連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験 探究型の学びはどう影響する?|親子のための、「探究」する中学受験

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2019年6月27日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験でも「思考力型入試」を取り入れる学校がどんどん増えています。その流れを受けて、受験生はどんな力をつけるべきなのでしょうか。大手進学塾を含め15000人を超える直接指導経験を持つ知窓学舎の矢萩邦彦先生に、思考力養成のカギとなる「探究型学習」について聞きました。

社会や価値観の変化が、「探究型学習」を求めている

近年、中学入試で「思考力型」や「教科横断型」と言われるような出題が増えています。背景には、社会の変化や、保護者の価値観の変化があると思います。

わかりやすい変化のひとつは、大学入試改革です。2020年度入試から新テスト「大学入学共通テスト」が導入され、これまでのセンター試験にはなかった記述問題が導入されます。社会の変化に伴い、必要とされる能力も変化してきたため、「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」を重視するという考えをベースにした変更です。また、この改革に先立って、すでに多くの大学がアドミッションポリシーに基づいた新しい入試をはじめています。

この大学入試の変化に対応するために、中学受験も変わってきているという見方がひとつ。もうひとつは、幼児教育や小学校低学年の学びが保護者のみなさんの注目を集めていて、その中心にあるのが「探究型学習」であるということです。

従来的な知識のつめこみや、読み書き計算などの技能の向上だけをめざすのではなく、「楽しんで学ぶ」とか「遊びながら方法的に学ぶ」「自ら問題を発見してそれを解決するために学ぶ」というような探究的アプローチのほうが、学びの本質に近いのではないかと気づいている、従来型ではない価値観の保護者がとても増えてきているわけです。

それを受けて、私立中学校などが「新しい学びをやっていますよ」というメッセージとして思考力型入試を取り入れるという流れがあります。社会の変化にともなう教育改革、保護者のみなさんの学びに対する価値観の変化、これらが探究的な学びの必要性を高めていると思います。

「何について考えたか(知識)」よりも「どのように考えたか(方法)」が重要

前述した「大学入学共通テスト」の記述問題が実際にどういうものになるのか、確かなところはまだわかりませんが、近年実施された、いくつかの大学入試問題からその傾向を想像することはできます。

たとえば、誰もが知っているゲームを例に出し「このゲームに新たな選択肢を加えて新しいゲームを作りなさい」というような問題。これは「目的」と「ルール」を作り出せという問題なんですね。AIにはできない部分の能力を問う出題といえます。

また、小論文を与えて「あなたならどんな出題をしてどう答えますか」というものもありました。これも目的を作り出し、自ら客観的検証ができるか、出題から解答までの整合性があるか、という部分を見ている問題だと思います。

あとは、絵や写真を見せて「感じたことを自由に書きなさい」というもの。この場合、ただ好き勝手な感想を書くのではなく、出題している大学のアドミッションポリシーを理解したうえで、どんな人材が求められているかを推測し、大学側から共感を得られるような視点で解答できるかがポイントになります。

上述した3例のような問題が、今後さまざまな大学で入試問題の参考にされる可能性はおおいにあると思います。こうした「何について考えたか(知識)」という学習経験よりも「どのように考えたか(方法)」を評価するような問題は、たとえば高2~高3の受験勉強ですぐに対応できるものではなく、対話のなかで時間をかけてものごとを探究し、「思考」の方法を身につける必要があります。

そうなると、受験前に受験対策をするのではなく、小学生のうちから主体的・対話的な深い学び、「探究型学習」をしておいたほうがいいという考えが説得力を持ちますよね。

中学受験は、親も探究的な姿勢を持って

探究型学習の必要性が高まり、注目を集めているといいましたが、僕自身としては探究的学びに20年以上前から取り組んできたので、「やっと探究の時代がきた!」という思いです。ですから偏差値や点数だけで評価しない入試には賛成です。

本来、学びは目先の試験やその合格を目標とするものではありません。自ら人生を切り拓き、楽しみ、豊かに生きるためのものです。受験となると「合格」だけがゴールに思えがちですが、重要なのは中学受験をどのような体験にするかです。

子どもの個性を見極めたうえで、勉強法やサポート体制、塾選びについて親子で対話する。そして受験勉強を通して主体的に試行錯誤をして課題を乗り越えていくという、探究的な体験にできれば、合否に関わらず後の人生に活きるキャリアとなるはずです。合否という結果よりも、プロセスをどのように導くか、ぜひそこを強く意識していただきたいと思います。


■「親子のための、「探究」する中学受験」バックナンバー

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。近著に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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