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レタスを水にさらすとシャキッとするのはなぜ?「浸透圧現象」を考えてみよう|なるほどなっとく 中学受験理科

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2021年4月21日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が求められます。子どもの理科的思考力を養うためには、普段から身の回りのいろいろな事象に興味を持ち、その原因を理科的視点で捉える姿勢が大切です。今回は、さまざまな事象のなかから「浸透圧」にフォーカスして、小川先生にお話いただきます。

料理と深い関わりがある「浸透圧現象」とは

2021年の理科の入試問題では、「浸透圧」を取り上げた学校が例年より多く見られました。実は、浸透圧現象は私たちにとって身近なものです。まずは、料理における浸透圧現象を考えてみます。

サラダを作るとき、レタスを水にさらしてパリッとさせる。とんかつに添えるせん切りキャベツを水にさらしてシャキッとさせる。ポテトサラダを作るときにきゅうりを塩もみする。料理で行うこれらの作業は、いずれも浸透圧を利用したものです。

野菜をはじめ生物はたくさんの細胞でできていますが、濃度の異なる2つの液体が細胞膜を介して接したときに、水が濃度の高い方に移動する現象が起こります。なお、水の分子は小さいので細胞膜にある小さな穴を通り抜けられますが、水にとけているブドウ糖などの分子は大きいので通り抜けられません。この働きを調べた実験が下図です。

“ろうと管”のなかにブドウ糖水溶液を入れ、細胞膜と同じ働きをする膜でふたをして、水に入れます。すると、“ろうと管”のなかのブドウ糖水溶液は、外の水より濃いので膜を通して“ろうと管”のなかに水が入ってきます。すると入ってきた水の量だけ、“ろうと管”のなかの水面が上がります。このように濃度の低い液体から、濃度の高い液体へ水が移動することを「浸透」と言い、移動する力を「浸透圧」と言います。

レタスやキャベツを水にさらすとパリッとするのは、水よりもレタスの細胞内液の濃度が高いため、水がレタスの細胞に入り、細胞がピンと張るからです。逆に、きゅうりを塩もみすると、きゅうりの外側についた塩の方が細胞内液より濃度が高いので、水分が抜けてしんなりします。

「浸透圧現象」は、ほかにもさまざまなところで見られます。たとえば植物が根毛から水を取り入れるのは、まわりの土よりも植物の細胞内液の方が濃度が高いからです。しかし、植物の根に直接肥料をかけると、肥料の方が濃度が高いため、根から水が出て根腐れを起こしてしまいます。肥料を根に直接当てないようにした方がいいと言われるのは、そのためです。

海水魚と淡水魚にも「浸透圧」が関係している

もうひとつ自然界における浸透圧現象を紹介します。みなさんは夏になると海や川へレジャーに出かけることもあるでしょう。海で泳いでいて誤って海水を飲んでしまうとしょっぱいですよね。それに対し、川の水はしょっぱくありません。海にも川にも魚がいますが、塩分濃度が大きく違う環境で、どうやって生息しているのか考えたことはありますか?

海水魚も淡水魚も体液の塩分コントロールが重要です。海水魚の場合は、海水の方が体液よりも濃いため、体内から水分がどんどん奪われていきます。海水魚は大量の海水を飲みますが、このとき水と同時に塩分も取ることになります。ここで体液の濃度を一定に保つために水分は吸収し、塩分は排出する必要があるため、海水魚は、塩分が多い尿を少量だけします。また、エラも使って塩分を体外に排出し、体液の塩分濃度を調節しています。

一方、淡水魚にとって川の水は体液よりも濃度が低い液体です。浸透圧によって体の外から水がどんどん入ってくるため、淡水魚は水をほとんど飲まず、塩分が少ない尿を大量にすることで水分を排出します。また、エラから水中のわずかな塩分を取り込み、体液の塩分濃度を調節しています。

このように海と川にすむ魚では体内の塩分濃度の調節の仕方は逆になります。ちなみに魚のなかには、アユやサケのように、川と海を行き来するものもいます。このような魚はどうしているのでしょう。川の水が海に流れ込む場所(河口)には、汽水域と言って、淡水と海水が混じっているところがあります。アユやサケは、この汽水域で体内の浸透圧の調節機能を切り替えていると考えられています。

身の回りの浸透圧現象を探してみよう

このように「浸透圧」は私たちの日常生活や自然界でよくみられる現象です。野菜の塩もみ、海水魚と淡水魚の塩分濃度調節は今年の入試で取り上げた学校がありました。身近な現象を理科的視点で考える問題が増えている入試では、今後も取り上げられる可能性があるテーマといえます。

今回紹介した事例のほかにも、たとえば、スポーツドリンクも浸透圧を踏まえて作られています。部活で汗をかいたときにスポーツドリンクを飲む人もいると思いますが、スポーツドリンクは人間の体液に近い成分なので、効率よく水分を体内に取り込むことができます。ほかにも、いろいろなものに目を向けてみると、さまざまな浸透圧現象を見つけられるはずです。ぜひ親子で考えてみてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。