中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

中学受験で親子の亀裂・対立を解消するには ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2021年7月27日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

前回はギクシャクした親子関係を改善するために、コミュニケーションを見直すという話をしました。今回は、親子関係がこじれてしまった状態を“解消”する方法について考えます。「自分の言うことにまったく耳を傾けてくれない!」と嘆くだけでは、一向に受験本番に向けて歩みを進めることができません。お互いのわだかまりを解消して受験に向けて足並みを揃えて前進していくことが、子供のパフォーマンスを上げるためにも大切です。今回は関係を改善するコツをお伝えします。

相手を否定しないことが重要なスタンス

親子関係に不和が生じているときは、互いに「どうせ話したってわかってくれない……」という気持ちが高まっています。これを解消するためには、お互いに腹を割って話し合うべきです。このとき重要なスタンスは「お互いに相手を否定しないこと」というスタンス。何かをひとつでも否定されてしまうと、話を続けにくい気持ちが生じます。否定したくなる気持ちがあっても、グッと我慢して相手の意見に耳を傾けること。これが基本的なマナーです。

ただ、どうしても気持ちが抑えきれないとか、相手が冷静な気持ちで話を聞いてくれなさそうなときには、第三者を介入させて話し合うこともひとつの手段です。

ある親子の実例

私も以前、関係に亀裂の生じている受験生親子の話し合いに、第三者として介入させてもらったことがあります。6年生の10月になっても、お子さんは受験を嫌がっていて、塾にも行かない状態。お母さんはとても困っている様子でした。ただ、その話し合いの場には、お子さんもしっかり同席していたんです。私はそこに一縷の望みがあると感じました。

子供に話を聞いてみると、自分の言い分を聞いてくれず、親が一方的にレールを敷いていることに不満を持っている様子。突破口となったのは、敷かれたレールのその先にも人生が続くということに、親子で目を向けたことでした。中学・高校以降も人生は続きます。将来、どんな大人になりたいのか、そのお子さんには、鮮明なイメージがあったのです。

そこからは、思い描いた将来から逆算して中学・高校はどんなに学校行きたいのか、どのような学校生活を過ごしたいのかを、親子でじっくりと話し合いました。絡まった糸をゆっくりとほどくようにして親子のわだかまりは解消され、結果としてその子は第一志望の中学校に合格することができました。

親子で希望を共有しあうこと

例に挙げたご家庭が中学受験を成功させた要因は、進路指導やキャリアガイダンスのような時間を設けて、親子で「~したい」という希望を共有し合ったことが大きいです。中学受験生がやる気を出すためには、将来に向けた何らかの憧れが必要です。あんな中学生になってみたい、大学でこんなことを学びたい、こういう職業に就いてみたいなどなど。自分の進む道のりの先に自分の欲しいもの、実現したいことがありそうだという希望を持つことは、中学受験生を支える力強い原動力になります。

こじれた親子関係を修復させるためには、親子で将来という景色に目を向ける時間が必要なのです。子供のやりたいことについて話し合うのはもちろんこと、本を読んだり、テレビを見たり、どこかに旅行したり……。やりたいことについて深掘りするとか、子供の知らない世界について見識を深めるといったことは、子供だけではなかなかできません。たくさんの窓から親子でいろんな景色を見つめて、中学受験を再スタートさせましょう。

話し合う前のワンクッション『Fun time together』

真剣な話し合いをする前には、お互いの気持ちを打ち解けさせる目的で、いくつかのクッションを挟んでみるのもひとつの手段です。このクッションのひとつは「Fun time together」という考え方。楽しい時間を一緒に過ごす、という意味ですね。

理想的なのは、音楽をかけて一緒に踊ったり、演奏したりという時間を過ごすことです。語り合う時間がなくとも、一緒に体を動かすことで、気持ちのわだかまりが解けることはよくあります。あるいは、一緒においしいものを食べるというのも良いでしょう。味覚はそれぞれですが、おいしいという感覚は誰にとっても共感・共有しやすいものです。また、ある活動が“Fun”であるかどうかはやってみないとわからないので、ご両親がFunだと思う事柄に子供をお付き合いさせるという発想もあります。

「同じものを見て気持ちを共有し合う」という点は、先に挙げた「同じ景色を見る」ということとよく似ています。その前の準備段階として楽しい、おいしいなど、心の栄養になりやすいものを共有するというのは、とても大事なことだと思います。また、家族との嬉しい思い出は、子供にとって一生の宝物になります。

問題解決の主導権は大人が持つ

家族内で問題が起きたときは誰もが当事者になりえます。しかし問題解決のためには、大人が能動的に動かないと、家族内の関係はいつまで経ってもこじれたままです。家族というチームをどうやって育てバージョンアップしていくのか。衝突が起きたときは、どうやって解決するのか。そういった視点を持ちつつ、親御さんは家族というチームのリーダーとして、イニシアティブを持ってお子さんを導いてほしいと思います。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。