができます。

また、プログラミング学習の課題も、小学校低学年の生徒でも気軽に始められる課題から、初見では大人でも悩んでしまうような課題まで、幅広く用意されています。プログラミングの習熟度問わず、スモールステップで論理的思考が身につくプログラミング玩具です。

「トイオ」の特徴は、以下です。

・「プログラミング的思考」から「プログラミング技術」まで、同じ機体で習得可能
・Toio1セットで、様々なゲームや学習ができる(ソフトは別売)
・Toio本体は、Sony製のゲーム機と同じく直感的に操作可能
・プログラミングは1人用。ストーリー仕立てで課題をクリアしながら、論理的思考を学んでいく
・現在はMacのみ対応
・PCで、スクラッチベースのプログラミング(マウス操作)からJavaScriptを用いたプログラミング(キーボード入力)まで可能
・「Toioコレクション」(別売ソフト)があると、さらに学習が進む

バンダイ「ALGOROID(アルゴロイド)」

「アルゴロイド」は現在開発中ですが、注目のプログラミング玩具です。「アルゴロイド」の一番の特徴は、ゲーム性の高さです。ロボット(カー)の動きや攻撃の条件を、携帯やタブレットを使ってすべてプログラムし、相手のロボットを倒していきます。

相手ロボットを倒すために、限られた条件のなかでどのようにプログラムを組むかを考えるので、「論理的思考」が育まれます。そして、試合後に勝ち負けの原因を分析して次に生かすつくりになっているので、「分析」「修正」の習慣も自然と身につきます。

ゲームとしての完成度が高く、子供はもちろん大人もはまりやすいつくりになっています。また、相手のプログラムと相性があり、「確実に勝てるプログラム」はないため、初心者から上級者まで長く楽しめるゲームです。

オンラインの大会も予定されており、遠くに住んでいる友達はもちろん、プログラミングの有名人との対戦も気軽に行うことができることも、「アルゴロイド」でプログラミング学習を続けやすい特徴のひとつです。

「アルゴロイド」の特徴は、以下です。

・「プログラミング的思考」を育むことに特化した玩具
・2~4人対戦(オンラインでの全国大会も予定)
・ロボット同士のバトルのため、ゲーム性が強い

重要性を増す「プログラミング的思考」

みんなで意見交換をしながら進めていく「プログラミング教室」で得られるものは、もちろん大きいです。しかし、金銭的にも時間的にも負担が少なく、しかも遊びの延長として自然に導入でき、自分のペースで時間を気にしないで進められる「プログラミング玩具」から得られるものも大きいといえます。「未知のものを学ぶ姿勢」や「プログラミング的思考」は重要性を増してきます。これらを身につけるために、まずは遊びながら家庭で学べるプログラミング玩具の活用を検討してみてもよいでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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