連載 「国語力」が、中学受験を左右する!

中学受験で国語を勉強する意味とは|「国語力」が、中学受験を左右する!

専門家・プロ
2020年10月27日 水溜 兼一(Playce)

本連載では、国語の講師として、中学受験を目指す子どもたちを長年指導している南雲ゆりか先生が、国語力アップにつながるさまざまな方法を紹介します。

「中学受験に向けての国語学習は、入試合格だけでなく、中学以降の学習にも大いに役立つ」という南雲先生。これまで指導された受験生たちのエピソードも交え、国語学習のメリットを伝えていただきます。

読解と記述の基本を学んだ経験は、中学以降の学習に大いに役立つ

「受験勉強って学校に入る以外、何の役に立つの?」

志望校合格を目指す過程で、時には、お子さんからこんな質問をされることがあるかもしれません。じつは、受験に向けた国語学習は、進学後も大きなメリットがあります。

国語は小学校でも学びますが、小学校の授業は、文章を読んで、自分の感想や意見、考えを述べることに重きを置く傾向があります。自分なりの視点を持ち、それを感想文などで表現していく力をつけるという点で、これは価値があります。一方、入試の国語は、主観を排除し、文章の内容を客観的に捉える力が求められます。

内容を客観的に捉えるためには、文章を精読し、語句のつながりなどの構成を理解して、一文ずつ内容を正しく把握する作業が必要です。さらに、説明文や論説文などは、問題を提起している部分、具体例を述べている部分、著者の結論を述べている部分など、各段落の役割を意識して読まなければいけません。

受験勉強で多くの問題に取り組むことで文章を客観的に読む力が磨かれ、早く正確に内容が理解できるようになっていきます。こうして身につけたスキルは、中学の定期テストや高校・大学入試に役立つことはもちろん、他教科・科目のテキストを読むときにも大いに役立ちます。

また、受験勉強を通して多くの説明文や論説文に触れることで論文のフォームがつかめるため、いずれ小論文を書くときに役立ちます。記述問題に取り組むことで、限られた文字数で要点をまとめる力もつきます。小学生時代は、頭が柔らかく物事の吸収力が高い時期です。この時期に文章読解や記述の基本的なことを学ぶ機会を、中学受験が与えてくれていると私は考えています。

進学した生徒たちに話を聞いてみると、「中学受験のときに文章の読み方や問題の解き方のルールがわかったので、中学や高校で国語の成績が安定している」「いろいろな科目のテキストや参考書を難なく読むことができる」と言う生徒や、「過去問演習でいろいろな作品に触れたことで、子どもがいろいろな本を読むようになった」と言う保護者の方もいらっしゃいます。

さらに、国語力を磨くことは、英語学習にも好影響を与えます。英語の4技能のひとつにリーディングがありますが、英語で書かれた長文を理解するためには、単語や文法を覚えるだけでなく、ストーリーや論理を把握する力が必要です。英語塾の講師のなかには、英語力以前に国語力がないから長文が読めないと指摘する方もいます。国語学習で長文を読む訓練は、英語力の向上にもつながるでしょう。

とはいえ、いま中学入試に向けて勉強している受験生のなかには、「国語の成績がなかなか上がらない」と悩んでいる子もいるでしょう。しかし、私は多くの受験生を指導してきて、たとえ小学生時代の成績が振るわなかったとしても、たくさんの良質な文章に触れて、その内容を一生懸命理解しようと励んだ経験は後に生きてくると考えています。

私の教え子のなかにも、小学生時代は偏差値が50ぐらいだったものの、高校入試の国語では9割近く正解できるようになった子がいますし、授業についてくるのがやっとだった子が、大学の推薦入試の小論文で高い評価を受けたケースもあります。ですから、現時点で好成績が出せていなくても、学んだことが実を結ぶ日が来ることを信じていただきたいと思います。

入試は、中学校の1回目の授業

資格試験や検定試験とは違い、中学入試は、入学後に子どもたちを指導する先生方が作っています。以前、「入試は中学校の1回目の授業である」と述べた、大手進学塾の先生がいました。まさにその通りで、入試問題には、これから中学の学びをスタートする子どもたちへの思いがたくさん詰まっています。

先生方は、数ある物語文や説明文・論説文のなかから選び抜いたものを受験生に試験問題として提示し、「この文章の内容や作者が言いたいことを読み取れますか?」と問うています。そこには、「こういう作品を読んで、内容を理解できるようになってほしい」「この文章で述べられているような考え方を身につけてほしい」というメッセージも込められています。

記述問題については、ある中学校の先生が「記述問題は受験生との対話」だと仰っていたことが印象的です。「受験生が本文をどう読み取り、どう考えて表現しているか、そのプロセスを見ています」と。入試で質の高い文章と出合い、それを解釈して解答用紙を通して先生方と“対話”する。それを小学生時代に経験できるのは貴重です。

そう考えると、入試問題は、できる子とできない子を単に振り分けるためだけの無味乾燥なものではないことがご理解いただけるのではないでしょうか。もちろん受験勉強は、志望校合格が一番の目的ではありますが、点数だけでは測れない、のちの学びに役立つ大きなメリットがあることも知っていただければ幸いです。


これまでの記事はこちら『「国語力」が、中学受験を左右する!

※記事の内容は執筆時点のものです

南雲ゆりか
南雲ゆりか 専門家・プロ

南雲国語教室(東京都文京区)主宰。「正確に読む力、伝える表現力」の育成をモットーに小学生の指導にあたっている。東京都生まれ。横浜市の小学校教諭を経て、大手中学受験塾の国語科専任教師に。10年間、最難関コースの指導を担当するとともに、模試や教材の作成にも携わった。主な著書に、『笑って合格する!「中学受験」必勝法』『中学受験の合否を決める! 考える力がつく「国語」勉強法』(いずれもダイヤモンド社)『名探偵コナンの12才までに身につけたい本物の漢字力 1026字』(小学館)がある。現在、朝日小学生新聞で「楽読み楽解き国語の時間」、朝日新聞EduAで「国語のチカラ~読解力アップの教科書~」を連載中。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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