連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

改めて考えたい 中学受験をする意味―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年6月30日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

新型コロナウイルスの影響で、小学校が臨時休校になったり、塾が休講になったりと、受験生たちにとっては予期せぬ出来事が起きました。家庭によっては、コロナ騒ぎで塾選びをストップしてしまったり、中学受験を続けるべきか悩んだりしたかもしれません。

しかし、一度でも中学受験を志した家庭には、「わが子にこんな学校生活を送ってほしい」「こんな将来を送ってほしい」という何かしらのビジョンがあったはずです。コロナの影響もあり、受験の目的を見失ってしまいそうになる状況だからこそ、なぜ中学受験をするのかをいま一度考えてみましょう。

子どもと親、それぞれの中学受験の目的

なぜ中学受験をしようと考えたのか。子ども視点、親視点のそれぞれの立場から実例を交えて紹介します。

部活動に燃えたい

中学受験をしたいと考える子の多くは、「中学・高校でどんな学校生活を送りたいか」というビジョンがある程度はっきりしているものです。そのひとつの要因として、部活動があります。

私の塾(進学個別桜学舎)には、中学に入って思いきり演劇部の活動に取り組みたいという理由で志望校を決めた子がいました。何がなんでも合格したい気持ちで勉強も前向きにこなし、実際の受験では志望校に5回出願。最初の受験で合格をつかみました。今でもイキイキとした表情で学校に通っていて、憧れの演劇部では全国大会に出場しています。

中高6年間で手厚い教育を受けてほしい

進学実績や学校の雰囲気、教育のシステムに憧れて中学受験を考える親御さんもいます。

「うちの子は、将来は獣医になりたいと言っている。獣医学科に進学する生徒が多い中高一貫校に進ませたい」
「のんびりとしている子だから、生徒一人ひとりを丁寧に指導してくれる学校を探したい」
「子どもは英語が好きだから、英語教育に力を入れている学校に進ませたい」

このように、子どものどんな個性を大切にして伸ばしていきたいのか。それを考えたうえで、中学受験を検討し始めた家庭は少なくありません。

ちなみに緊急事態宣言が発令されているなか、私立中学のなかには、教室での授業が困難になったときでもすぐにオンライン授業に切り替えられた学校が多かったようです。ある学校では、入学前にタブレットを生徒全員に配っていたため、新1年生でも1限から6限までしっかりと授業をしていました。このような「私立ならではの手厚いケア」は、親にとって魅力的に映るかもしれませんね。

中学受験の目的を見失ってはいけない

受験をする目的を見失うと、「こんなはずじゃなかった……」という後悔を抱えたまま中学校生活を過ごしてしまうことがあります。避けたい考え方を、ふたつ紹介しましょう。

とにかく私立に入れればいい、という考えは禁物

「上位校でなければ、どの私立に入っても一緒」

このような考えを持つと、たとえ受験に合格しても中学校生活はうまくいきません。特に、学校と子どもの相性を考えずに受験するのは禁物。宿題の管理や、補習といった学習のシステムは、もちろん中堅校だからといって同じということはありません。学校によっては、教育方針が変わったばかりで先生たちがてんやわんやしていたり、難しい内容すぎて生徒たちが授業についていけなかったりする場合もあります。

授業についていけない、授業時間が長すぎて集中力が持たない、宿題に時間がかかりすぎて家でゆっくりする時間がない――。学校の教育システムと子どものペースが合わないと、思うように学校生活を楽しめなくなるのです。

ここで大切になるのが、偏差値だけで学校を決めるのではなく、その学校を深く知り、子どもとの相性を確かめること。場合によっては、塾の先生にも相談してみてください。塾の先生から見てどんな学校に思えるのか、子どもと学校の相性はどのように映るのか、といった客観的な視点からヒントがもらえるはずです。

中学受験は、何かに置き換えられるものではない

「中学受験は諦めて、代わりに高校受験で頑張ってもらえばいいかな」
「中学受験に失敗しても、高校受験があるし、リベンジできる機会はまだある」

このように考える家庭は、毎年存在します。難関大学の合格者を多く輩出している中高一貫校を目指し、その中学校に合格できなければ、子どもには高校受験で進学校を目指してもらう。こうした家庭は少なくないのです。しかし言葉を選ばずにいうと、進学実績目当てで学校を選ぶのならば、それは”予備校”を選んでいるのと変わりません。

私立中学と公立中学では、それぞれの持ち味は大きく違います。どちらが良い悪いということではなく、私立で6年間を過ごすのか、公立中学で3年、新たな高校で3年を過ごすのかで、受けられる教育、そしてそれを受けた子どもの「成長」は大きく異なってくるのです。

学校に通うのは、親ではなく子ども。進学実績も大事かもしれませんが、中高の教育によってわが子にはどう成長してほしいのか、どんな学校生活を送ってほしいのかを、改めて考えてみてください。

受験をする目的、そして志望校を明確にしよう

中学受験の勉強中に思い通りにならない日々が続くと、「もう受験をやめようか」「どの学校に行っても一緒かもしれない」とネガティブな気持ちになったり、投げやりな状態になったりすることもあります。

ここで、改めてポジティブな気持ちで受験勉強に取り組めるようになるためには、子どもが「志望校LOVE」の状態になること、つまり「目指すべき志望校がはっきりとしている状態になること」も大切です。憧れの学校が明確になると、中学校生活のイメージが鮮明になり、受験勉強に対するやる気も自然と出てくるものです。

では子供にぴったりの学校を探し出すには、どのような行動が必要なのでしょうか。次回は、今回のコロナの状況も踏まえ、夏休みのあいだにしておきたい「学校選びの方法」について解説します。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

合わせて読みたい