中学受験ノウハウ 連載 いま気になる『中堅校』と卒業生を訪ねる

躍進著しい男子校・佼成学園中学高等学校|いま気になる『中堅校』と卒業生を訪ねる#1 

専門家・プロ
2024年7月25日 宮本毅

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中学受験専門塾「アテナ進学ゼミ」代表の宮本毅先生が、これからさらに受験生の人気を集めそうという中高一貫校へ突撃取材!

先生方はもちろん、そこで学び、成長して旅立った卒業生が、学校生活を振り返ってどんな風に感じているか、生の声を聞き出してご紹介します。

第一回は、東京都杉並区に位置する男子校・佼成学園中学高等学校を訪問します。

2024年の中学入試では、志願者数が昨年度比で1.4倍に上昇するなど受験生の注目を集めている同校。

グローバル教育に力を入れており、2023年には海外大学への出願資格として世界的に導入されている英語試験「IELTS」の日本初の推進校に認定されたことが話題になりました。

迎えてくれた一学年違いながらそれぞれにユニークな二人の卒業生との出会いは、宮本先生にも新鮮な刺激をもたらしてくれたようです。

気持ちの良い挨拶が飛び交うさわやかな校風

佼成学園中学高等学校正門の様子(写真:宮本毅)

正門を入ってすぐ右にある校庭からは、生徒たちの元気な声が聞こえてくる。梅雨の晴れ間はいつもにも増して清々しい気分になるが、彼らのはつらつとした姿は、乾いたのどを潤す清涼飲料水のようにさわやかだ。

来客用の名札を胸にかけて廊下を歩くと、男子高校生がみな「こんにちは」と挨拶をしてくれる。もうこれだけで私のテンションは爆上がりである。挨拶はコミュニケーションの基本。その姿勢が行き届いているのを確認するだけで、ああこの学校は信頼できる、と感じさせてくれるものだ。

佼成学園中学高等学校。本日の取材先だ。

広報部長の小林計彦先生の案内で会議室に通されると、そこにはすでに二人の卒業生がスタンバってくれていた。法政大学経営学部市場経営学科2年生の橋本龍青さんICU教養学部アーツ・サイエンス学科1年生の矢木野龍之進さんだ。

二人とも私が入室するや否や、サッと起立して挨拶をしてくれた。ここでもしっかりした挨拶。私も自身の運営する塾で生徒たちに挨拶をすることを徹底しているので、強いシンパシーを感じる。それだけで「この学校を訪れてよかった」と満足感でいっぱいとなった。

赤点6つからの大逆転。伴走型指導に奮起し、GMARCHへ合格

橋本龍青さん(写真:宮本毅)

橋本龍青さんは、中学受験では、特待生狙いで2月1日から2月5日まで佼成学園を受け続けた。それほど成績は良かったわけではなく、残念ながら特待生にはなれなかったが、第一志望に合格できたということで中学受験時の満足度は高かったそうだ。

しかし、中学1年生の時にはほとんど勉強せず、定期テストの成績は芳しくなかった。部活に夢中になり、学校生活自体は楽しかったものの、中学2年生の時には赤点を6つ取り、校長先生・担任の先生・学年主任の先生・お母さん・本人の5者面談がおこなわれたそうである。その時の先生方のアドバイスやその後の丁寧な指導の甲斐あって、中3以降、赤点は取らなくなったとのこと。

それでもそこまで勉強に熱を入れていたわけではなかったため、成績的には全体の真ん中くらい。高校3年生の時の最初の河合塾の模試では偏差値40くらいで強い危機感を覚え、ほぼ毎日、学校の自習室に通って勉強したという。

「高校2年生の第3学期を高3ゼロ学期としているんですよ」

校長の青木謙介先生が補足説明してくださる。

「高3ゼロ学期には、生徒たちに受験情報を提供し、大学受験を意識させる期間にしているんです」

とのことだ。夏休みはほぼ毎日自習室に通いつめ、夏の終わりころには結果が出始める。中央大学や学習院大学などの合格を手にするが、都会の学校にあこがれて法政大学に進学を決めたそうだ。

先生方との距離が近く、進路指導部室などで先生と雑談したり、気軽にアドバイスを受けられたりできたことで、リラックスして受験学年を乗り切れたことも大きかった」

と橋本さん。

広報部長の小林先生が、夏の職員室の様子の写真を見せてくれた。夏休みとは思えないほど先生と生徒がたくさんいて、活気に満ちあふれている。これが職員室?と思わず目を見張った。確かに先生と生徒の距離が近い。受験生にとってはきっと心強かったことだろう。

夏休みの職員室の様子(写真提供:佼成学園中学高等学校)

チューターとの距離の近さがモチベーション維持へつながる

矢木野龍之進さん(写真:宮本毅)

矢木野龍之進さんは國學院大學久我山中学が第一志望、成蹊中学を第二志望としていたがいずれも不合格。埼玉県の大宮開成中学から3年間の特待合格をもらったものの、通学のことを考えると現実的ではない。ということで2月4日の夜中に急遽、佼成学園中学を受験することを決めた。入学金が免除となる特待合格となる。これもご縁と思い佼成学園中に進学を決めた。

入学後は中学受験失敗の反省を活かしつつ、すぐに大学受験に向けて気持ちを切り替えた。

「中学受験は親から言われるがままに勉強し、志望校も親の勧めで決めた。しかし佼成学園に入ってからは、自分からつかみ取りに行こうというマインドを身につけられたと思う」

矢木野さんの横で話を聞いていた青木校長は、彼のその言葉を受けてに本当にうれしそうに微笑んだ。「子ども達が自ら望み夢をつかみに行く、それを全力で応援したい」校長先生はそう話す。

矢木野さんが高校に入るタイミングでグローバルコースが設置された。そこで学べるアントレプレナーシップに強い興味を持ち、迷わずそのコースを選んだ。豊富な海外プログラムに積極的に参加しつつ、同級生と知恵を出し合う日々の活動に没頭した。いっぽうで、一般受験と総合型選抜受験の両方を視野に入れながら進学に向けて勉強していき、最終的には、英語をさらに磨きつつ文理にとらわれない専攻を学べると志望したICUへ、総合型選抜で合格をつかんだ。

総合型選抜は成績が数値化されないので、受験生の中での自分の位置がわからず、メンタル的に一人で勉強していくのは辛い。そんな時に心の支えになってくれたのが先生方とチューターの存在だと彼は語る。

「卒業生にチューターとして活躍してもらっているのです」広報部長の小林先生がそう説明する。

「矢木野くんのいたGlobalクラスは35名中18名が総合型選抜入試で合格を勝ち取っていますが、チューター制度や教師との距離感が近いことも大きいのではないかと思います。もちろん橋本くんと矢木野くんにも、現在チューターとして後輩たちのフォローをしてもらってます」

佼成学園の使命は「生徒たちを社会貢献できる人物に育てる」こと

お二人のお話を聞いた後で、私は核心に切り込んだ。「大変不躾な言い方とは存じますが、あえてお聞きしたい。校長先生は『中堅校』と呼ばれることをどのようにお考えですか」と。校長は静かな微笑みを絶やさず、柔和な表情のままこう語ってくださった。

「確かに当校は、中学受験の偏差値的には『中堅校』という位置づけでしょう。しかし中学受験の時点で子ども達の人生が決まるわけでは決してありませんし、人間の成長は学力だけではないとも思います。そこからさらにそれぞれの成長がある。

私たちはお預かりした子ども達に将来社会に貢献できる人材となってもらうために、全力を尽くしてサポートしています。『中堅校』と呼ばれようが何と呼ばれようが入学してくれた子たちがそれぞれ成長し、夢を実現してくれれば私たちの責任は果たせていると思います。子ども達が大きく成長できる、そんな学校でありたいと考えています。」

親しみやすい笑顔の瞳の奥には、確かな情熱と矜持があった。校長先生は続けてこうもおっしゃっていた。

「確かに中学1年生の入学式の時には、こんな筈じゃなかったのにという雰囲気を感じる生徒もいます。でもすぐにみな男子校の楽しさに巻き込まれていきますね。」

それに呼応するように、卒業生の二人も大きく頷いていたのが印象的だった。

取材を終えて

目が合うと元気に挨拶してくれる溌剌とした生徒たち(写真:宮本毅)

取材を終え、広報部長の小林先生に学校内を案内された。行く先々で生徒たちが「こんにちは」と元気よく挨拶してくれる。生き生きとした彼らの爽やかな日常を覗いていると、なんだか自分の青春時代を思い出される。

今回、二人の卒業生とお会いして、成績上位で入ってくる生徒はもちろん、在学中に赤点に苦しむような生徒でも、ここで充実した中高6年間過ごすことで大いに飛躍する可能性があるという実感を得ることができた。佼成学園中学が7中堅校」ではなく「躍進校」と呼ばれる日はそう遠くはないだろう。

取材の中で矢木野さんが最後に語ってくれた言葉で、今回の手記を閉めたいと思う。

「中学受験単体で考えると僕の受験は確かに上手くいかなかった部分はあるかも知れない。でも人生単位で考えると僕の中学受験は大成功でした。」

左から、広報の小林先生、矢木野さん、橋本さん、そして校長の青木先生(写真:宮本毅)

【取材協力】

橋本龍青さん 法政大学経営学部市場経営学科2年

矢木野龍之進さん ICU教養学部アーツ・サイエンス学科1年

佼成学園中学高等学校校長 青木謙介先生

佼成学園中学高等学校広報部部長 小林計彦先生

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※記事の内容は執筆時点のものです

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