連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校志望の悩み[1]大手塾からでも、中堅校を目指せるか心配で…… ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年2月16日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中堅校受験で抱えがちな悩みを取り上げ、解決策を紹介していきます。今回は「大手塾に通う子が中堅校を目指すケース」について見ていきましょう。

【ケース1】大手塾に通う子(新小5)をもつお母さん
「中堅校を目指していますが、子どもの偏差値が伸び悩んでいます。親としては大手塾からの転塾を考えていますが、子どもは『塾が楽しい!』と言っていて……。それでもやっぱり、転塾させたほうが良いのでしょうか?」

子どもの気持ちが最優先

結論からお伝えすると、子どもが塾に楽しんで通っているのであれば転塾させる必要はありません。転塾した子というのは、どうしても「都落ち」のような気分になりがちです。転塾先の塾でまわりの子の目を気にしてしまい、気持ちがどんどん落ち込んでしまう子もいるものです。

大手塾といえども、中堅校を受験する子はもちろんいます。このケースの場合、お子さんが大手塾の授業について行けないのは事実であるとしても、転塾するリスク、そして「いまの塾が楽しい!」と話し、モチベーション高く勉強に臨める状態にあるお子さんの気持ちを無視するのは、少し尚早な気もしてしまいます。

ここで大切なのは、親御さんの「覚悟」です。まずは偏差値が伸び悩む状態を受け入れること。そして大手塾の受験指導で学力アップを目指しつつ、中堅校に向けてうまくハンドリングできるか。これに掛かっています。特に次の3つを親御さんが意識することで、大手塾に通いつつも中堅校を目指していけるはずです。

● 基礎学力の定着を徹底する
● 首都圏模試を受験する
● 気分転換の時間を確保する

基礎学力の定着を徹底する

大手塾の場合、基本的には難関校合格を目的とした授業が展開されます。そのため、応用問題を解く機会も多いでしょう。宿題もハイレベルで、「こんな問題もわからないの?」と講師から発破をかけられることもあるかもしれません。しかし、中堅校の入試問題は基礎的な内容がほとんどです。学校ごとに対策を立てたり、難しい問題をたくさん解くような勉強はあまり必要ありません。むしろ基礎学力を固めるほうが先決です。親御さんとしては、「解かなくてはいけない問題」と「解けなくてもいい問題」を可能な限り選別してあげてください。塾で出された応用問題が解けなくて悩んでいる子どもの姿を見たときは、「ここの基本問題をちゃんと理解していれば大丈夫だよ」と声を掛けてあげられると良いですね。

首都圏模試を受験する

大手塾に通いつつ中堅校受験を目指す場合には、塾で実施している模試のほかに、「首都圏模試」の受験も検討してみてください。大手塾の模試は、難関中学を志望する子が主な受験者層です。そのため問題が難しいにもかかわらず、平均点は高め。中堅校を目指す子がこの模試を受けると、本来の実力よりも偏差値が低く出てしまう傾向があります。

その点、首都圏模試は、最後のほうに正答率が低い問題が1~2問出てくる程度。おおよその問題は、各科目の基礎を押さえていれば得点が望めます。ちなみに、首都圏模試の結果が返ってきたあと、計算ミスで失点した問題、見直しをすれば解けた問題を本番で解けていたら……と皮算用してみると、偏差値が10以上アップしたというケースも珍しくありません。

そして中学受験を志して間もない子を含め、受験者層はかなり広く、点数に大きくばらつきがあるのも首都圏模試の特徴のひとつです。受験生のなかで、自分がどれくらいの位置にいるのか正確にわかりやすい模試ともいえるでしょう。点数が少し上がるだけで偏差値が上がりやすく、勉強をがんばったぶんだけ偏差値が上がる手ごたえも感じられるため、中堅校志望の子はぜひ受けてみてほしいと思います。

気分転換の時間を確保

勉強面以外では、気分転換の時間を意識的にとってあげることが大切です。大手塾は、難関中学を志望する子が多く集まる場所。親御さんのなかには、中堅校志望といっても、「ひょっとしたら、うちの子にも難関校に合格できるチャンスがまだあるかも……」と心のどこかで思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、こうした淡い期待を子どもに向け、「もっと勉強しなさい!」とプレッシャーをかけるのは禁物。大手塾のクラスを少しでも上げようと、個別指導塾や家庭教師を掛け持ちするのもおすすめできません。授業の時間を増やせば、子どもがひとりで勉強する時間や、気分転換の時間がなくなります。これでは受験を続けるモチベーションも減っていく一方で、成績は上がっていきません。

目標を中堅校に据えたのであれば、まずは勉強時間と同じくらい、子どもが気分転換できる時間を確保してあげてください。宿題にしっかり取り組み、授業やテストの復習ができていれば、残りの時間は何をしてもOKと決めるのもひとつの手です。勉強をしていれば、習い事に熱中しても、YouTubeを見ても、ゲームに夢中になってもOK。中堅校志望の子に関しては、本格的な受験シーズンに入る小6の夏前までであれば、遊ぶ時間をたっぷり確保しても大きな問題はありません。

もちろん、勉強するときはしっかり勉強する、遊ぶときは思いきり遊ぶ、というメリハリは大切です。勉強、遊びのバランスを考えていけば、適度にストレスを発散できるだけでなく、勉強に集中できるようにもなります。大手塾なら勉強のプレッシャーもあるかもしれませんが、そこは親御さんが手綱を引き、子どもの気持ちが勉強漬けでパンクすることがないようにモチベーションの管理をしてあげましょう。

子どもに、いかに目を配れるか

転塾を考えた場合には、通っている塾に対し、子どもがどう感じているかをまずは聞いてあげてください。そのうえで子どもが塾を「好き」なのであれば、その気持ちを尊重してあげることです。そして、子どもの勉強のモチベーションを損なわないこと、大手塾のカリキュラムに子どもが溺れていないか確認すること、これらを強く意識してください。親御さんがしっかりと目を配っていれば、たとえ大手塾に通っていたとしても、中堅校の合格を目指すことは十分に可能だと思います。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。