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植物の花が咲くのはなぜ? 開花から植物のしくみを考えてみよう|なるほどなっとく 中学受験理科

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2021年4月28日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が求められます。子どもの理科的思考力を養うためには、普段から身の回りのいろいろな事象に興味を持ち、その原因を理科的視点で捉える姿勢が大切です。今回は、さまざまな事象のなかから「植物の開花」にフォーカスして、小川先生にお話いただきます。

なぜ植物は毎年同じ季節に花を咲かせるのか

春の桜やアブラナ、夏のヒマワリやアサガオ、秋の菊やコスモス、冬のツバキやスイセン……。日本では季節ごとにいろいろな花が私たちの目を楽しませてくれます。でも、植物はなぜ、毎年同じ時期に花を咲かせるのでしょう? 人間のように五感で「春が来た」「夏になった」と感じることができないのに、どうして咲く時期がわかるのでしょうか? 実は、植物の開花には、昼夜の長さと気温の変化が大きく関係しています。

日照時間と花芽形成

植物が花を咲かせるためには、まず花になる芽(花芽)をつくる必要があります。花芽の形成には、昼夜の長さが関係しているといわれ、葉でその長さの変化を感じ取っています。

昼夜の長さといっても、植物にとって重要なのは、日照時間の長さではありません。植物は、夜の時間、つまり光が当たらない時間(暗期)の長さの変化を葉で感じ取り、花芽をつくるかどうかを判断しています。この花芽形成に影響を及ぼす連続した暗期を「限界暗期」といいます。

限界暗期よりも光が当たらない時間が長くなると花芽をつくる植物を「短日植物」、暗い時間が短くなると花芽をつくる植物を「長日植物」といいます。

一年で一番昼の時間が長いのは「夏至」で、短いのは「冬至」ですね。ですから、昼の時間(日照時間)が短くなっていく夏や秋に咲くのは「短日植物」が多く、アサガオ、菊、コスモスなどがこれにあたります。一方、昼の時間が長くなっていく冬から春に咲くのは「長日植物」が多く、アブラナなどです。しかし、なかにはこのどちらかに分類されず、暗期の長さに関係なく花芽をつくるヒマワリなどの「中性植物」もあります。

菊の限界暗期は種類によって異なります。上図は、限界暗期が10時間の例です

気温と開花

植物の開花には前述した光のほかに、気温も関係していると考えられています。桜(ソメイヨシノ)は夏に花芽をつくり、秋から初冬の間は休眠します。そして一定期間、低温にさらされると目覚め、暖かくなるにつれて花芽がふくらんでいきます。さらに、場所ごとに毎年定められる気温よりも高い気温を示した時間の積算値が一定を超えると開花します。つまり桜の開花には、秋から冬のある長さの低温期と春に向かっての温度上昇期が必要で、毎年発表される桜の開花予想は、この気温データに基づいて行われているのです。気温と開花が関係する植物としてはスイセンも代表的で、スイセンの球根は一定の低温期を経ることで開花が促進されます。

植物が花を咲かせるのは子孫を残すため

さて、植物は何のために花を咲かせるのでしょうか? 答えは、「種子をつくるため」です。動物と同じく、植物も子孫を残すことが重要です。植物が子孫を残すには種子が必要で、その種子をつくるには「受粉」をする必要があります。

受粉とは、「めしべの先端の柱頭におしべの花粉がつくこと」です。実は植物にも、動物のようにオス(おしべ)とメス(めしべ)があり、両者が出会い、受粉し、受精してはじめて子孫を残すことができます。しかし、植物は動物と違って自分で移動できません。そこで蜜を吸いに花にやってくる虫などに花粉を運んでもらいます。

ところが、野山にはさまざまな花が咲くし、いろいろな虫がいます。たとえばミツバチがレンゲの花の蜜を吸いにきて、その次もレンゲの花に行けば受粉できますが、もしアブラナの蜜を吸いに行ってしまったら、レンゲ同士で受粉せず子孫を残せなくなってしまいます。植物からすると効率が悪いですよね。

[参考]花筒が長い花の蜜を吸う蝶の写真

そこで植物は訪れた虫の中でも花の形にあった虫が花粉を運べるように、花の形や色、においに特徴をつけます。たとえば、カラスウリの花は、花の筒がとても長く、花の筒の奥にある蜜にたどり着けるのは、スズメガのようにストロー状の口を持った虫だけです。

カラスウリの花の奥にある蜜にたどり着ける虫は少ないため、スズメガは、ほかの虫に邪魔されず蜜が吸えます。ですから、スズメガがカラスウリの花の間を飛び回るようになり、効率よく受粉もできるようになります。虫媒花と言われる花の受粉は虫以外にも、鳥などの他の生き物を介して行われることもあります。植物と他の生物との関係性を知っていくと、わかることが増え、興味も広がっていくでしょう。

「発芽の3条件」を満たしても発芽しないケースもある

植物は種子ができたら、また次の子孫を残すために発芽しなければなりません。小学校の理科の学習では、「発芽の3条件」として、種子の発芽に、水、空気、適した温度の3つの条件が必要なことを学びます。しかし、3つの条件さえ揃っていれば、すべての種子が発芽するかというと、実はそうではありません。

たとえば、スイカの中にはたくさんの種が入っています。スイカを買ってきて食べずに置いておいても勝手に発芽はしませんよね。その理由は、スイカの果汁の中に発芽を抑制する物質が含まれているからです。

スイカにとっては、もしすべての種が同じ場所で発芽してしまうと、急激な環境変化が起こった場合、全滅する危険があります。ですから種を拡散させ、仲間を広範囲に増やそうとするわけです。その結果、長い長い年月を経て、果汁の元では発芽しない種子をつくるスイカが現在に残りました。動物に実が食べられ、フンなどで排出された後に発芽する種子が現状では都合の良いものだったのです。

今回お話したように植物について「なぜ?」という視点を持って考えていくと、植物が自然の中でたくましく生きていくためにさまざまな工夫をして、環境に適応してきたことが理解できると思います。植物のように毎日目にする身近な存在からも理科的視点は大いに養うことができます。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。