中学受験ノウハウ 勉強法

もしも東大を目指すなら? 「思考力」を鍛える勉強法を解説

2021年5月10日 松田翔

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わが子にレベルの高い教育をさせたいと願う親御さんのなかには、「中学受験で難関校を目指すなら、ゆくゆくは子供を東大へ……」と考えたことがある方もいるかもしれません。一般的には中学受験で難関校に進学した子のほうが東大進学に近いイメージがあるかもしれませんが、実際のところ、中学受験と東大受験がどのように繋がっているかわからない方も多いのではないでしょうか? 私自身の塾講師としての経験や、栄光学園から東大に進んだ経験をもとに、難関大学進学に直結する「思考力」を鍛える勉強法をお伝えします。

思考力を鍛えるには?

中学受験生にとっては、大学受験ははるか先のことに思えますよね。でも、今のうちから思考力を磨いておいて損はありません。特に東大のような大学になると、知識量はもちろん、思考力にも優れた人がたくさんいます。たとえば中学受験の勉強のなかで、次のふたつを少し意識するだけでも思考力はぐんぐん磨かれていきますよ。

  • 「なぜ?」を追求する
  • 「つまり〇〇」を意識する

「なぜ?」を追求する

思考力を鍛える勉強方法のひとつ目は、とにかく「なぜ?」を追求することです。なぜなら私が見る限り、物事をとことんまで突き詰めて考える人が東大の門をくぐっている印象が強いからです。ちなみに、いわゆる「頭脳労働」と呼ばれるコンサルティング系の仕事が、東大生から根強い人気を集めているのもうなずけます。

たとえば中学受験の社会の勉強のなかで「山脈の名前」を覚えるにしても、名前をただ覚えるだけでなく「どうしてこの場所に山脈ができたのか」を考え、説明できるようにしておくことが大切です。日本史の場合には、ただ単に「鳴くよウグイス平安京」とゴロ合わせで覚えるのではなく、「どうして794年に平安京がつくられたのか」「平安京をつくることにどんな意味があったのか」といったことまで考えられると良いですね。

そもそも難関校合格を目指す中学受験生の多くは、教科書に載っている知識は丸暗記していることが多いものです。これ自体は否定されるものではありませんが、このとき一歩踏み込んで「なぜ?」を追求していく姿勢を持ってみてください。すると、思考力がどんどん磨かれていきますよ。

「つまり〇〇」を意識する

思考力を鍛える勉強方法のふたつ目は、長い文章を要約することです。東大生のなかには口下手な人もいて、はじめはだらだらと説明しようとする人もいます。でも「つまり何が言いたいの?」と聞くと、話をひと言で伝えられる“要約力”を持っている人は多いですね。

中学受験の勉強のなかでは、特に国語に取り組む場合に、ひとつのまとまった文章を意識的に「ひと言」で伝えられるように練習を積んでおくと良いでしょう。ちなみに、要点をまとめる練習は日常生活のなかでもおこなえます。たとえば「『鬼滅の刃』ってどういう話?」と友達から聞かれたとします。この場合、「昔、日本に炭治郎(たんじろう)という少年がいて、妹が半分鬼にされちゃったから、鬼無辻無惨(ぎぶつじむざん)っていう悪い鬼を倒すために……」と答えるのはあまり良くありません。だらだらと全体を説明すると、聞いているほうからすると一体なんの話かわからないからです。大切なのは、ひと言で表す意識を持つこと。「半分鬼にされた妹を元に戻そうとする少年の物語」と、ひと言で伝えられるとベストですね。

東大が学生に求めている「力」

「東大は頭がいい人しか受からない」と言われることが多いです。私自身の経験からすると、この答えは半分正解で半分間違っているように思います。そもそも教科書の知識を頭に詰め込める人は、学校の定期テストで高得点が取れる人です。このような人は、学校内で「頭のいい人」と言われるかもしれません。でも、東大が求めている能力は暗記力だけではありません。英単語や歴史の年号をひたすら覚えたりする勉強方法では、東大にはなかなか受からないのです。

「考える力」を求めている

東大が学生に求めている力は「考える力」です。もちろん、教科書レベルの基礎的な知識を勉強しておくことは必要です。しかし知識量よりも、与えられた資料や知識から、自分で考えて答えを導き出せる人を東大は求めています。

たとえば、東大の入試問題のなかでも特徴的な「日本史」を例に挙げて説明します。東大の日本史の問題は、基本的には年号や文化史の細かな知識がなくとも、与えられた資料を読み解き、歴史全体の流れを踏まえたうえで正しく記述できれば高得点が狙える形になっています。「鎌倉幕府ができたのは何年か?」「見返り美人図を描いたのは誰か?」といった問題はまず出題されません。むしろ「次の資料を読み、当時の時代背景を考慮しながら政府の方針を120字で答えよ」といった出題が多く、その場で考え、答えを記述する力を求める問題が多くを占めます。

ちなみに私は「すごく勉強している様子はなかったのに、あの子は東大に合格した。天才かもしれない」とウワサされる東大生に出会うことがあります。こうした学生と話すと、例外なく「考える力」が飛び抜けていることがわかります。たとえ知識量は少なくても、幼少期から「自分の頭で考える習慣」が身についているのです。そして東大は、このような学生に門戸を開いています。

東大入試は「最高の良問」

ここまでお話してきた通り、東大入試において「知識量」はあまり武器になりません。むしろ、普段からどれだけ物事を自分の頭で考えているか、そしてその考えをどれだけわかりやすく伝えられるか、が合否を分ける入試といえます。

現代は機械やAIによって仕事が奪われ、どんな知識であってもインターネットでアクセスできる時代です。こうした時代において、人間の持つ「考える力」は、この先非常に重要な役割を占めるともいわれています。そしてこの「考える力」を醸成できるという意味でも、東大入試は非常に質の良い問題といえるのです。

東大入試とよく似た中学入試問題も

ちなみに中学入試の問題には、ときどき東大入試に非常に似た問題が出題されることがあります。たとえば御三家のひとつ「麻布中学」では、次のような問題が出されています。

(もともとは生産コストを抑えるために人件費の安い中国で生産していたのに)なぜ経済発展により賃金が上がっているにも関わらず、日本の衣料品メーカーは中国に工場を残したのでしょうか。

こうしたテーマは、東大入試でも頻出です。事実、「大量の低賃金労働力を利用して生産コストを抑えようとするも、賃金上昇に伴い生産拠点を移すことにデメリットがある」といったことを答えさせる“定番の問題”がくり返し出題されています。

「考える力」は人生にもプラスに働く

ここまで「考える力」の重要性をお伝えしてきましたが、目先の中学入試を突破するためには、都道府県の地名や年号などの知識を覚えることも欠かせません。こうした基礎知識をまずはしっかりと身につけたうえで、もしも余裕があれば「考える力」を鍛えることにも目を向けてみてください。東大を受けないにしても、思考力を磨いた経験は今後の人生にきっとプラスに働くことでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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