中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

都立中学に向いている子の特徴とは?入学後も欠かせない3つの適性|公立中高一貫校合格への道#1

2023年3月31日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。当然、合格のための対策も、入学後の環境に向いている子の特性も、私立とは異なってきます。

具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがう新連載がスタートです。

はじめまして! 公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

オンラインサロンや公式LINEなど、保護者のみなさんとのやり取りは全てオンラインで行っています。そのため、時間や物理的な制約のないオンラインならではの距離の近さから、日常の何気ない話や、塾には言いづらいような親子関係に関するご相談を頂くことが多いです。

また最近は、受検生ご本人から、塾や対策について悩んでいること、さらには入学した後も、何かとLINEで相談が来ることもあります。こういったやり取りを年間1,000名以上と続けてきた結果、都立に向いている子、向かない子には、はっきりとした違いがあると感じるようになりました。

都立中受検はご存知の通り倍率も高く、およそ6,650名が受検し、そのうちの5,000名以上は、ご縁を頂くことができません。ずいぶん倍率は下がってきましたが、それでもかなりの狭き門であることには変わりありませんよね。

都立で充分にやっていけるかどうか(=適性があるのかどうか)、をみるのが「適性検査」ですから、都立中に向く子の特徴はそのまま、受かる子が持っている特徴と考えることができます

適性型との相性・向き不向き、つまり「適性」そのものについて考えることは、都立中を目指すかどうかを決める際の大きな判断材料になりますし、長い目で見れば、入学した後のミスマッチを防ぐことにもつながります

ということで前置きが長くなりましたが今回は、受検生活を乗り越え狭き門を突破し、そして、都立中での生活を満喫している子達が持っている特徴を3つ紹介したいと思います。

1.客観的自走型であること

適性検査対策に、正解はありません。

何かの単語を覚えたからといって、それが使える問題が出ることは無いですし、読む力・書く力・計算する力・推測する力……など、様々な力が複合的に絡み合って得点が伸びるものなので、言われたこと「しか」取り組まないタイプには向きません。

また同時に、当たり前ではありますが、言われたこと「すら」不十分では、高い倍率を突破することは難しいです。

たとえば倍率が5倍の学校の合格を目指すのであれば、実力も、努力も、ライバル5人の中で1番である必要があります。ある程度受検が迫ってきたと感じる遅くとも夏休み明けくらいには、受検を「自分ごと」として捉えられるようになり、ゲームやテレビなど自分でルールを決め、言われなくてもタスクを決め自分から取り組むように変わっていく子かどうかで、秋以降の成績は二極化していきます

もちろん、理想的な取り組みが出来た子達の中でもごく一握りしか入れないのが都立中の厳しさですから、門の狭さや自分の立ち位置を客観的に捉えた上で、自ら机に向かい、さらにもう一段階ギアを上げられるような子が望ましいです。

入学後は、3月中に結構な量の課題が出ます。

また、日々の膨大な予習・復習や、定期テスト前のとてつもない量の課題があり、多くの子が、「受検勉強の何倍も大変」と言っています。

保護者の方からも、毎日夜更けまで机に向かったり早朝から必死で取り組んだりしている様子を見て、頼もしいと感じる反面、無理をしすぎではないかと心配する声もあります。

中学、高校に入るとSNSなど様々な誘惑が増えますが、しっかり自己管理をして日々計画的にこなせる子でないと、入ってからが苦しいです。

さらに、生徒は「お客様」ではないので、ただ待っていても、成績向上のために手を差し伸べてもらえることはまずありません。

何が足りないのか、どこが理解できないのかきちんと自己分析をし、そのうえで、自分から先生に教えを請いに行く必要があります。小学6年生の時点の学習に対する姿勢は、中学校に入ってから大きく変わることはありません。

入学させれば一安心、ということはないので、自分の強みや弱点を客観的に見ることができ、向上するためにやるべきことを探して進んで取り組めるようなタイプが求められます。

2.目的意識があること

以前、ある都立中学の校長先生にインタビューさせて頂いたとき、「都立に向いている子」について尋ねると、「何のために入りたいのかがはっきりしている生徒」というお話がありました。

実際、これまでの合格者を見ても、入った「後」のビジョンを明確に持っているように思います。都立中はあくまでも通過点であって、その先に目指す像があり、その夢を叶えるために、近道の一つとして都立中を捉えています。そういった目的意識があればこそ、高倍率へのプレッシャーや入学後のハードな日々も乗り越えられるのだと思います。

特にここ数年は「今後、どう生きていきたいか」が作文で問われる流れが戻って来ていますから、「この学校で、どうしたい?」と聞かれたときに、目を輝かせて目標を語れるような生徒が求められているように感じます。

3.従順さと自我のバランスの良さ

都立中を語る上で、「自主・自律」という言葉は欠かせません。

主体的、自主的、自律……といったワードが学校案内にも多数登場します。

つまり、自分の頭で考え、振り返り、改善し、行動していくような生徒が強く求められているということです。ですがこの「自律」は、「自分のやりたいようにやることが尊重される」という意味ではありません。

出る杭が打たれるような経験も、言われた通り取り組まないといけない窮屈さも、無いとは言えません。

特に1年生のうちは、課題の取り組み方や学校によってはノートの書き方まで細かく指示があり、それ通りに取り組まないと、成績の良し悪し関係なく認められないこともあります。

先生や学校からの指示に対して、「もっとこうした方がいいのでは」「本当にそうしないといけないのか」「なぜこれが必要なのか」といった疑問は感じたとしても手を止めず、まずは継続してやってみる、という従順さが求められます

行事や委員会の運営については自主的に動いたり考えたりといった自律スキルは求められますし、個性という面では小学校と比べると居場所を得られる子も多いのですが、「自主的」を「自由」と捉えると「こんなはずでは……」というミスマッチが起こります

あくまでも公立の学校であることはしっかり意識しておいた方が良さそうです。

さいごに

さて、初回からなんだか気が重くなるような話になってしまいましたが、せっかく高い倍率を突破したのに、日々の課題の多さや指示の細かさに辟易して「行き渋り」がおきたり、自信を喪失して「進学校の深海魚」になってしまった……という話を聞くたびに、ご本人や保護者の方の気持ちを想像すると胸が苦しくなります。

だからこそ、入るための厳しさだけでなく、入学してからの厳しさもきちんと伝えた上で、それでも目指したいのかどうか、考えるきっかけにして頂けたらと思います。

次回からは、がらりと雰囲気を変えて、模試のタイミングや選び方、保護者の関わり方など、より具体的なお話をしていきます。お楽しみに!

※記事の内容は執筆時点のものです

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