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2021年入試を振り返る【第3回】変化する理科入試の背景と対策|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2021年3月30日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

2021年理科の入試問題の特徴を3回にわたって小川先生が解説する最終回。中学校が入試問題を作成するにあたってどのように考え、受験生に向けてどのようなメッセージを込めているのかをお話いただき、変化する入試問題へ対応するためのアドバイスもお伝えします。

入試問題は、「中学校から受験生へのラブレター」

今年の理科の入試問題には、二つの大きな特徴がありました。一つは、グラフの読み取りや作成の問題が増えたこと。もう一つは、身近な題材を扱った問題が多かったことです。これらは大学入試の影響も考えられます。近年、大学入試の理科は思考力を測る問題やグラフを扱う問題が増加しています。この傾向は今後も続くとみられ、中学入試の理科の問題も同じように変化していくと予想されます。

さらに、よく練られた良問が多かったこともポイントです。基礎的な知識を確かめる問題や計算問題、グラフや図表の読み解きと作成、難度の高い思考問題などをバランスよく盛り込みながら、さまざまな単元を統合した問題を解かせる学校が多数ありました。また、大問ごとにストーリー性があり、問題を解いていく過程で一つのテーマを掘り下げて考えられる構成になっているものもありました。

このような傾向は、難関校だけでなく、理科の入試問題全般に見られます。これは中学校が入試問題を、受験生の理科の力を見極めるためだけではなく、中学校の理科学習への姿勢を伝えるものとして重視していることの表れでもあります。

受験生にとって過去問は、中学校との貴重な出合いの場です。もしも理科の入試が知識事項を問う問題ばかりだとしたら、受験生や保護者は、「この学校はひたすら知識を詰め込む授業をするのではないか?」という印象を持つかもしれません。単純な知識問題の難度を上げたり量を増やしたりしても学校の特徴は伝わりません。そのため、データ処理能力を要する問題を中心に据えるなど、各校とも内容や構成に独自性を持たせるようになりつつあります。理科の過去問を解くことによって、その中学校の理科学習の雰囲気が感じられる。つまり入試問題のクオリティーが問われる時代になっているのです。

中学校の先生方は1年間かけて入試問題を考えます。街を歩きながら食事をしながら、どんな題材が問題に使えそうか日頃から気にかけています。先生のなかには、「入試問題は受験生に贈るラブレターだ」とおっしゃる方もいました。「受験生が入試問題を見て、『こういう問題を出す学校に行きたい』と思うような問題を作りたい」と。また、多くの先生方は、「私たちは受験生の記憶量を中心に調べるのではなく、理科的な発想力や、身近なものを理科的に考えられる力を問うような問題を作りたい」と言います。日常を理科的視点から捉えようとする入試問題はこれからも進化していくでしょう。

6~7割程度得点できれば合格ライン。まずは各単元の理解を深めることに注力する

ここまで今年の入試問題を振り返ってきました。理科の入試問題では、塾のテキストや模擬試験で扱われなかった新しいテーマや問題構成が次々登場しています。しかし、そのことばかりに囚われ、「このテーマのことも覚えなければいけない」「この問題パターンもやっておかないと」と、なにもかもを詰め込もうとするのはよくありません。

なによりも大切なのは各単元の基礎固めで、その第一歩となるのが小学校の教科書の内容理解です。特に小学校での観察・実験は、理科的な思考力を高める貴重な機会ですから、おろそかにせず取り組んでいただきたいと思います。たとえば、入試の生物の問題で取り上げられる題材としては、アサガオ・ヒマワリ・インゲンマメなど小学校のどの教科書にも載っているものが中心となります。これらの植物のなかには、学校で実際に栽培するものもあるので、しっかり観察することが入試問題を解く上でも大いに役立ちます。

一般的に理科の入試問題は、6~7割程度得点できれば合格ラインに届きます。問題を作成する先生方は、100点満点の試験なら受験者の平均点が55点ぐらいになるように問題構成を考えることが多いようです。まずは、受験生の半数以上が解ける問題を取りこぼさないことが大事です。そのためには各単元の理解をしっかり深めること。その上で、数をこなす過去問演習を行うのではなく、問題の内容を十分理解することを念頭に演習することが大事です。仮説→実験・観察→結果考察で構成される問題を意識的に解いたり、図表やグラフ作成に関して学習したり、計算問題に関しては丁寧に確実に解く演習に取り組みましょう。

さらに、理科的思考力を高めるためには、普段から身の回りの事象や、見聞きするニュースに興味を持ち、「なぜだろう?」と考える習慣をつけることが大事です。中学校が入試問題で身近な題材を取り上げる背景には、授業で学んだことをベースに身の回りの事象を理科的視点で考えてほしいという願いがあります。そのためにも、ご家庭では親子の会話の時間をぜひ増やしてください。子どもが興味を抱いたことについて、親が一緒になって考えたり調べたりしながら意見を交わすことは、子どもの理科力を伸ばす貴重な経験になるはずです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。