連載 合格する子どもの伸ばし方

これからの時代に必要な力【3】コミュニケーション力|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年2月13日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

これまでの大学入試では、とにかく暗記ができればなんとか乗り越えることができるという問題形態のものが多かったといえます。しかし、そんな時代が終わりを迎え、これから求められる力は多様化していきます。

そのひとつが「コミュニケーション力」です。

話す力と聞く力の両方を身につけさせよう

コミュニケーション力は、社会に出てからもっとも必要となる力です。

小学生と接していると、休み時間や日常的には話ができるのに、人前で話す場になると突然固まってしまったり、小さな声でぼそぼそとしか話せなくなってしまう子がいます。能力は高いのに、うまく説明することができない子もいます。

「いまはできなくても、大人になって仕事をすればどうにかなるのでは?」

と思うかもしれません。でも、そもそもその前に壁にぶちあたってしまう可能性があります。それは、大学入試です。

現在、一般入試の枠が減り、推薦入試やAO入試が増えています。活動報告書や学習計画書を提出させ、面接や小論文で合否を決めるのです。そうすると、自己アピール力やプレゼン力が大学入試でも必要になります。

就職試験にも同じことが言えます。日本人は「GPA」をそれほど重視していません。GPAとは簡単に言うと、大学の成績を数値化したものです。

もちろん、外資系企業では足切り点があって、選考すら受けられないということもありますし、あまりに低いと不利になるでしょう。しかし、企業としては、

「大学の成績と人物評価は比例するとは限らない。とくに日本人は中学・高校でしっかり勉強して大学に入っても、反動で勉強に打ち込まなくなることもある」

と考えています。今後は、GPAより面接が重視されるようになります。

早稲田大学から、日本M&Aセンターに就職した教え子が言っていました。

「コミュニケーション自体は大学のときも苦手でした。でも、面接で発言に間違いがあったり、詰められても、黙って相手の目を見て、話を聞いて、どこで誤解を招いているか理解できるまで質問をして、自分から逃げなかったのがよかったと思います」

彼によると、ほとんどの学生は面接官から鋭い質問をされると、逃げ出したくなるような表情をしてしまったり、早く話を切り上げようとしてしまうそうです。

コミュニケーション力というと、「うまく話すこと」だけを意識しがちですが、相手の話に落ち着いて切り返せるかどうかも、評価につながるということですね。

小学生のうちから人前で話す機会を持たせよう

まず、子どもに親以外の大人と話す機会を作りましょう。

祖父や祖母、親戚のおじさんやおばさん、近所の人でもいいでしょう。

「あいさつはコミュニケーションの基本」と言われますが、大きな声であいさつさせることは、とても大切です。マンションの管理人、学校の用務員、先生など、いつも会う人には大きな声であいさつさせましょう。内気な子でも、「これだけはやりなさい」と「低いハードルを確実に越えさせる」ことを意識して接したいものです。

家庭でできることは、「場」を作ることです。家族がそろっている場で、子どもに発表をさせてみる。テレビを消して、1分でいいから報告や説明をする場を作ってみるのです。家族が少人数なら、親戚が集まった場がチャンスです。いきなり人前で話すと失敗するものです。ぜひ挽回可能な場で練習を積ませてあげましょう。 

このとき、注意しておきたいのが、親が能弁なタイプの場合、じつは子どもが話せない子になりやすいということです。

面談で、立て板に水を流すかのごとく話すおかあさんがいらっしゃいました。知的でユーモアもあって、楽しい面談だったのですが、「うちの子は内気なんですよ。緊張もするし。どうしたらいいですか?」と質問されたので困ってしまいました。

先回りして親が話してしまうために、子どもが話す機会を失うことがあるのです。

これが続くと、内気のままでいたり、自分で立ち向かう経験が少なくて緊張しやすくなってしまうのだと思います。もし心当たりがある場合には、ぐっとこらえて子ども自身に説明させる時間を作れるといいですね。

イラスト hashigo(silas consulting)


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