快適な勉強部屋|桜井信一コラム「下剋上受験」

専門家・プロ
2014年9月04日 桜井信一

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桜井信一ブログ『父娘の記念受験』で過去に掲載されていた記事から、一部を編集して掲載しています。この記事の内容は 書かれたものです。

今夜は「快適な勉強部屋」というテーマでお話しさせてください。

私たち父娘は、80cm×120cmの大きさの座卓で受験勉強をスタートしました。冬はコタツにできる座卓なのですが、秋にスタートしたのでコタツ布団がない状態で、床はフローリング柄のクッションフロアでした。

下剋上受験の表紙のイラストは、私たちが受験勉強をスタートしたときの写真をもとに描いたイラストです。

我が家にも一応小学校に入学したときに買った学習机がありましたが、学校の教科書がいっぱいでしかも色々飾ってあったりしていたこと、足元の半分ほどが引き出しになっているために私が横に座れないことなどから、一緒に勉強するには適していませんでした。

横に並んだり向かい合わせに座ったりと何度も配置換えをした結果、このような勉強部屋が完成したわけです。

特に過去問を解く時期になると、真横や真正面に座っているときもあれば視界に入らないような位置に座っているときも必要になるのです。

さて、本日のテーマはここなのですが、長時間勉強するコツや集中するコツ、眠気対策などのご質問をよく頂くのですが、勉強部屋というのは、快適であってはならないのです。

1年5ヶ月間勉強しましたので、一応すべての季節を経験しましたが、どの季節も勉強部屋が快適な環境なのはデメリットの方が多いと思います。

そのわかりやすい例が冬なのですが、寒いからといって暖房をつけて部屋全体を適温にしてしまうとかなり眠気が襲ってきます。頭寒足熱とかいって足元だけ電気ストーブをつけると、もう1分後には爆睡してしまいます。かといって寒さにふるえるのも集中できないので、結局色々試した結果、やや寒い程度の室温でホットカーペットを弱の状態にし、保温に優れた肌着で凌ぐのが一番マシなのです。

室温だけではありません。座り心地も同じです。

最初は座卓でしたので、足を伸ばして座るとテーブルが高すぎますし背もたれがないと長時間座れません。正座すると当然足がしびれてきます。トイレにすら立てなくなるのです。

そこで2人が並んで座れる高さ70cmの長机を購入し、イスに座って勉強するスタイルに変えました。インターネットで探せばかなり安いものがたくさんありますから、イスも同時に購入しました。最初は少し奮発して「長時間でも疲れない」と書いてある”背もたれ”がやや高いイスにしたのです。ひじ掛けもついていました。

これがダメなんです。

座卓よりも集中できない。眠気に勝てないのです。寝不足の状態が続くなか毎日疲れているわけですから、ゆったりと座りたいと考えるのが普通ですが、それが一番危険なのです。

「やっぱり座卓にしよう」なんて言って、正座に戻してみたりしました。

その後、色々なテキストを広げて勉強するため、本棚からさっとテキストを出すため、前の壁に色々貼っておくためなどの理由で、長机に復帰する際、娘は小学校入学時の学習机とセットになっていた小さめのイスに、私はリビングの木製のイスに座布団も敷かずにかたいまま座ることにしたのです。

すると、確かに快適ではないのですが、眠気がマシになり集中力が増しました。

部屋の雰囲気も重要だと思います。

極端な話ですが、キティちゃんに囲まれたような雰囲気で勉強するのと、寺の修行僧が板の間に座ってお経の稽古をする雰囲気で勉強するのとでは、何となく後者の方が自分が頑張っている気がして酔うことができます。

女の子ですからすぐに色々とかわいいものを飾ったりぶら下げたりしたくなるものですが、ふたりで作戦会議をした上で、それらをすべて取っ払い文具に至るまでキャラクターのものを使わないようにし、「これは修行なんだ、戦なんだ」という気分で机に向かうようにしました。

すると、かなり盛り上がるのです。

「私たちは頑張っているんだ!」という雰囲気の中で勉強する方が当然頑張れます。その「頑張っているんだ」という雰囲気に合わないものは勉強スペースから排除するわけです。

例えば、机周りが暗いからといってデスクライトを購入しようということになったときや、キャスター付きの棚を購入しようとなったときに、リサイクルショップの中古品にしたのです。すると、勉強スペース全体が一気に悲壮感漂う雰囲気になります。デスクライトの中古って、かなりの悲壮感を演出してくれるのです。

「さあ、今夜もやるぞ!」というときに、その悲壮感漂う雰囲気のスペースに足を踏み入れることは、今から面倒なことをやるというイメージではなく、「抜け出すための修行」のような気分になれるのです。

まさに、下剋上は悲壮感からの脱出なわけです。

長時間勉強すると考えると、普通は疲れない環境を用意しようと考えがちです。

しかし、勉強は時間の長さで学力が上がるものではありませんから、「長く座ること」を目的にしてはいけないのです。結果的に長く座るようにするためには、その環境が結果を生むための場所だと感じさせてくれて、腰の痛みや室温を忘れるほどの集中力を発揮させてくれなければいけません。

例えば90分ごとに休憩を入れるスケジュールだったとすれば、「気がついたら90分をこえていた」という環境をつくらなければ集中したとはいえません。「えっ? もうこんな時間」と感じてはじめて集中した受験勉強なのです。

その場所を快適な環境にしてしまうと、ピシッとした空気は出せません。苦労している感がないというか、頑張っている感がないというか、なぜか「快適」は厳しい気分にさせてくれないのです。

「もっと集中しなさい!」と叱るよりも、キティちゃんに遠慮して頂く方が話が早い。

冷蔵庫とTVがあるだけでも誘惑と戦っているわけです。むしろそんなものがない無人島で勉強する方が諦めがつきます。しかし、現実には冷蔵庫とTVを取っ払うことはできないわけですから、そこへ向かうことを「油断」と感じさせる場所に仕上げないといけません。

当然、BGMが流れるなかで勉強してもそれは時間を消費する目的になってしまいます。それならいっそのこと、横でお母さんが瀬戸内寂聴の格好をして木魚を鳴らす方が効果的です。どうぞ、正解したときにはやや強めで叩いてあげてください。

私は元々おしゃれをしませんが、仮に私がチャン・グンソクのように、シルクのピンクシャツを着てネックレスをし、眉のラインを整えていたら、娘は下剋上を目指して頑張ったでしょうか。

チャン・グンソクが旅人算の攻略を一緒に頑張ってくれたからといって、膨大な算数の問題を一緒に解いてくれたからといって、果たして学力が上がるでしょうか。その演出をするにはチャン・グンソクの顔はあまりにもシワがなさすぎるのです。

なに? お母さんもシワのケアに余念がない?

「やる気ないのはどっちですか!」 (-_-メ)

もう年輪だと思って諦めなさいっ!


ところで、お母さんのお肌に休息が必要なように、子どもの勉強にも適度な休息がないと集中力を発揮できないわけです。お母さんだってお化粧ののりが悪くなるでしょ? 緊張感のない仕上がりになりますよね?

そうなんです。お化粧は5分前のお手入れがポイント♪

すると、勉強も5分前のお手入れがポイントなわけです。

ちなみにうちはこんなバカなことをしました。

「よし、今日から毎日勉強の合間の休憩にコンビニを制覇しよう」
「なにを?」
「アイスを毎日食べるんだ。しかも全種類」
「おカネ大丈夫?」
「ハーゲンダッツはなしな」
「同じのは?」
「ダメ。毎日違うのを食べて制覇する!」
「理由は?」
「コンビニアイスで知らない味がなくなる」
「で?」
「まあ、そのうちわかるよ」

これ、結構すごいんです。そもそもアイスって毎日食べていいはずがない。そんな大富豪みたいこと普通はできない。しかし、よく考えると月にふたりで6千円ほどなんです。これで集中してくれるなら安いもんでしょ?

やってみればわかるんですが、「今日はどれにしようかなあ~」とコンビニまで歩くのが楽しくなります。そして、だんだん好きなものがなくなってくると、普通は買わないものまで食べなくてはならなくなります。「え~、今日はどれに挑戦しようかなあ~」となってきます。

もうこれドキドキ感いっぱいの散歩道になるわけです。

こういう休憩を適度にはさみながら、休憩後の勉強時間の集中力をUPさせないといけない。それにはやはり、休憩後に戻る場所が緊張感溢れる修行の場でなければならないのです。

という、貧乏人の言い訳にどのあたりからお気づきだったでしょうか?

(-。-)y-゜゜゜

2014.9.4 am 0:50

桜井信一 

※記事の内容は執筆時点のものです

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