下剋上を考え直す|桜井信一コラム「下剋上受験」

専門家・プロ
2014年9月05日 桜井信一

桜井信一ブログ『父娘の記念受験』で過去に掲載されていた記事から、一部を編集して掲載しています。この記事の内容は 書かれたものです。

中学受験塾に通う子どもたちの多くが伸び悩むわけです。

新4年生で入塾したときは、大きな夢と希望にあふれていたはず。

しかし、現実は違う。その大きな夢もそんなに長くは続かないのです。中学受験生の過半数は、いやそれ以上が満足な結果にならないのです。

下剋上受験の中でも書きましたが、もしこれが最初からわかっていれば3年間もあの膨大な費用をかけていないでしょう。しかし、5年生・6年生と受験が近づくにつれジリジリと現実を見せつけられ、じわじわと妥協させられるわけです。

最初からこの結末が「確定」いていたら、つまり「0%」だとしたら、かけなかったであろう費用も、簡単に諦められない親心からつい出し続けてしまいます。

まるで今更引くに引けないギャンブルの世界と同じ。このストレスが親子のバトルの発端だと思うのです。

ギャンブルにとことんまでハマる人は皆が同じことを言います。

「こんなはずじゃなかった」

挙句の果てには、「せめて」という思いが宙を舞い、勝者を妬み、事の発端を恨むようになる。

教育とギャンブルはどちらも自分のかけがえのないものが対象。そう簡単に諦めるわけにはいかない。だからとことん塾につぎ込んでしまうわけです。

よく考えてほしいのです。どうしてそうなるのかを。

私の娘は入塾テストさえ受かりませんでした。入塾させてくれるという塾は、誰でも入れてくれる塾でした。テスト結果をみた瞬間に気づきました。

「これはカネを払うだけで終わる」

いくら私でもテストが難しそうかどうかくらいはわかります。算数なんて、普通の計算に普通の図形の問題でした。それが半分もできてない。でも大歓迎っていうわけです。平行四辺形の高さを斜めと勘違いする子を大歓迎というわけです。こんな塾に行かせてもカネを搾り取られるだけだということくらいはわかります。

だから私は親塾を選択しました。

しかし、下剋上受験にも書いてあるように私は塾に通う方が有利だと思っています。先日のトークイベントでも、来場者の方からのご質問に、「もう1回チャンスがあれば入塾させます」と答えました。

問題はそこからだと思うのです。

入塾時の簡単なテストすら高得点をとれない子が、2年通っても3年通ってもできるようになるはずがない。

なぜなら、塾で出されるだろう宿題は入塾テストと同じレベルかそれ以上なわけです。すると、入塾の翌日からいきなり宿題を完成させることができない。こんな子が塾に行って成績が上がると思う方がどうかしていると思うのです。

宿題がうまく捗らない……。
時間だけが流れる……。

そうして断念し、仕方なく答えを写し宿題を出す子もいるでしょう。それすら無駄に感じて、宿題をやらないまま塾に行く子もいるでしょう。

お母さんが夕食をつくる前にちょっと覗くと、計算問題の3番をやっていた。しかし、1時間後に確認してもまだ5番をやっている。

「1時間もダラダラしてどうするの! やる気がないならやめなさい!」

そう怒鳴って当然だと思うのです。たった2問しか進んでいないのだから。

でも実は、その2問のハードルがやたらと高い。子どもだけではこえられない難易度なんです。

計算のコツすらわからない子に、見たこともない分数だらけの四則計算ができるはずがない。当然そのコツを塾に習いに行っているわけです。しかし、私は一緒にやってみて知っています。

10問あれば10のコツが必要なんです。

だから、コツを教えてくれない宿題なんてやる気がしない。つまり、叱る親よりも宿題をやらない子どもの行動が自然だと思うのです。

不思議なことに世の中には最初からそんなことができる子が実在します。ホント不思議でたまりませんが、間違いなく実在します。

でも私は思うのです。

その数は難関中学の定員よりは間違いなく少ない。

絶対に空席があります。そこを奪い合うために塾に行くわけです。私たちのように親塾でやるよりもノウハウがある塾に行く方が絶対に近道だと思います。でもそこで塾に行かせるだけになってしまえば、やはりそれは時間をかけて妥協する運命になる。塾は親じゃないと思うのです。

私は、上澄みって最初から決まっていると思います。

まあ、うちの子みたいなバカは沈みますよね。

しかし、空席がある以上は狙わないといけない。「まだ空いてますよ~」と言っているわけですから。

東京女子御三家だけでも600人くらい合格者が出るんです。この数、スポーツの世界とは話が違いますよ。オリンピックのようにさまざまな年齢の選手が出るわけでもなく、世界中から集まるわけでもない。

通学圏内かつ、同級生から600人くらいなんです。

難関中学と呼ばれる中学の合格者数を男女すべてたすと、軽く1000人を超えるでしょう。

こんな美味しい話がありますか?

どの競技がこれよりも高確率ですか?

勉強はかなりの高確率だと思うのです。

 

子どもが下の方のクラスに入塾した場合。まずは認めましょう。我が子が上澄みではなかったことを。するとあとはどんな勝負になりますか?

親力の勝負ではありませんか?

勝てなかったのは小4でわかっていたはず。それなのに「子ども任せにして上昇しなかったとすれば、それは子どもが勝てなかったのではなく、親が負けたんだと思うのです。

私は学歴にコンプレックスがあり、かなり偏重しています。ヘンなやつだと思うでしょう。でも、入塾したときは難関中を夢見た人が多いと思うのです。最後まで偏重しましょうよ。カネに見合うものを手に入れないと損じゃないですか。

私が書いた記事の中で、娘のことを「うちのバカが」と表現することに不快感を覚える方がたくさんいるようです。多くの子どもが伸び悩み苦しむ中で、「難関中に進学したのに『バカ』と言われると、かえって嫌味に聞こえる」と仰います。配慮してほしいと仰います。

そうでしょうか?

このブログは何のためにあるのでしょうか。最初は自費出版本を宣伝するために始めたブログですが、その役目はもう終わりました。下剋上受験が発売されましたが、既にブログの読者数よりも印刷されている部数の方が多いわけです。もう興味のある方は買って頂いている可能性が非常に高い。

それでもブログは継続しているわけです。もうこれは他に理由はないでしょう?

こんなやつが書くブログがなくなるからです。

私も受験勉強しているときにブログを読んだりしていましたよ。でも参考にならないじゃないですか。

元々偏差値の高い子の話はうちには全く関係ない。親の頭がいいのもうちには全く関係ない。「これ、誰に向けて書いているの?」と思っていました。だって、頭のいい子は参考ブログ要らないでしょ。困ってないんだから。

私は望んでましたよ。ダメなやつが這い上がるブログを望んでました。でも残念ながらない。たまにあったと思うと塾の宣伝ブログだったりする。ふざけるなって話でしょ?

そう考えるとだんだん妬んでイライラして、ストレスになってきました。

できる子の親はブログなんて参考にしない。できない子の親は参考にするブログがない。この状態では困るでしょう?

だって、できない子の方が多いんだから。できないまではいかなくても、今の立ち位置よりも上を望んでいる場合の方が圧倒的に多い。

もうこれ、やめるにやめられなくなって困っているわけです。

どうか皆さん頑張ってくださいよ、こんなバカでも難関に行けるんだと気づいてくださいよ、塾の月謝に貢献するのではなく合格実績に貢献しましょうよ、そう願って書いています。

もし、我が子が伸び悩み、私が書く「バカ」という表現がストレスに感じる方は、どうかそのストレスを何かに変えてください。そしてストレスを感じない場所まで行きませんか。

いつまでも伸びなければ、我が子の宿題をもう一度ゆっくり覗いてみてください。おそらく、捗らない状態ですよ。子どもは困ってますよ。塾も子どもも悪くないですよ。そういうシステムなんだから。

 

どうします? ここで引きますか?

どんな競技よりも高確率だとわかっていて、すでにいくらか投資していて、ここで引くわけにいかないでしょう?

かといって、叱っても絶対伸びませんよ。

 

どうします?

個別指導を受ける、家庭教師をつける、親が教える、それも親力ですし悪くない方法です。でも、この3つの方法がどれもできない家庭もたくさんあるでしょう?

ほかにも方法があります。

子どもが困っているということに気づいてやるだけでいいんです。

 

気づいてやれば、本気で気づいてやりさえすれば、その子は自力でも頑張ろうとします。だって、親すらわかってくれないのに頑張る気が起きないでしょ。親が理不尽なことを言って叱るんですから、やる気が起きるはずがない。

我が子が困っているときに親がとる行動なんて皆が同じなわけがない。色々あっていいと思うのです。人と同じじゃなくてもいい。どんな方法であれ、その親がとる行動によって子どもは前進してきたわけです。今までずっとそうしてきたはず。

さっそく、やりましょうよ。

私が娘のことを「バカ」と表現しても笑っていられるようになるまで精一杯やってみませんか。いつものように困っている我が子をみて「どうしよう…」と思うだけでいいのです。

今夜のテーマは「下剋上を考え直す」です。

2014.9.5 am 1:50

桜井信一 

※記事の内容は執筆時点のものです

桜井信一
この記事の著者
桜井信一 専門家・プロ

オンライン塾「下剋上受験塾」主宰。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。 娘の下剋上のために一念発起して小5の勉強からやり直す。塾には行かず、父娘の二人三脚で偏差値を41から70に上げ、100%不可能とされた最難関中学「桜蔭学園」を目指した。その壮絶な受験記録を綴った『下剋上受験』はベストセラーに。 2017年1月には待望のドラマ化。学習講座「桜井算数教室」「国語読解記述講座」にはのべ2000人の親子が参加し人気を博した。2020年、オンラインの「下剋上受験塾」を立ち上げた。

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