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ものが熱くなるのはどうして? 伝導・対流・放射 3つの「熱の伝わり方」を知ろう|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2021年4月26日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が求められます。子どもの理科的思考力を養うためには、普段から身の回りのいろいろな事象に興味を持ち、その原因を理科的視点で捉える姿勢が大切です。今回は、さまざまな事象のなかから「熱の伝わり方」にフォーカスして、小川先生にお話いただきます。

「熱」と「温度」の違いとは?

お子さんが風邪をひいたとき、体温計の表示を見て「あら、38℃も熱があるわ!」と言うことがあると思います。しかし厳密には体温計で調べたのはお子さんの体の温度であって、熱ではありません。よって「熱がある」ではなく、「体温が高い」と言うのが正しいのです。

では、熱と温度は何が違うのでしょう。肉眼ではわかりませんが、あらゆる物質は分子という非常に小さな粒子が集まってできています。そして、それぞれの分子は常にランダムに運動(振動)しています。

この分子の運動を「熱運動」と呼び、「運動するためのエネルギー」が熱の正体です。つまり、分子が激しく運動すればするほど、その物体は熱を持っているといえます。そして、温度は「分子が運動するためのエネルギーを定量的に示した数値」です。

ですから、熱運動エネルギーが大きい状態では温度も高くなります。例えば、100℃の熱湯と5℃の冷水では、熱湯のほうが水の分子が激しく動いているということです。

ちなみに、温度の単位は℃(摂氏温度)やK(ケルビン/絶対温度)で、熱の単位はcal(カロリー)やJ(ジュール)です。

熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射」がある

さて、私たちの身の回りには、熱いものや冷たいもの、さまざまな温度のものがあります。熱いものと冷たいものが接触すると、熱いものの温度が下がり、冷たいものの温度が上がります。これは熱が物体の間を移動しているから起こる現象です。

通常、熱は温度の高い方から低い方へと移動しますが、熱の伝わり方には、「伝導」「対流」「放射」の3種類があります。それぞれ身近な例を挙げながら説明しましょう。

伝導 ―― 熱エネルギーが分子の振動で伝わる

鉄のフライパンを火にかけると、火に当たっている部分から熱くなり、次第に全体が熱くなっていきます。その理由は、まず火によってフライパンの底の部分の分子の運動が激しくなり、それが徐々にフライパンの他の部分の分子にぶつかることで、フライパン全体の分子の運動が激しくなるからです。このように、物質を構成する分子同士がぶつかることによって熱が伝わるのが「伝導」です。分子の運動が激しくなると温度も上がります。

実は、熱の伝わりやすさは物質によって大きく異なり、「熱伝導率」という数値で表されます。熱伝導率が大きいほど、熱は伝わりやすくなります。フライパンの素材である銅や鉄、アルミニウムなどの金属は熱伝導率が大きく、熱が伝わりやすいです。一方、フライパンの取っ手の部分は、時間が経っても、触れないほど熱くはなりませんよね。それは、取っ手の素材であるフェノール樹脂などの熱伝導率が小さくて、熱を伝えにくいからです。

なお、熱伝導率は物質の状態によっても異なり、気体<液体<固体の順に大きくなります。ちなみに空気の熱伝導率は、液体や固体と比べて圧倒的に低くなっています。それを利用した身近にあるものが、ダウンジャケットです。ダウンジャケットを着るとなぜ暖かいかというと、ダウン自体が温まっているからではなく、ダウンジャケットの中の空気が、外からの冷気を体に伝えにくくし、また体の熱が外へ逃げるのを防ぐ役割を果たしているからです。

対流 ―― 物質が動くことで熱が伝わる

お風呂の水を温めると、初めは湯船の上のほうの水が温かくなり、下のほうの水は冷たいままです。これは「対流」という、熱の伝わり方による現象です。温められた水の体積が膨張した結果、まわりの水よりも軽くなって上昇し、その部分にまわりの水が流れ込むことによって循環が生じます。

「伝導」との違いは、熱を持った物質自体が動く点です。つまり浴槽の水は温めることで循環し、次第に全体的に温まっていくのです。また、「対流」は空気でも発生します。クーラーから出る空気は、冷やされて重くなっています。重い空気は下に行くので、床から冷えた空気がたまることになり、速く人を冷やしてくれます。そして温かくて軽い空気は上のほうに行き、クーラーに取り入れられて冷やされることになります。このように部屋の空気が対流しながら、徐々に部屋全体の温度が下がるのです。

放射 ―― エネルギーが直接物質に届く

日光浴で、太陽の光を浴びると体が温まりますよね。私たちは太陽に直接触れているわけではないのに、なぜ温かくなるのでしょうか? じつは、熱の伝わり方には、「放射」というものもあります。これは、離れたものに熱エネルギーが直接届くことです。太陽だけでなく、冬にストーブや焚火に当たるだけで暖かく感じるのも放射によるものです。放射の場合、伝導や対流とは違い、熱を伝えるための物質は必要ありません。よって、物質の存在しない真空中でも熱は伝わります。

なお、放射による熱エネルギーは白より黒いものが吸収しやすいのです。夏に頭が暑くなりやすいのは髪の毛が熱エネルギーを吸収するからです。逆に冬は、黒い服のほうが太陽の熱エネルギーを吸収しやすいので温かく過ごせます。

◇ ◇ ◇

熱が伝わる現象は、普段の生活の中でたくさん見られます。「温かい手と冷たい手で握手するとどうなるか」「真夏に屋外で車を停めておくと、触れないほど熱くなるのはなぜか」「電子レンジは火を使わないのに、なぜ料理が温まるのか」など、身の回りの現象に興味を持つと、熱についての理解が深まるはずです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。