連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

2021年、注目したい中堅校【2】 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年9月10日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

みなさんは中高一貫校を選ぶときに、何を基準としますか? 偏差値や進学実績を気にする親御さんも多いかもしれませんが、そもそも中高一貫校で過ごす6年間は、思春期に人として大きく成長する大切な期間です。入口や出口だけでなく、6年間を過ごす「環境」にもしっかりと目を向けましょう。

今回は、私が注目している中堅校、「普連土学園」と「和洋九段女子」について紹介します。雰囲気や教育方針など、学校の”中身”についてお伝えしますので、学校選びの参考にしてみてください。

普連土学園 ―― 穏やかな空気が流れるミッション系スクール

普連土学園中学校・高等学校(以下、普連土学園)は、ミッション系の女子校です。穏やかな雰囲気が流れている学校で、先生たちも生徒一人ひとりの個性を尊重しながら教育をおこなっています。

首都圏模試の偏差値は、61~67(2021年8月時点)。「中堅校受験」という枠からは少し外れる学校ではありますが、これまで私の塾(進学個別桜学舎/中堅校受験専門)から進学した生徒も2名います。ふたりとも勉強を一生懸命頑張れる子で、争いごとを好まないおっとりとした性格。ライバルと競争していくのが好き、というタイプではなく、「落ち着いた環境でのびのび過ごしたい」といった“芯”をしっかり持っている子たちでしたね。事実、普連土学園には似たような考えを持っている子が多いようで、価値観を一にする友達に囲まれ、中学校生活を毎日楽しく過ごしています。

「学園祭の華」と呼ばれるフォークダンス

先ほどの彼女たちも含め、中学受験の学校選びの際に、普連土学園の「学園祭の華」とも呼ばれるフォークダンス部の踊りに惚れこむ子は少なくありません。ヨーロッパの民族衣装を着て中庭で披露する踊りを目当てに、毎年多くの小学生や来場者が集まります。そしてブレイクダンスなどの“今風”なダンスではなく、ゆったりとしたフォークダンスが学園祭の華となっているところは、この学校ならでは。一見すると派手ではないことであっても、普連土学園にはそれを認めてくれる仲間と先生がいます。私が学園祭にお邪魔した際は、クラスの展示発表のひとつとして「鉄道模型」が教室のなかを走っている様子も目にしました。女子校ではなかなか見ない光景でしたが、ニコニコと楽しそうに鉄道を走らせる彼女たちの目は、本当にイキイキと輝いていましたね。

記述メインの入試問題

普連土学園では、「自ら考え、伝え、行動する」ことを教育目標のひとつとして掲げていますが、なかでも次のふたつを大切にされているようです。

・自ら考える力
・他者にわかりやすく伝える力

そしてこのふたつが色濃く反映されているのが、入試問題です。普連土学園の入試の特徴は、国語の問題がほぼ記述であること。さらに解答用紙には、マス目もほぼありません。つまり「何字以内で書きなさい」といった制限がなく、「文中の言葉を使って説明しなさい」といった形で記述を求める問題が多くを占めているのです。

この入試問題から読み取れるのは、自分で考える力を持っていたり、自分の言葉で論理的に説明できたりする子が、普連土学園が求める生徒像だということ。「記述問題の多さ」は普連土学園の入試でここ10年変わらない特徴でもありますが、こうした面からも学校側が発信したいメッセージの強さが感じられますね。

ちなみに国語だけでなく、一見すると算数も難しそうな問題が並びます。しかし実は、問題とじっくり向き合ってみると基礎的な知識で解ける問題も少なくありません。首都圏模試の偏差値が60を超える学校ではありますが、まずは基礎をしっかりと押さえたうえで、問題を1問1問丁寧に解いていく習慣を早めに身に付けることができれば、チャンスが見えてくるでしょう。一方で国語の問題はボリュームがあるため、国語に関しては短時間で量をこなす練習をしておくと良いですね。

生徒が進みたい道へ

普連土学園の校舎は、三田駅から徒歩7分の場所に位置しています。ご近所ということもあり、大学入試では慶応義塾大学を目指す子が比較的多いようですが、一方で文系・理系、そして偏差値問わず、生徒たちはさまざまな大学に進学しています。「偏差値の高い大学に何とかして進学させる」ことを目的に進路指導をおこなう学校もありますが、普連土学園はその逆。むしろ「本当にやりたいこと」を重視した教育を実践しているからこそ、一部の人気校だけに偏らず、生徒たちは自分が信じた道に堂々と進んでいくことができるのでしょう。

普連土学園中学校・高等学校
https://www.friends.ac.jp/

和洋九段女子 ―― グローバル教育に力を入れる伝統校

和洋九段女子中学校高等学校(以下、和洋九段女子)は、英語教育に特に力を入れている、国際色豊かな女子校です。千代田区に位置する学校ですが、台東区や江東区などから通ってくる生徒も多いようで、校舎は活気にあふれています。そして100年を超える伝統校ということもあり、「うちの子も和洋九段女子に入ってほしい」と親子二代でお世話になる家庭も珍しくありません。

私から見た和洋九段女子の印象は、「丁寧な教育」が際立っているということ。たとえば中学受験のスタートが遅れたり、思うように成績が伸びきらなかったりした子であっても幅広く受け入れ、入学後もそうした生徒を決して見放しません。

教育方針としては、正解がひとつではない社会のなかで、そして“ジェンダーフリー”の世界のなかで、「自己をどう確立していくか」といった点を掲げています。なかでも、その取り組みのひとつとして注目を集めているのが、平成29年に中学部で開設された「グローバルクラス」です。

英語力が着実に身に付く

グローバルクラスとは、その名の通り、海外に通用する知識や経験を身につけることを主眼に置いたクラスで、目指す英語力は高校では英検準1級以上とハイレベルです。授業はレベルに応じてふたつに分けて展開します。英語をある程度習得している生徒向けの「アドバンスト」はオールイングリッシュでおこない、これから英語力をつけていく「インターミディエイト」は日本語を交えた授業から開始しますが、段階を踏んで補習などもおこない、アドバンストへの移行を目指します。そして、ただ闇雲に英語を“浴びせる”というわけではなく、生徒の実力を冷静に見つつ、6年間のなかで英語力を着実に伸ばせるカリキュラムが整備されているのも特徴のひとつ。つまり、誰も置いていかない教育を実践しているのですね。

ちなみに令和3年度の入試では、一部の入試で「PBL型試験」の選択も可能でした。PBL型試験とは、グループワークでの取り組みや思考力、プレゼンテーション力などが評価される試験のことで、「問題解決型試験」とも呼ばれます。具体的には、試験会場でちょっとした動画を見たあとに、その動画を受けて話し合い、考えたことを発表する、といった流れで進んだようです。

「自立した大人」に育てる

グローバルクラスの説明をしてきましたが、本科クラス(通常クラス)のほうでも、前述したPBL(問題解決型学習)を重視した授業が展開されています。たとえばクラスメイトどうしで意見を交えたり、資料を作成して自分の意見を発表したりする、といった時間が多く用意されているのですね。

グローバル社会を生き抜くうえでは、将来的に海外で過ごさなかったとしても、他人の話を聞き、そのうえで自分の意見をきっちりと伝えられる力が欠かせません。そうした点において、和洋九段女子では「自立した大人」に育てる教育が一貫しておこなわれているのです。

日本文化を学ぶ場も

日本文化の学びの場として、小笠原流礼法や茶道、華道、書道の授業が用意されているのも和洋九段女子の特徴のひとつです。そもそもグローバル社会で活躍できる人といえば「英語が話せる人」というイメージを抱くかもしれませんが、大事なのはそれだけではありません。海外の人が求めているのは、日本人としての“アイデンティティ”の部分。たとえば茶道であったり、着付けだったり、礼法であったりと、日本ならではの知見を問われる場面は多々あります。

英語は、あくまでコミュニケーションを図るうえでの“ツール”です。むしろコミュニケーションを通して「何を語るのか」が重要視される時代にあって、和洋九段女子では「世界標準の教育を実践していく」と銘打っています。そして、それを決して綺麗ごとで済まさないのが和洋九段女子のすごいところ。目指すべき方向はどこで、そこに近づくために何をすべきか、子供たちの能力に見合っているか、といったことが緻密に考えられています。伝統校という点はもちろん、入学後も安心して通える体制が整っていることも、和洋九段女子が愛される理由といえるでしょう。

和洋九段女子中学校高等学
https://www.wayokudan.ed.jp/

「生徒目線」での教育を実践

一昔前の女子校といえば、いわゆる「良妻賢母型」の教育を推進する学校が多くを占めました。しかし、現在の女子校は違います。特に今回紹介した「普連土学園」と「和洋九段女子」は、自分で考え、自立する“強い大人”を育てる教育を実践している点で、まさに時代の一歩先をいく学校ともいえるでしょう。そして両校とも、生徒を置いていかず、「生徒目線」での着実な教育がおこなわれている点も魅力です。6年間を安心して過ごしたい。こう考える親子にもぴったりな学校ともいえますね。

悩める親御さん向けセミナー開催!
「ゆる中学受験コミュニティ」>>詳細はこちら

主催:進学個別桜学舎


これまでの記事はこちら
親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。