連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中堅校志望の悩み[2]塾に通わないで合格できる? ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年3月08日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

中堅校受験で抱えがちな悩みを取り上げ、解決策を紹介していきます。今回は次のふたつのケースについて見ていきましょう。

  • 塾に通わないで中堅校に合格できる?
  • 読書で国語の成績は上がる?

塾に通わないで中堅校に合格できる?

【ケース1】大手塾に通う新小5の子をもつお母さん
子どもは塾の授業についていけず、家を出るときに「塾に行きたくない」と言います。親としては、そんなに辛いならもう塾には行かなくてもいいんじゃないか……とも思い始めてきました。転塾をさせようにもどんな塾に行かせたらいいか悩みます。中堅校を受験するのであれば「塾に行かずに受験させる」という選択肢もアリなのでしょうか?

学習サイクルの定着が難しい

塾に行かず、自宅学習のみで中堅校合格を目指す。ありうる話だと思いますが、ハードルはかなり高いでしょう。障壁となるのは、学習サイクルの定着、そしてモチベーションの維持です。

中学受験を目指す小5の多くは、週2~3回ほど塾に通っています。新しいことを授業で学び、宿題と復習をこなして、テストや模試を目指して勉強する ―― という学習サイクルをおこなっているんですね。塾のカリキュラムにお尻を叩かれるかたちで勉強する子がほとんどですが、筋トレと同じで、多少の負荷がかかると勉強の成果は日を重ねるにつれて出てきます。

一方で塾に通わない場合には、この学習カリキュラムを家庭でつくり上げないといけません。そもそも塾の先生は、勉強を教えるだけでなく、受験のアドバイザー、そして受験勉強の“ペースメーカー”としての役割も担っています。その点、親御さんが普段の家事や仕事に加え、塾に頼らず、自分で受験情報を集めて勉強の“ペースメーカー”の役割も果たす、というのはかなりの負担です。受験カリキュラムがしっかり組まれた通信教育もありますが、それをきっちり守りながら勉強するのも並大抵のことではありません。子どもが反抗期を迎えてしまうと、親の力による学習管理はますます難しくなります。

モチベーションの維持も困難

塾に通わずに受験勉強に取り組む場合、基本的には自宅しか勉強場所がありません。難関校志望で、根っからの勉強好きの子なら集中して勉強に打ち込める環境は嬉しいかもしれませんが、多くの中堅校志望の子はその状態だと息が詰まってしまいます。

自宅学習は家でひとりで勉強する時間がメインですから、誰かに弱音を吐きたいとき、やる気が出ないとき、すぐに相談できるのは親です。しかし、親子で気持ちのすれ違いがあったり、親に自分の気持ちを素直に表現しにくかったりする子の場合には、気持ちを吐き出す場所が見つかりません。一方で塾に通っている子は、くじけそうになったときでも「友達が勉強しているから」と塾に顔を出し、その場で気分転換をしていることも多いのです。

もちろん、まだまだ子ども。完全に気持ちを切り替えられず、授業に集中できないかもしれません。友達とおしゃべりしてばかりの子もいるでしょう。しかし塾がその子の“息抜きの場”になったり、先生や友達に励まされたりすることで「明日からまた頑張ろう!」と思う子は少なくないのです。子どもにとって「塾」という存在は、勉強を教えてもらう場としてだけでなく、モチベーションを上げてくれる空間でもあるのですね。

方針が大きく異なる塾を探してみる

ここまで挙げた2点の理由から、中堅校志望の子が今の塾に合わない場合には、まずは「転塾」を視野に入れてほしいと思います。転塾では、これまで通っていた塾と大きく方針が異なる塾を選ぶのがおすすめです。たとえば大手塾の場合、基本的にはそれぞれの塾の方針はあまり変わらない印象です。そうであるならば、思い切って個人経営の塾を視野に入れてみるのもひとつの手といえるでしょう。

私の塾(進学個別桜学舎)にも、大手塾から転塾してきた子が数多くいます。今では授業がない時間でも塾長室に来たりして、一生懸命勉強していますね。その子たちにとっては、大手塾の大勢の生徒のなかで勉強するよりも、先生のそばで勉強することが合っていたのでしょう。

「環境を大きく変える」という意味での転塾は、かなり効果があります。ただし、塾選びは慎重におこなってください。その塾の塾長と話をする、塾の方針をホームページで確認するといったことをおこない、「この塾、先生なら信用ができる!」という気持ちを持てるまで塾選びを続けましょう。志望校選びと同じくらい、塾選びは大切です。そして子どもによって、塾の相性はさまざまです。その子の個性に合った塾を見つけるため、塾選びにもしっかり取り組んでみてください。

読書で国語の成績は上がる?

【ケース2】国語が苦手な小3の子をもつお母さん
家族全員、自宅で読書をする習慣がありません。子どもに読書をさせると国語の成績が伸びると聞きますが、読書の習慣を身につけさせるために、親としてできることはありますか?

読書と国語の成績はそこまで結びつかない

結論からお伝えすると、たくさん読書をしているからといってその子の国語の成績が良いとは限りません。読書をしなくても、国語が得意な子はたくさんいます。そもそも「国語の問題を解く」というのは、文中の根拠を設問ごとに探しつつ、誰もがわかるような解答を導く作業のことです。一方、読書で身につくのは文章を読む体力、そして知らない世界と出会うことで身につく知識。読書の効果として「論理的に物事を考える力が身につく」といった話もありますが、塾講師としての経験上、本を読んだからといってその子の論理力が大きくアップすることはないかな、と思います。

「文法の基礎」が優先

国語の点数を上げるためには、まずは文法の基礎を学ぶことが大切です。主語や述語、修飾語や「てにをは」の知識、そして接続語や指示語について学び、読解問題できっちり点数が取れるように勉強するのです。文法の基礎が身につくと、誤読もかなり減ります。

親としては、普段の生活のなかで子どもが間違った言葉遣いをしたときに、すぐに正してあげられると良いですね。たとえば「今日学校がね、先生がね~~」と子どもが言い出したら、「『学校でね』だよね」と向き合ってあげます。ちなみに、私も子どものころ「車窓」を「しゃまど」と読んで、母から「それは“しゃそう”って読むんだよ」と言われた記憶があります。私自身、言葉遣いについては口酸っぱく注意されて育ちましたが、振り返ると、国語力を鍛える良い訓練になっていたと思いますね。

「読書をすれば国語力が上がる」というのは一理ありますが、中学受験においては、まずは文法の知識を正確に身につけるほうが優先です。もちろん本を読むことで知識が増え、豊かな情緒が身につくのはメリットです。受験合格という目標だけでなく、「この先の人生を豊かにする」という目標を据えるのであれば、子どもにできるだけ多くの本を読ませるのは大切なポイントになるでしょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。