連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

【低学年向け】夏休みの過ごし方 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2019年7月29日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

前回は、「志望校の選び方」について解説しました。今回は、「低学年の子の夏休みの過ごし方」についてお届けします。

低学年の子の夏休みの過ごし方

中学受験では、「夏を制する者が受験を制す」とよくいわれますが、本格的に受験態勢に入っていない低学年の子は、夏休みをどのように過ごすべきなのでしょうか。私なりの考えを説明していきたいと思います。

低学年の夏休みは、勉強だけに縛りつけない

「将来は中学受験をさせたい」という場合でも、低学年のときから子どもを勉強に縛りつける必要はありません。3年生までは、市販の夏休み用の薄いテキストを1冊こなす程度でいいでしょう。あとは学校で出された宿題を計画的にこなせば大丈夫です。

ちなみに、4年生になったら「朝に必ず計算ドリルをやる」「午前中は4科目をそれぞれ数ページやる」というように、ルーティンをつくってみましょう。これらは、受験勉強に向けたよいウォーミングアップになります。夏休み中に机に向かって行う勉強は、これだけで十分です。

外出先で子どもの好奇心を刺激する

中学受験に向けた基礎を築き上げるために、とても大切なポイントがあります。それは、「子どもの好奇心を刺激してあげること」です。

夏休みは、親子で外出したり、家族で旅行に出かけたりする時間がたくさんあります。外出先では子どもの知的好奇心を刺激して、なるべく多くの情報に子どもが接することができるようにしましょう。

知的好奇心は、勉強の楽しさを知るために欠かせないもの

旅先に向かう電車やバスのなかであっても、子どもはいろいろな情報を吸収します。これは、情報の「インプット」です。そして子どもは、知ったことを身近な人に話したくなるものです。これは、情報の「アウトプット」です。

インプットした情報をアウトプットする――この流れをスムーズにおこなえる子は、成長速度が速い傾向があります。

知的好奇心は、「インプット・アウトプット」の場をつくるきっかけになる

かつての教え子が、見事な動物の絵をホワイトボードに描いていたことがありました。「これは何の動物の絵?」と聞くと、「トムソンガゼル!上野動物園にいるんだよ」と説明してくれました。

すると、ほかの生徒も集まってきて、「情報収集大会」が始まったんです。

「どれくらいの大きさなの?」
「どこに生息しているの?」
「何を食べているの?」

いつのまにかそこは、生徒たちの「インプット・アウトプットの場」となっていました。だれかから疑問が出れば、別の子が調べて、みんなと知識を共有する。そして、またほかの子から新たな疑問が出る――。どの子も新しい情報を得るたびに、イキイキと目を輝かせていました。「トムソンガゼル」がきっかけとなって、知的好奇心を育てる場が自然とつくられたんですね。

知的好奇心の「種」を育てる

知的好奇心の「種」を子どもに与えて、興味を膨らませてあげれば、「もっと知りたい!」という気持ちが子どものなかで高まります。この「もっと知りたい!」という気持ちは、「勉強で新しいことを学ぶ楽しさ」に気づく原点です。

子どもが夢中になって好きなことの知識を集めているときに、「そんなことばかりやってないで勉強しなさい!」と叱るのは避けたいですね。代わりに、質問を投げかけたり、褒めてあげたりして、「知識を身につけるのは良いことなんだ」と子ども自身に感じさせることが大切です。

特撮ヒーローの怪人や怪獣をたくさん知ることも、立派な「勉強」です。知的好奇心の種を大切に育てることで、子どもは勉強の楽しさに気づきやすくなります。

家族旅行の計画は、子どもにも立てさせる

夏休みに家族旅行に行くときは、子どもにも旅行の計画を立てさせてみるのがおすすめです。「行きたいところを1か所考えてみて!そこにも行こうね!」と声をかけて、子ども自身がネットやガイドブックで情報収集をするように促しましょう。

「京都のまちって、真四角に区切られてるんだね!」
「清水寺って、『今年の漢字』を発表するところなんだね!」

子どもは、調べ物をしながらいろいろなことを発見していきます。「そんなの知ってるよ」と言わず、「すごいね!」と褒めてあげましょう。子どもはどんどんうれしくなって、「もっと調べよう!」という気持ちが強くなっていきます。自分であらかじめ調べた知識をもとに旅行に行くと、旅の感動は大きくなりますし、思い出も鮮明に残りやすくなります。

実際に体験すると、記憶にしっかり定着する

わたしの塾に、「木曽三川(きそさんせん)」の問題を解くのが大得意という生徒がいました。その子は、夏休みに家族で行った三重県のナガシマスパーランドと、その周辺のことを鮮明に覚えていたんです。実は、木曽三川はナガシマスパーランドのすぐ近くを流れていて、水面よりも地面が低くなっている「輪中(わじゅう)」や、洪水に備えて大切なものをしまっておく「水屋」などを見ることができます。その子は、それらを完璧に記憶していました。

このエピソードは、「実際の体験が、思わぬかたちで勉強につながる」という好例です。教科書からだけではなく、楽しい思い出からも勉強に役立つ知識が得られる、ということですね。

知的好奇心を育てるには、低学年までの過ごし方が肝心

5年生を過ぎたあたりから、子どもは自我に目覚め始めます。旅行の計画を立てさせようとしても、「面倒だからやりたくない」と反抗することも増えてきます。だからこそ、素直になんでも吸収する低学年までは、子どもの知的好奇心を育てる絶好のときです。

学校や塾で行う勉強は、「知りたい!」「学びたい!」という気持ちが強い子を成長させる、一部の要素にしか過ぎません。教科書を使った勉強だけでなく、テレビで知ったことや、その日見た景色、人から聞いた話なども、大切な成長の要素です。身の回りのさまざまなことから学べる子は、“机のうえでしか勉強しない子”と比べると、中学受験の勉強を本格的にスタートしたときの成長速度が格段に違います。

低学年の子には、学びにつながる思い出や、知的好奇心が満たされる喜びを、たくさん得られる夏休みを過ごさせてあげたいですね。

次回は「高学年の子の夏休みの過ごし方」を解説します。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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