中学受験ノウハウ 転塾

【中学受験】転塾で失敗しないためのポイント

2020年11月12日 室内玲

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転塾を検討している親御さんのなかには、いまの塾に不満があり、転塾することでその不満が解消されると思っている方が少なくありません。しかし、転塾することでその不満が本当に解消されるのか、もう少し突き詰めて考えてみる必要があります。

宿題をやらなくて、個別塾に転塾したけれど……

私は学習アドバイザーのため、保護者の方とお話しする機会が多いのですが、転塾について以下のような相談を受けたことがあります。

その方は、集団塾に数か月ほど通塾するお子さんをお持ちでしたが、子供が宿題をやらず、成績も上がらないので、一人ひとりの生徒をじっくりと見てくれる個別指導塾に通わせることにしたそうです。通塾を始めると子供も「わかりやすい!」とやる気になり、模試の成績も上がったように見えたのですが、受験学年になって過去問を解いてみると点数が取れません。実はその個別指導塾は、志望校よりも易しいレベルの問題集を使い、模試も母集団の学力レベルが高くないもの、つまり偏差値が出やすい模試を受けさせていたのです。

塾側の対応にも問題はありますが、厳しい言い方をすると「個別ならなんとかしてくれるはず」と早計に考えてしまった結果ともいえます。子供が宿題をやらないことに対し、その原因を特に見極めることなく塾任せにしてしまったのですね。

転塾「前」の行動がカギ

転塾後に後悔しないためには、転塾する前の行動が大切です。具体的には、不安や課題に感じている原因を考え、可能であればその解決策を子供と細かく考えてみてください。先ほどの例であれば、そもそも「なぜ宿題をやらないのか」といった原因を考えることが先決だったのです。

一例として、状況別の解決策をお伝えします。親が考えても結論が出ない場合には、塾の先生に相談してみることをおすすめします。

■集団塾の授業内容が子供には難しすぎる(理解が追いつかず、宿題にも取り組めていない)
→わかっていない単元を個別にフォローする

■宿題量の多さに、精神的に圧倒されている
→日によってやるべきことを分けてあげる

■学校で何かトラブルがあって集中できない
→まずは本人の話をじっくり聞く(場合によっては学校に相談する)

塾に相談しても悩みが晴れない場合には、転塾を考えるべきといえます。具体的には、下記のようなケースです。

■塾に相談しても悩みが晴れないケース(→転塾を考える)
・考えられる原因や、解決策を教えてくれない
・親だけではフォローしきれない解決策を提示された(例:専門家でないと教えられないような思考法を、家庭でも子供に教えてほしいといわれた)

転塾を考える具体的なステップ

転塾を考える際は、次に紹介するステップを踏むのがおすすめです。

【ステップ1】塾を複数ピックアップ

まずはインターネットなどを使い、わが子が抱える課題を解決してくれそうな塾をいくつかピックアップしましょう。複数の塾を比較すると、塾の個性や長所、短所が見えてきます。一方で、最初から候補をひとつに絞ってしまうのはあまりおすすめしません。

【ステップ2】それぞれの塾に面談を申し込む

候補先をいくつか探せたら、それぞれの塾に面談を申し込んで悩みを相談しましょう。悩みは思いつく限り挙げ、親なりに原因を考えたうえで塾に伝えるのがポイントです。ちなみに子供の現状を把握してもらうため、模試の成績表や答案用紙を持っていくと、より具体的なアドバイスが期待できます。

さらに、悩みを相談したときの対応で塾の信頼度を図れることがあります。以下の相談例をもとに、それぞれの対応を見てみましょう。

まえの塾では、授業に集中できなかったようです。授業の雰囲気がのんびりしていたみたいで。うちの子は他人に流されるタイプなので、うまくいきませんでした

■信頼が置けない対応
「他人に流される子は、そういう塾ではうまくいきづらいですよね。うちの塾は厳しいですから、必ず集中させますよ。授業中に話を聞いていない生徒がいれば叱りますし、先生も緊張感のある雰囲気をつくっています」

■信頼できる対応
「なるほど。『前の塾はのんびりしていた』とは、どういった点から感じましたか?」
「成績表を見ると、物語文が非常によくできていますね。お母様は『他人に流されるタイプ』とおっしゃいましたが、お子さんはむしろ人の気持ちを汲むことに長けているのではないですか?」

信頼が置けない対応では、親の言うことを額面通りに受け取り、どういう子供かも把握せず「集中させます」と断言してしまっています。一方で信頼できる対応のほうは、子供がどういう状況に置かれていたのか、どういう個性を持っているのか、といった状況を探ることから始めています。

そもそも、「授業に集中できない」という悩みはたくさんの家庭が抱えています。一般的な悩みともいえますが、一方で「なぜ集中できないか」という原因と、「集中させるにはどうすれば良いのか」という解決策は、子供によって千差万別。前述の例のように、信頼の置ける塾であれば、まずは子供の状況や個性を把握することに尽力してくれます。さまざまな質問を投げかけ、その原因にふさわしい解決策を考えてくれるのです。こうした塾は信頼できる塾、つまり通塾後も安心できる塾といえるでしょう。

【ステップ3】体験授業を見学し、塾を絞り込む

面談時の塾側の対応を見ることで、新しく通う塾の候補はだいぶ絞り込まれるはずです。この段階になれば、「体験授業」を受けてみてください。「塾の体験授業はどこに注目すればいい? ふたつのチェックポイントを解説」でも詳しく解説していますが、体験授業は保護者も見学するようにしましょう。特に「子供と講師の相性」「塾の指導方針が納得できるか」の2点は、通塾を続けるうえで大切なポイントとなります。

ここまでお伝えしたステップを着実に踏むことで、転塾後の後悔を減らすことができます。親子ともに納得のいく塾に通えるように、転塾先の塾をしっかりと選び取っていきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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