中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

「やる気ある?」って発言は要注意? 子供のやる気を引き出すためにどう接するか ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2022年9月02日 やまかわ

1
首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

なかなか勉強を始めないお子さん、テキストは開いているけれどボーッとしているお子さん。そうした姿を見た親御さんは、「やる気ある?」と苛立ちをぶつけてしまうことがあります。言われたお子さんは、「本音を言うと、さらに怒られてしまう……」と考えるかもしれませんし、「今はたまたま少し疲れていただけなのに!」と心の中で憤るかもしれません。複雑な子供の“やる気”とどう向き合うか考えてみましょう。

この子は戦っているんだよね

「やる気」はその方向に向かって自から進もうとする意欲のようなもので、モチベーションという英語とともに広く馴染まれた言葉です。勉強であれ、社会活動であれ、商売であれ意欲が必要ですね。ある種の活動を自分でドライブしていく動因、前に進める力です。

ただ、やる気と言っても、一人ひとりの“やる気”には、実にさまざまな種類の“やる気”が混在しています。私たちはこのことを忘れがちです。

たとえば、中学受験生であれば「○○中学に合格したい」という気持ち、「次のテストで満点を取りたい」という気持ち、「今日の勉強はここまでやる」という気持ちなどなど……、長期的なものから短期的なものまで、さまざまなやる気(らしきもの)があるわけです。

しかも、状況によって上がったり下がったりします。日によっては「○○中学に合格したいという気持ちは強いけど、今日は疲れていて勉強のやる気が出ない」ということもあります。「塾の勉強は楽しいけど、絶対に○○中学に受かりたいかと言われると別に……」というケースもあるかもしれません。

親御さんから見て「やる気がなさそう」に見えても、子供は心のなかに「現状をなんとかいいものにしたい」「親にほめられたい」という気持ちを持っていたりもします。だけど、思い通りにいかなくてどうしていいかわからず、ひとりで葛藤しているのかもしれない。「気持ちはあるんだけど、現実はそうならない」といった葛藤です。

親御さんは、そういったお子さんの葛藤する胸中を察することができる大人であってほしいですね。これが、お子さんのやる気と向き合う際の基本的所作のひとつではないかと思います。

親の私からは見かけ上はサボっているように見えるけど、この子の心の中では戦いが繰り広げられているのかもしれない――。

このように自分の期待と、そうならない現実を察する。「この子は戦っているんだよね」と思いを馳せることです。こういった親の姿勢や眼差しは、お子さんからすると、かなり救いになりそうです。戦う自分に寄り添ってくれる、味方についてくれると感じられるからです。そこから親子の信頼関係も生まれるのではないかと思います。

やる気を0か1かで考えない

子供の心の中をより正確に知るためにはどうしたらよいでしょうか。

続きは会員の方のみご覧いただけます

1
田中純

田中純

  • 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

やまかわ

  • この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。