中学受験ノウハウ 通塾の悩み

中学受験、学習量が増えてつまずく「小4の壁」を乗り超える方法とは?

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中学受験を目指す子どもは、小学3年生の2月(新4年生)から塾に通い始めることが一般的です。しかし、学習環境の変化が原因で、勉強でつまずいてしまうこともあります。学ぶ内容が増えていく時期に家庭でサポートできることを紹介します。

塾通いを始めると学習量はぐっと増える

中学入試では、小学校での学習範囲を超えた問題が出るケースも多く、幅広い知識と応用力が必要になります。特にトップクラスの中学校に合格するためには、かなり高度な問題を解かなければなりません。当然、学習量が増えるので、子どもが塾通いを始めると、「こんなに学ぶことがあるのか」と驚かれる保護者の方が多いようです。

この「量的な問題」は、子どもにとって大きな負担になります。学ぶことが多すぎて勉強への意欲を失い、挫折してしまうことにもなりかねません。そこで大事なのが、家庭で効率よく学習を行うことと、勉強へのモチベーションを上げることです。

スケジュール帳を使って、やるべきことを「見える化」する

家庭での学習を効率よく進めるためには、やるべきことの把握と、きちんとした時間管理が欠かせません。そのために必要なのが、「スケジュール帳」です。中学受験に成功する子どもたちの多くはスケジュール帳をうまく活用しています。学校に時間割があるように家庭でも時間割をつくって勉強に取り組みましょう。

まず、1日のタイムテーブルが一目でわかるスケジュール帳を用意します。次に、「朝食前の30分は理科の勉強をする」「夜○時から30分間は、学校の宿題をする」といったように、1日の予定を具体的に書き込みます。このとき勉強の予定だけでは、子どもの気持ちが苦しくなってしまいますから、「夕食後から30分は遊び時間にする」など、息抜きの時間もきちんと確保するようにしましょう。そして、勉強をしたら該当箇所を赤線で消していきます。すると、どれだけ勉強したかが目に見えてわかるので、子どもも「これだけやった!」という手ごたえが掴め、モチベーションアップにつながります。

一日のスケジュールを「見える化」すると、スキマ時間があることにも気付けます。例えば、「帰宅して夕食まで時間がある。この時間を暗記系の学習にあてよう」という工夫もできます。また、タイムテーブルの内容を振り返ることで課題も見えてきます。特定分野の勉強に時間をかけ過ぎている場合、なかなか理解が進まず、子どもが苦手と感じているのかもしれません。その場合は親子で話し合って、「塾の先生に積極的に質問してみよう」といったアドバイスもできます。

最初は親子で相談しながらスケジュールを立てて、子どもが自分で判断して決めていく部分を徐々に増やしていきましょう。勉強へのモチベーションを上げるために、スケジュール帳をデコレーションすることもおすすめです。色を付けたり、シールを貼ったりして、見ていて楽しいスケジュール帳をつくれば、気持ちも高まります。

効率よく勉強するためには、取捨選択する力も必要

中学受験に向けた勉強では、塾で習った内容を頭に定着させるために、家で類題を解く必要があります。ところが、子どもによっては、同じような問題を繰り返しやることを苦痛に感じ、勉強がイヤになってしまうケースがあります。

子どもの勉強をサポートするにあたり、真面目な保護者の方ほど、テキストの問題を全部やらなければいけないと思いがちです。しかし受験までの時間は限られていますから、全てをやっていては時間足りません。ですから、学習内容を子どもが理解できているかどうかを判断して、どの問題に取り組むかを取捨選択する力が必要になってきます。

私の場合、ある領域の学習内容を子どもが理解できているかどうか把握するために、その領域の問題をいくつか解かせてみます。全てできていれば、ほかに設問が残っていてもその領域はOKとして、次の領域へ移ります。そして、子どもが解けない問題が多い領域に重点を置いて勉強させています。算数のテキストなどは、ひとつのページに似たような10個の練習問題があれば、奇数番号の問題だけをやらせるなどの工夫もしています。

膨大な学習量をいかに効率よくこなしていくかが、中学受験の大きなポイントです。やるべきこととやらなくていいこと、両方を見極める視点を持つことが大事です。

※記事の内容は執筆時点のものです

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石田 勝紀
石田 勝紀 専門家・プロ

一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事。1968年、横浜市生まれ。20歳で学習塾を起業。これまで3500人以上の生徒を直接指導する傍ら、講演会、セミナーなどを通じて5万人以上の子どもたちを指導してきた。35歳で都内の中高一貫私立学校の常務理事に就任し、経営・教育改革を実践。現在は「日本から勉強嫌いな子を1人残らずなくしたい」という信念のもと、全国各地でママさん対象のカフェスタイル勉強会「Mama Cafe」を年間100回以上主催。著書は、『新時代の学び戦略 AI、スマホ、ゲーム世代の才能を育てる』(産経新聞出版社)、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)など多数。

石田勝紀 公式サイト

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。