連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験 「探究型」で受験勉強するメリットとは|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2019年7月16日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」の傾向として「解答の正誤より、思考のプロセスに注目する」という点があげられます。話題の学習法ではありますが、入試解答の正誤が問われる受験シーンにおいて、どう作用するのでしょうか。大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に「探究型受験勉強」について聞きました。

まずは、探究的視点で中学受験をみてみよう

探究型の受験勉強とはどんなものか、なかなかイメージできない方も多いと思います。ひとことで言えば、偏差値ではなく、受験生それぞれの個性や興味を軸にして学習や進路相談を進めるということです。僕が塾長をつとめる横浜の知窓学舎ではそうした方法をとっています。

たとえば少人数制の授業であれば、対話をするなかで、子どもたちにどんなポイントが響いているか、何を面白いと感じているか、どんな考え方を持っているのか、個人ごとに見えてきますよね。そうすれば相性のいい問題や、どんな教育方針や方法とマッチしそうか、ということもわかってきます。

そこで、「じゃあ、君ならこんな入試をする中学校に行ってみるのもいいんじゃないか?」という具合に進路指導につなげ、その生徒に合った学びのプロセスが自然と受験対策になるような流れを作ることができます。

保護者の皆様には、まずこのようなアプローチで受験に向き合う方法があることを、認識していただきたいと思います。周囲と競い合いながら点数アップ、偏差値アップをめざすような、画一的な方法論だけで中学受験をとらえることをやめる、それが「探究×受験」という学びの第一歩になります。

中学受験に向けた、探究型授業の進め方

知窓学舎の授業では、時事を扱うことが多いです。直近のニュースからピックアップしたテーマや写真などの資料をもとに、クラスでディスカッションをすることで、国語力と思考力を同時に伸ばしていきます。

たとえば、人間と人型ロボットがトングで“おかず”を仕分けしている様子を写した一枚の写真を見せます。それを見て気づいたことを議論していくのです。

最初は、「このおかずはミートボールか、いや唐揚げか?」なんて意見がでますが(笑)、そのうち片方の人物が不自然なことに気がつきます。そうすると、「これはロボットじゃないか?」「なぜ人間とロボットが一緒に仕事をしているのか?」さらに、「なぜロボットは人型である必要があるのか? この技術はほかのことにも転用できないか?」「トングの持ち方が人間とロボットでは違う」なんて視点も出てきます。

何が正解かは問いません。他者の意見を聞くことで、新たな視点や知識を得て自分をアップデートさせることが狙いです。また、議論の場で多くの生徒が興味を持ったポイントを、既存の教科書にあるテーマと結びつけることも狙っています。前述の例で言うと、トングの持ち方から関連して「力学」の話につなげ、支点・力点・作用点のことを教えていく、という流れですね。

主体的に参加するディスカッションなどの体験と時事問題や教科学習をリンクさせることで、実感をともなった深い知識として定着します。また、広い視野でほかの事象と結びつけて考えることができるようになります。こうした学習への姿勢や、考える方法を身につけることこそ、受験対策の前にまず、子どもたちに得てほしい力だと考えています。

合格よりも大事な「自走できる力」

前述したような探究型の授業を繰り返していくと、あるテーマについて自分でどんどん考えを深めたり、「もっと知りたい」という気持ちを高めていくことができるようになります。自走して学習できる力がつくのです。

その延長で中学受験に挑戦するならば、周囲と競い合って疲弊したり、中学受験を過度に神格化・深刻化したりせず、自分なりの目的を持ってポジティブに臨むことができるのではないでしょうか。それが、探究型学習で受験勉強を進めることの大きなメリットといえると思います。

受験勉強の期間を、ただ合格点に達するためだけの活動にしてはいけません。「中学受験」という幅広く難しい課題にチャレンジし、興味を発見し、自ら探究していく時間にするという意識を、ぜひ親子で持っていただきたい。その先には合否だけにとどまらない、実り多い中学受験体験が待っているはずです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。近著に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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