連載 親子のための、「探究」する中学受験

「母語力」が受験勉強に必要なワケ|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2019年10月07日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

受験勉強といえば、国語・算数・理科・社会など教科ごとの学習が頭に浮かびますが、まずは「母語力」が重要だと知窓学舎の矢萩邦彦先生は説きます。今回は「母語力」と学力の関係についてうかがいました。

思考力に密接に関わる「母語力」

母語の力は、すべての教科の基礎です。教科書や問題文を正確に読めなければ、学力向上が難しくなるのはイメージできると思います。母語を「読む・書く・聞く・話す」という基本的な4技能はもちろんです。しかし、さらに重要なのが、母語で「思考する力」です。

「自分はどう考えるのか」、「頭の中で何が起こっているのか」。ものごとを咀嚼したり、自分の考えを自己評価したりすることが思考だとすれば、そのためには日常的に使っている言語、すなわち、家族と話したり、難しいことを考えるときに頭の中で使っている言語である母語が必要なのです。

京都大学総長の山極寿一氏は、日本からノーベル賞が多数出ている理由のひとつに、母語で基礎研究ができる環境があることを挙げています。

日本は翻訳文化が盛んで、多くの論文が日本語で読めるんですね。日本語の論文を読み、日本語で考えることができる。海外における専門分野の研究では多くの場合、最初から英語の論文を使いますから、英語が母語ではない研究者にとっては外国語で思考することになるわけです。

対して、日本の研究者はまず母語で思考できるから研究も深めることができるんですね。かのアインシュタインも自身の論文も母語であるドイツ語で執筆していました。使い慣れた言語が最も考える基盤になるんですね。外国語はあくまでも伝えるためのツールというわけです。

母語をしっかり理解して使い、考えることができているか。これは数値化などができず、可視化しにくいので後回しにされがちですが、重要な力であることを理解していただければと思います。

母語力アップの落とし穴

母語力とは端的にいえば、論理的な国語力、つまり日本語で正確に読み・書き・聞き・話し、そして考えることができる力です。この力をつい後回しにしてしまう理由の一つは、国語が積み上げ型の教科ではないからです。

たとえば算数なら、まず足し算ができなければ、かけ算はできません。かけ算ができないと、割り算ができない。公式を知らなければ、面積を求めることもできない。このように、積み上げ型学習で進みます。だから、つまずいたときに逆算していくと、どこができていないかを明らかにしやすいのです。そしてその部分をクリアすれば、段階的に登っていくことができます。

ところが、国語は違います。分からない単語が出てきても、前後の文意で推測できてしまったり、文法が分からなくても文脈で判断できてしまったりします。つまり、どこか途中が抜けていても先に進めてしまうのです。これが、国語の基礎力不足になかなか気付けない要因になっていると思います。

もう1点、相手のことをよく知っていると、単語の意味や用法がめちゃくちゃでも、文脈がなくても、通じてしまうこともポイントです。

家族や仲の良い友人相手だと、文法が誤っていたり、たくさん省略して話しても通じてしまうのはその最たる例です。ですから、ごく親しい人間との会話だけでは正しい国語力のトレーニングにはならない。そこも落とし穴といえますね。

「うちの子はとっても話し好きなのに、国語の成績が悪い」などとお悩みの場合は、このパターンの可能性もあります。

母語力を高めるためには

だからこそ、国語力アップのためには、子どもの状態に応じて、どこをバックアップすべきかを注意深く見てあげる必要があります。

単語を知らないのか、文法をわかっていないのか、または文脈の読み取り方がおかしいのか。子どものつまずきポイントを見極めることがとても重要です。

家庭だけでこのバックアップが難しいときは、塾などを頼るのもいいでしょう。できれば少人数でプロ講師が生徒個人ごとの状況を把握してくれるところが理想ですね。

家庭でできることは、以下の2つをおすすめします。

1、WEBの記事などではなく、編集者がついている現代文の本を読む

正しい文法で書かれた文章を読むことができるため。基本的には著者名がしっかりと書いてあり、紙媒体で出版されている単行本であれば、本のセレクトは子どもご家庭の基準でOKです。

2、接続詞や副詞をしっかり使う

文法を理解できれば、文章構成もとらえることができるため。また、自分で考えるときに思考のツールとして使えるため。

接続詞・副詞についてはまずは以下の5つだけでいいのでしっかり使えるようにしましょう。

  • なぜなら
  • だから
  • たとえば
  • ようするに
  • しかし

なかでも 「なぜなら」は特に大事です。文章を書くときに使うと以下のようなメリットが得られます。

  • 意見について「なぜなら〇〇だから」と理由を書く必要があるため、考える導線になる
  • 理由を書くことで読み手を説得しやすい
  • 根拠を明らかにするから科学的な説明になる
  • 【AなぜならB】→ 前後を入れ替えると【BだからA】となり、「だから」に変換して使える

まずは家庭でできることを意識して、日常生活の中で母語力アップを意識してみてください。受験勉強はもちろん、人生のあらゆるシーンで武器となる力なので、継続して取り組めるといいですね。


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※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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