受験ストレスをどう乗り越える? 代表的な症状と親子でできるストレス対策
多くの場合、中学受験は志望校合格へむけた日々の取り組みが数年にわたり続き、子供たちはさまざまなプレッシャーとも戦うことになります。そういった状況の中で感じる受験期特有のストレスを総称して「受験ストレス」と呼ぶことがあります。中学受験生とその家族が乗り越えるべき問題のひとつといえるでしょう。ここでは、受験生専門の心療内科「本郷赤門前クリニック」の院長を務める吉田たかよし先生に、受験ストレスの種類や症状、そして親子でできる対策についてお話を伺いました。
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受験勉強が引き起こす「受験ストレス」とは?
脳科学と医学の観点から、受験生のサポートを行っている吉田先生いわく、受験ストレスによる悪影響を感じたときに、「気合でがんばる……」「気の持ちようでなんとかする……」といった精神論で解決しようとせず、受験生特有のストレスの性質を理解して適切な対処をすることが大切なのだそうです。
受験ストレスはどこからくるのか?
そもそも、どのようなプロセスを経て受験期のストレスは悪化してしまうのでしょうか。
「多くの子供たちは受験勉強において、不安や不満の気持ちを抱いているものです。不安を感じると脳の扁桃体(へんとうたい)が過剰に活動し、脳が次第に疲弊していきます。脳が疲弊することでメンタルが不安定になり、また、メンタルが不安定になると、脳の不適切な活動が繰り返され、ますます脳が疲弊する。こうした悪循環のスパイラルに陥ってしまうことが多いのです。この状態が続いてしまうと、心身ともに子供のコンディションが悪くなってしまいます。この悪循環のスパイラルに気づき、改善すると、一気に成績がアップするという例も多くあります」(吉田先生)
受験期の子供の様子をよく観察し、悪循環に陥っていないかチェックをすることが、親としてまずできることと言えそうです。
「受験ストレス」の具体的な影響とは?
受験ストレスによって現れてくる子供たちの言動や状態の代表的なSOSサインについて吉田先生に聞いてみました。
「大きく言うと、4つ挙げられます。1.不眠 2.親への暴言や暴力 3.受験への悲観 4.集中力の低下です。1はいちばん多く見られる症状ですね。2はイライラした気持ちから発生する親への暴言・暴力で、普段おとなしい子や、まじめな子でも例外ではありません。3は受験に対して悲観的になってしまい、もうだめだという気持ちになってしまう状態です。
4は脳の疲労が原因になることが多いです。例えば3分も集中が持続しない、ケアレスミスがものすごく増える、長文が読めなくなるなどは、よくある受験ストレスのSOSサインですね。普段だったら忘れようもない基本的な公式が使えなくなってしまう、ということもあります」
これは、受験ストレスによって、脳が正しく作用していないことが影響しているそうです。子供の状態が上記にあてはまるようなら、現状の学習計画に無理がないか、子供の気持ちになにか納得していない部分がないかなど、見直してみるのがよいかもしれません。
子供の「受験ストレス」解消のために、親がすべき対策は?
わが子の受験ストレスに対して、親ができることはどんなことでしょうか。吉田先生は、大事なのはしっかり休ませることと、体を動かすことだといいます。
「多くの受験生は、四六時中受験のことを考えている、または長時間連続で勉強をしているという、まさにオンとオフの境目がない精神状態でいます。その状態を断ち切ることがまずやるべきこと。つまり、いったんは大胆に勉強時間を減らし、しっかりと休ませて回復をはかることです。15分くらいの短時間でも集中して勉強し、少しでも集中力が落ちたら休むことが肝心。勉強時間を減らすなんて、親としてはつい不安になってしまいますが、集中できないのに長時間ダラダラと勉強するほうが、よっぽど学習効果は薄いのです。『勉強しなさい!』ではなく、『休みなさい!』という言うのが、受験ストレスに対抗するときの親の仕事と心得ましょう。
また、休むときには、身体を動かすことが理想的です。手軽にキャッチボールやサッカーのドリブルをやるのもいいでしょう。親子でスーパーへ買い物に行ったり、ちょっとした散歩をするのでもいいのです。机の前を離れて身体を動かすことで、脳の働きが回復し休息の効果が高まります。
気分転換という意味では、好きな漫画や雑誌を読むことも心の休憩にはなりますが、脳にとってみると教科書や参考書などを読むときと同様の活動をしてしまうので、脳の休息には繋がりづらい面があります。できるだけ体を動かすというアクションを意識してみてください。勉強を量(時間)で測定するのではなく、質の高さで測定するようにしたいですね」
勉強は短時間集中型に。そしてしっかり休むこと!
受験によるストレスは、多かれ少なかれ子供たちはみな感じているものでしょう。しかし、それが目に見えて悪影響を及ぼすことのないよう、日ごろから子供の様子には注目しておきたいものです。受験ストレスの影響が出ていると気づいたときは、大胆にしっかりと休ませるということを、まずは心に留めておきましょう。受験ストレスによる症状が重い場合は、専門の医師に相談することをおすすめします。
※記事の内容は執筆時点のものです
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