中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

中学受験 相性のいい塾の選び方|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ
2019年8月19日 中学受験ナビ 編集部

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブ・ラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を20年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

中学受験をすると決めたら、ほとんどの場合塾に入ります。「塾選び=学ぶ環境選び」でもあるので重要です。わが子が力をのばしやすい、相性のよい塾はどのように選べばよいのでしょうか。大手進学塾を経て探究塾を主宰する矢萩邦彦先生に聞きました。

「損得勘定はしない」の覚悟を持とう

中学受験をしたほうがよいかどうかは「子どもの個性による」ということをこの連載でも何度か述べていますが、塾選びも同じです。

まずは子どもの個性をしっかり把握することが大前提。競争やテストが好きか、ひとりで宿題ができるか、コミュニケーションが苦手ではないかなど、その子の個性や成長度合いを確認しながら、候補となる塾の目星をつけていきましょう。

そのうえで、塾選びに有効な方法は2つあると思っています。

1. とにかく体験授業を受けてみる

2. 塾や学校を熟知した塾選びアドバイザーのような人に聞く

2のような人物を見つけるのは、なかなか難しいかもしれません。しかし、今後は子どもの個性をふまえた進路相談ができる人物が、多くの塾・学校に存在するようになっていくべきだと思っています。ただ、どうしても所属している塾や学校に寄った目線になりがちなので、フラットな情報・意見かどうか見極める必要があります。少なくとも僕が主宰している知窓学舎ではこの役割をはたせるようにしています。

2が難しいとなると、やはり1の方法が現実的です。ここで保護者の意識として重要なのは、まずは「損得勘定」をしない覚悟を持つことです。「通いはじめちゃったんだから、何か月かはその塾に通いなさい!」というような意識は持たないことです。子どもに合っていないなと思ったら、きっぱりやめる覚悟も持っておきましょう。

一番重要なのは担当講師との相性

塾の体験授業に行く際は、子どもだけでなく保護者の方も同行することが大事です。子どもの印象はもちろんですが、一番近くで子どもをみている保護者の視点も重要な判断基準になります。初見の勢いだけで決めずに、少なくとも3つ以上の塾の体験授業を受けて、比較検討できるとよいと思います。

保護者に見てほしい点はいろいろありますが、僕は生徒個人個人をしっかりみてくれるかを重視します。ですので、少人数クラスであるかはチェックポイントです。大人数クラスで講師が生徒ひとりひとりをきめ細やかに見ることは物理的に難しいです。

そして、一番重要なのは担当講師と子どもの相性です。体験授業を保護者も見学できる場合は、担当講師が子どもとしっかり対話しながら授業するか、その点をできる限り確認してみてほしいです。

答えが正解か不正解かをジャッジするだけのやりとりは対話とはいません。相手の発言を受けて対応する、会話のキャッチボールになっているかが大事です。「発言からみて、この子はこう考えてるんだな、だとしたらこう導いていったほうがいいな…」というような姿勢で講師が授業に臨んでいるかということです。

しかし、塾の体験授業を保護者が見学できない場合もあります。そういった場合は、授業後に「ちょっとお話できますか」と言って担当講師にコミュニケーションをとってみると、ある程度の感触を得ることができると思います。このときに話すことは雑談レベルでかまいません。

このとき、保護者とまともに会話ができないような人物であれば、子どもたちとの対話を活かした授業はできないだろう、という判断ができますよね。

広報担当者や塾長だけでなく、実際に授業を担当する講師と話してみるというのは重要ポイントです。会話してみた印象や直感を塾選びに活かしてください。

「トイレはきれいか?」も実はポイント

これもお伝えしておきたいのですが、塾を見に行ったら「トイレが汚れていないか、きれいに管理されているか」をチェックしてみてください。トイレが汚いところは生徒の見方も雑になりがち、というのがこれまでの経験上、僕が感じる傾向です。

以前大手塾で指導していたころ、生徒たちに「塾のイヤなところはどこ?」と聞いてみたことがあるのですが、「トイレが汚いのがイヤだ!」と言った生徒がけっこうな数いて、とくに成績上位者に多かったのも印象的でした。

塾で過ごす時間は短くありません。そう考えれば、トイレも学習環境の延長ですから、手入れがされていて快適であるかは重視していいと思います。「汚いからガマンする」なんていう生徒もいましたが、それでは授業に集中できません。

口コミは「だれの?」に注目

塾選びでさまざまな口コミを参考にする場合もありますよね。インターネット上の口コミもある程度は参考になりますが、おすすめは「自分たちと価値観が似ている家庭」の保護者の意見を聞くことです。「子どものタイプが似ている家庭」の保護者に聞くのもいいでしょう。

特に地元エリアのローカルな中小塾は、上記のような周囲の保護者たちから口コミを得るのは非常に有効だと思います。いい塾であれば地元で少なからず話題になるはずです。また、よい口コミがたまるということは、それなりの年数、教室の運営を継続できているということでもあります。経営的な面での安心感にもなると思います。

いくつか塾選びのポイントを述べてききましたが、すべては子どもが探究的に学びを楽しめる環境はどこかを探すためです。保護者のみなさんには、「子どもの個性と学ぶ環境とつなげてあげる」という意識を常に持ってほしいと思います。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

実践教育ジャーナリスト・知窓学舎塾長・株式会社スタディオアフタモード代表取締役CEO・教養の未来研究所所長。1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場で「パラレルキャリア×プレイングマネージャ」としてのキャリアを積む探究型学習・想像力開発・パラレルキャリアの第一人者。15000人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした統合型学習塾『知窓学舎』を運営。「現場で授業を担当し続けること」をモットーに、実践教育ジャーナリスト・教育カウンセラー・探究学習コンサルタントとしても活動している。グローバルビジネス学会・日本アクティブ・ラーニング学会・日本産業カウンセリング学会・キャリアコンサルティング技能士会所属。著書に『中学受験を考えた時に読む本』(編集著:洋泉社)、『先生、この「問題」教えられますか?』 (石川一郎・矢萩邦彦著:洋泉社)など。Yahoo!ニュースで『越境ウォーカー』を連載中。

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