中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

タイムマネジメントの落とし穴|親子のための、「探究」する中学受験

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変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を25年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験で必須となるタイムマネジメント。入試までに学習を積み重ねていくために重要なことですが、小学生自身だけで行うのは難しいものです。塾のスケジュールの見方や、保護者に必要な視点について、矢萩先生にうかがいました。

今のスケジュールはわが子に合っている?

多くの小学生にとって、目標から逆算して計画し、確実に実行していくということはかなりハードルの高い作業です。したがって、受験勉強には、保護者や塾の講師がタイムマネジメントするなど、大人の介入が必要です。

たとえば東京・神奈川の学校であれば、6年生の2月に入試が行われると決まっていますから、それまでにどんな分野を習得しなくてはいけないかがわかります。

入試から逆算して、いつまでに何をするか――こうした計画が求められるのは受験勉強では仕方がないことでしょう。実際に大手進学塾を中心とした多くの塾では入試から逆算し、平均化したスケジュールを設定しています。

しかし注意したいのは、効果的なスケジュールというのは人それぞれだということです。子ども一人ひとり、興味の度合いや理解度はまちまちですから、すべての子に同じスケジュールをあてはめるのは本来不自然なことなのです。

逆算・平均化した塾のスケジュールにフィットする子もいますが、それがわが子に合っているかどうかは注意深く観察する必要があります。

わが子が塾のスケジュールにフィットしているかどうかのジャッジはシンプルです。ある程度の期間通塾しているのに成績が全然上がらないとか、むしろ下がっているという場合、おそらく進め方が合っていないのだという判断ができます。

そういう場合は、転塾を考えたほうがいいと思います。ペースに合った進め方ができる場を選びなおすべきでしょう。また、そもそも中学受験をすることが本当にその子に合った選択なのか、それも合わせてしっかり考え直す機会にしてほしいと思います。

子どもの探究心を育むタイムマネジメントとは

多くの大人は子どもの学習時間をマネジメントする際に全体の物量から割り算をしがちです。「80ページのテキストは一日1ページやれば80日かかるね」という考え方をしがちということです。

こうした考え方がすべてにおいて間違っているわけではありませんが、学ぶ内容によって関心と理解にかかる時間に差があることを念頭に置いきたいところです。たとえば、理科のテキストに出てくる「昆虫のからだのしくみ」と「てこと滑車」というテーマでは、子どもの興味関心によって当然進み方が変わってきます。

「何月何日までにこのテキストを終わらせよう」とざっくりした計画を立てることは意味がありますが、リミットまでに1か月くらいは余裕を持たせて、子どもが熱中できるテーマがあったらそこに少し時間をかけてあげる。そういう調整が可能な計画を立てることが大切だと思います。

好きな分野や得意な分野は短時間でもいいかもしれないし、逆に好きな分野を「もっと深めたい!」となったら時間をかけてもいいのです。「今日おもしろかったなら、明日もやってみようか?」という計画変更もよいでしょう。モチベーションをキープすることも計画のうちです。

学びたい気持ちに火がついているなら、のばしてあげる――これが子どもの探究心を育むうえで求められる視点です。

そのためには、子どものくいつき具合など反応を都度みていく必要があります。子どもの成長を大きく後押しできる機会ですから、ぜひ意識してみてください。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

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