2024年度中学受験の振り返りと2025年度受験の注目ポイント|データで見る中学受験 #10
連載「データで見る中学受験」は、中高の教育データ解析・分析のスペシャリスト佐藤潤平さんが、データをもとに、なるべく中学受験を客観的に読み解こうとする試みです。今回は難関・有名国公私立大学への現役「進学力」ランキングを見比べながら、データの読み方を解説していきます。
入試直後の2/15に速報という形で2024年度入試のざっくりとした状況をお話しました。
今回は、より詳細なデータもまとまってきたことから、2024年度入試を振り返るとともに、2025年度入試で注目しているポイントもお話ししたいと思います。
資料として入試難易度別に、どこの受験者層が増えてどこが減ったかがビジュアルでわかるバタフライチャートなど、各種資料も用意しています。
記事の「まとめ」から、中学受験ナビ会員限定でPDFをご覧いただけます。
気になる方は、ぜひ会員登録(無料)の上でご利用ください。
Contents
2024年度の受験者数は微減ながら受験率は過去最高に
2024年度は、1都3県の公立小学校6年生の卒業予定者数が前年差約5,300名減少することから、事前の予想では、中学受験市場が落ち着くのではないかという見方もありました。
実際に受験者数は、2/1午前私立中学入試ベースで43,019名→42,951名と68名減少しています。
ただ一方で、分母に1都3県の公立小学校6年生を置いた1日午前入試の割合(受験率)は15.3%と、過去最高となりました(図1)。
景気の影響を受けやすい中学受験ですが、リーマンショック後の2015年に底を打ち、昨年、今年と受験率が過去最高を更新しています。
要因その1:コロナ禍と私学への期待
要因の一つに、コロナ禍における公立中学と私立中学の対応力の差が挙げられます。
2020年3月に緊急事態宣言が発出され、これにいち早く対応したのは私立校でした。
公立中学は、その家庭の約5%にインターネット環境がないといわれており、一律の対応が難しい状況がありました。
小学校でも同様の現象が起こり、学校で勉強できないことを心配した保護者が子どもを塾に通わせました。当時は、私にも大手のみならず中小塾からも塾生が増えているとの声が届いていました。
塾の授業は中学受験を念頭に置いていますので、結果的に、これまで中学受験を考えていなかった層が参入し、受験率の上昇につながったと考えられます。
要因その2:東京都の私学授業料助成と所得制限撤廃
もう一つの経済的な要因として、東京都内に住む子育て世帯に対する私立中学等の授業料助成が挙げられます。
これは年間10万円まで授業料を支援する制度で所得制限がないほか、都外の私立中学に通学した場合(都内に住んでいる必要あり)も対象となります。また、私立高校の授業料実質無償化の所得制限も撤廃されました。
あくまで東京都限定の話ですし、個人的には前述の塾に通う子どもが増えたことが主要因と考えていますが、中学受験率が高まった理由としては、経済的な影響も一定程度あったと思われます。
とじる
お気に入り機能は
会員の方のみご利用できます
会員登録のうえログインすると
お気に入り保存できるようになります。
お気に入りのコンテンツは、
マイページから確認できます