学習 理科

【中学受験の理科攻略】消化 ―― デンプン・タンパク質・脂肪

専門家・プロ
2020年8月05日 伊丹龍義

0

「消化」は、覚えることが多い単元といわれます。消化は、自分の身体で起こっていることです。体験と結びつけて考えると、知識を頭に残しやくなります。「三大栄養素」の消化と吸収について、身近な例を挙げつつ見ていきましょう。

三大栄養素とは?

人間が生きていくためは、三大栄養素を多く摂取しなくてはいけません。三大栄養素とは、「デンプン(炭水化物)」「タンパク質」「脂肪」のこと。まずは、これらを多く含む食べ物と、それらの“使い道”について紹介します。

デンプン ―― 分解されて「糖」になる

デンプンは、米やパンといった、いわゆる「主食」に多く含まれています。デンプンは分解(消化)されて、「糖(砂糖など)」になります。人間をはじめとする地球上のほとんどの生き物は、身体のなかで糖を燃やして、生きていくためのエネルギーを生み出しています。

タンパク質 ―― 分解されて「アミノ酸」になる

タンパク質は、肉や大豆などに多く含まれています。タンパク質は分解されて「アミノ酸」になり、身体をつくるために使われます。

私たちの身体の多くは、タンパク質(肉)でできています。そのため、身体を大きくしたり、弱った部分を治したりするためにはタンパク質が必要です。そのタンパク質をつくるために、食べ物に含まれるタンパク質を分解してできるアミノ酸が必要なのです。ちなみに近年、運動後に弱った身体を治すために、スポーツドリンクにアミノ酸を入れることも増えています。

脂肪 ―― 分解されて「脂肪酸」「モノグリセリド」になる

脂肪は「油」の仲間で、揚げ物をつくるときに使う油や、肉の周りについている脂身などに多く含まれています。脂肪は分解されて、「脂肪酸」「モノグリセリド」というふたつの物質になります。そして「保存用燃料」(身体のなかで貯めておく栄養分)や、寒さから身を守る“バリア”として活用されます。

生きていくために、脂肪は欠かせません。しかし摂取しすぎると、身体は寒さに特に弱いお腹に“バリア”をつくろうとします。その結果、お腹が大きくなってしまうのです。食べ過ぎには、くれぐれもご注意を……。

消化はどうやって行われるの?

つぎに、消化(分解)がどのような流れで進められていくのか説明します。

食べ物は、口から体内に入り、口 → 食道 → 胃 →(十二指腸)→ 小腸→ 大腸と通っていき、こう門から体外に出ていきます。この流れのなかで、食べ物に含まれる三大栄養素は、主に「口・胃・小腸」の3か所でひとつずつ分解されていきます。厳密には、もう少し複雑な流れで段階的に消化が行われていきますが、まずは大まかなイメージを理解しておきましょう。

口では、だ液(つば)によりデンプンが「糖」に分解されます。お米を口のなかでしっかり噛んでいると甘くなっていくのは、このためです。

胃では、タンパク質が胃液により分解されます。肉を食べすぎると胃が痛くなることがありますが、その原因のひとつは胃でタンパク質の消化が十分にしきれなくなることです。私たちの身体も「肉」でできていますが、胃の表面はしっかりと膜でおおわれているので、胃が酸で溶かされることはありません。

小腸では、すい臓で作られる「すい液」によって脂肪酸が分解されます。しかし脂肪は油でできていて、そのままでは水を多く含む「すい液」とあまり混ざりません。そのため、“事前の準備”をしています。実は、小腸に到達する前の十二指腸で「たん液」(油と水を混ざりやすくする液体)を混ぜておくことで、小腸でより効率よく消化ができるようにしているのです。

小腸では「栄養分」が、大腸では「水分」が吸収される

分解してできた「糖」「アミノ酸」「脂肪酸とモノグリセリド」は、小腸で吸収され、血管などを通って全身に運ばれていきます。

小腸は栄養分を吸収しやすくするために、長く、複雑なつくりになっています。人間の場合、この小腸の長さは約6~7メートルと身長の数倍もあり、切って広げたときの面積はテニスコート1面分(約200㎡)にもなります。

小腸で栄養分をしっかり吸収し、残ったものは最後の大腸へと送られます。ここでは主に水分の吸収を行い、不要と判断されたものはこう門を通じ、便として体外に捨てられます。

「消化」について丁寧に理解を深めていこう

「消化」は、中学受験ではしっかり押さえておきたい単元のひとつです。改めて、以下の3点を押さえておきましょう。

■デンプン:口で、だ液により「糖」に分解される
■タンパク質:胃で、胃液により「アミノ酸」に分解される
■脂肪:小腸で、すい液により「脂肪酸」と「モノグリセリド」に分解される

三大栄養素が何を指すのか、また消化の流れについては特に混乱してしまいがちですが、お伝えした内容をもとに丁寧に理解を深めていってくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

0