中学受験ノウハウ 連載 親子のための、「探究」する中学受験

【前編】中学受験のまえに知っておきたい! 親のマインドチェンジのススメ|親子のための、「探究」する中学受験

専門家・プロ

変化の激しい時代でも活躍できる人材を育成するために始まっている教育改革。「思考力・判断力・表現力」が重要だとする方針で注目が集まっているのが「探究型学習」や「アクティブラーニング」です。とはいえ中学受験にはどんな影響があり、どう対応していけばよいのか、不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。この連載では、「探究×受験」を25年以上実践している知窓学舎の塾長矢萩邦彦先生に、次代をみすえた中学受験への臨み方についてうかがいます。

教育改革の影響もあり、随所で聞かれるようになった「探究学習」。「浸透していきているようだけどイマイチ理解ができない」という方、または、好きなことを突き詰めるという点に共感しつつも、「好きなことばっかりでいいの? 受験させるときはどうしたらいいの?」と迷う方も増えてきているようです。

こうした状況をふまえて、時代に合わせた親のマインドチェンジの重要性や、受験についてのスタンスの取り方などついて探っていきます。大手進学塾を経て、受験にも対応した探究塾を主宰する矢萩邦彦先生にうかがいました。

中学受験と探究学習は対立するのか

近年、「探究学習」が教育分野でトレンドとなり、その言葉を耳にする保護者の方も増えていると思います。探究学習では「好きなことや興味・関心を軸に」とか「正解のない問いに向き合う」などがキーワードらしい、というくらいは認識している方が多いのではないでしょうか。

これらのキーワードに対して、「それで学力は上がるのでしょうか?」とか「何の役に立つのでしょうか?」という感想を持たれる方がいて、実際に私もよく質問を受けます。

中学受験を考えている家庭ほど特に、そういったポイントが気になるようです。一見、受験の役に立たなそうな、学力向上とは対立する考え方に見えるのかもしれません。

しかし、保護者がこうしたマインドでいることは得策ではありません。これからの社会で親子ともに豊かに生きていくために、子どもと接する大人たちはマインドチェンジしていく必要があるのです。

そもそも探究学習はなぜ注目されているのでしょう。

そこには、現代の社会情勢の中で、各業界の特に起業家や経営者のあいだで「新卒人材が即戦力になりづらい」という問題が大きくなってきていた背景があります。

それを受けて、「日本教育には社会で活かせる実践的な内容が足りない」という課題がフォーカスされ、課題解決の一施策として2020年にはじまった教育改革に「生きる力」を育むための「主体的・対話的で深い学び」というテーマが盛り込まれました。

この「主体的・対話的で深い学び」と、これまで教育現場に導入が進められてきた「アクティブラーニング」を統合して指し示す概念として「探究学習」が使われ、浸透してきているのが現状です。

ようは、「時代に合わせて学び方をアップデートしていこう」という話なので、必ずしも受験と対立するわけではありません。むしろ、受験システムを活用して、探究的に学んでいくことをめざすべきです。

とはいえ、中学受験生の親世代は従来型の学びの中で生きてきたので、「探究的な考え方がピンとこない……」と感じるのは当然といえば当然です。価値観を変化させるのは簡単ではありません。でも、これは大人も自分をアップデートさせるチャンスです。「よくわからない」の壁を越えて、一歩深く踏み込んで考えることから始めましょう。

「学力」とは、何だろう?

「探究学習をして学力は上がる?」

そんな疑問を持ったときは、一度立ち止まって考えてみてください。

「学力」とは何のことですか。

教科テストの点数のことでしょうか? 

もしそうならば、なぜその力が必要だと思っているのでしょう。受験に役立つからでしょうか?

  • テストの点数を上げたい
    → 受験に役立つから
  • 受験していい学校に入りたい
    → いい企業に就職できそうだから
  • いい企業に入りたい
    → 安定して幸せに生きていけるから

こうした「逆算的な意識」がもしあるならば、「もしかしたら、それは古い考え方かもしれない」と疑ってみてください。

前述したように、従来のやり方では現代社会で生きるために多くの課題があるという背景で、教育は探究学習へベクトルを向けているのです。

上記の3点は、確かに今までの時代で信じられてきた価値観かもしれません。変化が激しい現代で先の見通しがなかなかできない不安から、子どもの将来についても何かしらの安心を得たいと思う保護者が多いのもわかります。しかし上記3点のような考えに頼るのは、これまでの価値観の中に留まっている大人が安心したいだけではないでしょうか。

これまで続いてきた戦後の日本教育は、提示されたマニュアルを正確にこなす能力を上げるものでした。それが求められた時代ももちろんありましたが、これからは違います。

子どもの幸せを願うならば、その事実をしっかり受け入れて新たな価値観への理解を深めるべきです。新たな変化に向き合い、大人も学ばなくてはいけません。変わることは怖いことではなく、ポジティブな前進だと、身をもって子どもたちへも示していきましょう。

中学受験をするか、しないか、その議論の際も価値観を意識してください。探究的なスタンス「主体的・対話的で深い学び」を実践できるやり方はどんなものだろう。そんな視点を受験に対して持つだけでもマインドチェンジの一歩となります。

後編では、さらに具体的な考え方、子どもへの日々の対応の仕方などについてお伝えしていきます。


これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験

※記事の内容は執筆時点のものです

矢萩邦彦
矢萩邦彦 専門家・プロ

教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「すべての学習に教養と哲学を」をコンセプトに「探究×受験」を実践する統合型学習塾『知窓学舎』を運営、「現場で授業を担当し続けること」をモットーに学校・民間を問わず多様な現場で授業・講演・研修・監修顧問などを展開している。代表取締役を務める株式会社スタディオアフタモードではメディア事業に従事、主宰する教養の未来研究所では、企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近編著書『中学受験を考えたときに読む本』『先生、この「問題」教えられますか』(洋泉社)。メディア出演はフジテレビ『めざましテレビ』TBS『サンデージャポン』他多数。

中学受験を考えた時に読む本先生、この「問題」教えられますか?