連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

2021年、注目したい中堅校【1】―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2021年9月03日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

みなさんは中高一貫校を選ぶときに、何を基準としますか? 偏差値や進学実績を気にする親御さんも多いかもしれませんが、そもそも中高一貫校で過ごす6年間は、思春期に人として大きく成長する大切な期間です。入り口や出口だけでなく、6年間を過ごす「環境」にもしっかりと目を向けましょう。

今回は、私が注目している中堅校、「成城学園」と「駒込」について紹介します。雰囲気や教育方針など、学校の”中身”についてお伝えしますので、学校選びの参考にしてみてください。

成城学園 ――「自由教育」を展開

成城学園中学校高等学校(以下、成城学園)は、小田急線沿いに校舎を構える大学附属校。知的好奇心を高め、総合的かつ自発的に教養を高められる生徒の育成に主眼を置く学校です。

成城学園では、成城大学に進める“権利”を持ちつつ、ほかの大学も受験できます。実際、毎年50~60%程度の生徒が成城大学への内部進学を決めるようですが、ほかの大学を受験する生徒も少なくありません。このように、ほかの大学を受験でき、万が一落ちてしまっても成城大学に進学できるのは、成城学園の生徒たちにとってかなり心強いセーフティネットとなっているようです。そして学校側としても、「成城大学」という進路だけを生徒に進めるということはせず、むしろ生徒の進路や自主性を尊重しています。そのうえで、進学実績にとらわれない、成城学園らしい“自由な教育”に力を注いでいるのです。

幅広いジャンルから興味がある授業を選択できる「自由研究」

成城学園らしい教育としてまず挙げられるのが、高2・高3でおこなう「自由研究」という名の選択授業でしょう。小論文や英会話、ギター教室や絵画教室、さらには「SDGsで未来を考える」や「浴衣をつくる」授業など、受験に役立つものから近年の人権問題、趣味づくりに直結する内容まで、こうした多彩な授業のなかから生徒自身が興味ある分野の授業を選択できます。

なお大学受験を控えた高3のタイミングでは、いわゆる“受験向け”の授業を展開する学校がほとんどです。一方で、高3の時点でもこうした選択授業をおこなう成城学園はその点では珍しく、まさに進学実績よりも、生徒の自主性を伸ばすことに主眼を置いている表れともいえるでしょう。

細かなケアに定評のある「理系教育」

成城大学には理系の学部がなく、理系の学生は他大学を検討する必要もあるため、成城学園では中高で理系教育にも力を入れています。たとえば実験室は8か所ある上に、生徒1人に1台ずつ顕微鏡が配られるなど、実験に対する力の入れ具合がうかがえます。また、大学受験へのケアも万全。少人数制の授業で細かなケアをおこないつつ、理科と数学に関しては教科書7冊分にものぼる「オリジナルプリント」が用意されているようです。

ちなみに「化石・恐竜ギャラリー」という名の見学スペースが解放されていることも、他校にはない魅力として挙げられますね。恐竜が好きな生徒にはたまらない空間といえるでしょう。

ノビノビと過ごしたい子にぴったり

成城学園は、いかに知的かつ、楽しい学びの時間を過ごせるかという点に重きを置いている学校です。そのため競争意識を持って勉強するというよりは、生徒それぞれがやりたいことに夢中になって日々を過ごしています。なので、自分のなかで目標を持ちつつ、ノビノビと過ごしていきたい子にはぴったりの学校といえるでしょう。

かといって勉学のレベルが低いということはなく、首都圏模試の偏差値では64近くを推移しているなど、中学受験ではしっかりとした知的水準が求められます。このように一定の知的レベルを維持しつつ、一方で生徒の自由を尊重している点において、成城学園はかなり稀有な存在ともいえます。

なお、成城学園の入試問題は基本レベルの問題が比較的多いため、まずは基礎を徹底することが大切です。その上で応用問題にも対応できるようにしておくことで、合格の可能性が見えてくるでしょう。

成城学園中学校高等学校
https://www.seijogakuen.ed.jp/chukou/

駒込 ―― 常に新しいことを取り入れる仏教校

駒込中学校・高等学校(以下、駒込)は、千代田線「千駄木駅」から徒歩7分の場所に校舎を構える、仏教系の中高一貫校。南北線「本駒込駅」からは徒歩5分、三田線「白山駅」からも徒歩7分以内 という場所に位置することもあり、利便性の良さも人気の秘密です。さらに2021年の中学入試では出願者数が1000人を超えるなど、近年特に志願者を集める学校のひとつとして知られ、私の塾(進学個別桜学舎)からも毎年数名の生徒が受験しています。

駒込の大きな特徴として挙げられるのは、先生どうしの連携が密に取れていること。たとえば保護者が学校に相談をするとすぐに対応してくれて、しっかり話を聞いてくれるといった評判も良く耳にします。とにかく“風通しがいい”学校です。ちなみに保護者の方からは、私立では珍しい「給食」も人気を集めています。

また「入試広報部」といった形ではなく、もっと広義な意味での「企画広報」という役割の先生がいることも特徴のひとつ。「駒込の良さを多くの親子に伝えたい」という思いを強く持っている先生が多く、たとえば給食の試食会を開催したり、“新しい入試”として注目される「自己表現入試」や「プログラミングSTEM入試」をおこなったりと、先生たちが一丸となってアイデアを出し、実現に漕ぎつけています。

「新しい入試」を次々と実施

駒込がおこなう「自己表現入試」とは、本やタブレットを駆使しつつ、与えられた問題に答えていく入試です。自由な発想が問われる入試ということもあり、回答は文章である必要はなく、絵を描いて表現することもOK。ちなみに図書館に4時間こもっておこなう長丁場の入試でもあるため、試験中はお菓子や飲み物も提供されるようです。

駒込は「プログラミングSTEM入試」と呼ばれる入試も実施しています。特に、プログラミングが好きな子にとって興味がそそられる入試のようで、私の塾でも「早く受けたい!」と入試を楽しみにしていた生徒がいたほど。常に目新しい角度から教育を実践しようとする、駒込らしさが垣間見える入試といえるでしょう。

「豚の解剖」の授業も

駒込は、独自の形で理系教育にも力を入れています。理科の実験に関しては、中学生のあいだに週1回ペース、およそ100回近くもおこなうとか。なかでも生徒たちに強いインパクトを与えるのは、豚の解剖。カエルの解剖すらやらない学校が増えたなか、生物学的な面を生徒にしっかりと理解させるためにあえておこなっているようです。そしてこうした経験を通し、「君はどう考えるか?」というひとつの命題を生徒たちに伝えていく ――。清濁併せ呑むような授業は、仏教校らしさを感じる一面でもあります。

生徒を決して置いていかない

仏教系の学校の特徴としては、校則の縛りが少なく、おおらかな校風を持っていることが挙げられますが、駒込も例外ではありません。ただし、勉学を片手間にできるかというとそうでもなく、私の塾から駒込に進んだ子の話を聞くと、公立中学に比べると定期考査の出題範囲も広いですし、授業の進度にもスピードがあるようです。このように、生徒にとっては決して簡単ではないレベルの勉強を求めている一方で、たとえば勉強ノートを毎日確認する、といったガチガチさはそれほどありません。生徒への信頼を第一に置いている学校でもあるので、管理されるのがあまり好きではない子にはおすすめできる学校ともいえます。

そして駒込の場合には、「生徒を決して置いていかない」という姿勢も徹底されています。授業について行けない生徒をとにかく見捨てないでフォローしてくれる学校なので、その点で親御さんとしても安心して預けられる学校といえるでしょう。

駒込中学校・高等学校
https://www.komagome.ed.jp/

やるときはやる。緩めるときは緩める

今回紹介した「成城学園」と「駒込」は、どちらもゆったりとした校風で、生徒たちもマイペースに自分のやりたいことに打ち込んでいる学校です。一方で決してダラダラと学校生活を送っているわけではなく、やるときはやる、緩めるときは緩める、こうしたメリハリをつけつつ、多くの生徒が学校生活を満喫しています。

志望校選びはどうしても偏差値に目が向きがちですが、たとえば「メリハリをつけて学校生活を楽しんでほしい」など、わが子にどのような中高生活を送ってほしいかを考えながら学校を探していきましょう。

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主催:進学個別桜学舎


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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。