中学受験ノウハウ 連載 書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く

転塾のコツを考える。「成績が上がらないから塾を変えたい」はなぜ失敗する? 書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く#2

専門家・プロ

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書籍『やってはいけない塾選び』(青春出版社)は、ある大手塾の大規模校の周辺で売れているそうです。

すでに塾に通わせている保護者たちが、なぜ塾選びの本を買うのでしょう? それは、転塾を考えているからかもしれません。

『やってはいけない塾選び』では、豊富な取材データを元に各塾の情報が書かれ、転塾についても言及されています。

前回に続き、著者のノンフィクションライター・杉浦由美子さんに、転塾のポイントを訊いてみました。

書籍『中学受験 やってはいけない塾選び』

年末は転塾を考える季節である

――『やってはいけない塾選び』のなかで、杉浦さんは中学受験における塾選びの重要性について書かれていますよね。中学受験の途中で転塾を考える人が多いというのは、それだけ「今の塾とうちの子は合わないかも」と感じる人も多いのでしょうか。

そうですね、子どもが通っている塾が「うちとは合わないかも」と感じれば、親御さんが一度は考えるのが転塾です。

とくに、年末が近づく今の時期くらいから、本格的に転塾を考え出すケースは多いようです。なぜなら、新年度(2月)は転塾にいいタイミングだから。

しかし、「次の塾でもうまくいかなかったらどうしよう」と悩むご両親も多いでしょう。

また、転塾の検討中に、次の候補の塾に電話をすると、「なぜ転塾をするんですか」としつこく訊かれ、転塾に二の足を踏んでしまうということもあるようです。

成功する転塾理由と失敗する転塾理由の違い

――辞めたいほうの塾ではなく、転塾したい先の塾からも、根ほり葉ほり理由を聞かれることがあるんですか? どうしてそんな対応になるんでしょうか。

筋が通ってない転塾理由は警戒されてしまう

転塾先の塾からすると、「筋が通った転塾希望」じゃないと、「うちにきてもうまくいかないんじゃないか」と警戒をするんです。それが元で、別のトラブルになることもありますから。

「筋が通った転塾希望」とは、どんなものか、具体的にみてみましょう。

たとえば、日能研に通わせていて、「週末も塾があるのは予想外に負担だなあ。水泳は続けたいのに、それが難しくなってきた」という理由で転塾を考えるとしましょう。

その結果、週末はフリーになる他塾に変えたいというのであれば、筋が通っていますよね。これなら転塾先の塾も「なるほど。それだとうちの方が合いそうですね」と納得してくれます。

「成績が伸びないから」という転塾理由は何が不足なのか?

――転塾で一番多いのは「成績が伸びないから」だと思いますが、これは筋が通った転塾理由になるんでしょうか。

「なぜ、成績が上がらないか。それは塾の”この部分”と合わないから」というレベルまで理由をつきつめられればいいと思います。

たとえば、宿題チェックすらしてくれない塾に通っていて、「子どもが宿題をやらない。親は忙しくて横に座って宿題をみてあげられない」というならば、宿題も塾で全部みてくれる塾に転塾したら、成績があがる可能性はありますよね。宿題チェックをちゃんとしてくれ、「宿題タイム」を設けて、生徒たちに宿題をさせる塾もありますから。

反対に、宿題をちゃんとやっているのに、成績が上がらないのであれば、宿題をしっかりみてくれる塾に転塾しても、意味がない可能性は大きいです。

宿題をやっているのに成績が上がらない場合、宿題の仕方に問題がある可能性はあり、そこを改善すれば成績が上がることもあります。転塾しないで、個別指導や家庭教師の敏腕先生をつけた方がいいでしょう。勉強の仕方を軌道修正してもらうんです。

個別指導も、講師によって指導料が倍ぐらい違います。そのランクの違いについても、本書では取材して書いています。宿題をやっているのに成績が上がらない」という悩みに対応できるような講師の指導料は、やはり高くなります

人間関係を原因とした転塾で知っておくべきこと

――ここまでのお話は学習面で「合わない」ことを理由にした転塾でしたが、「雰囲気が合わない」「人間関係が嫌だ」といった理由での転塾もありそうです。そういった転塾は、どうでしょうか。

人間関係転塾の「あるある」ケース

人間関係理由での転塾、よくありますね。

実は、最上位クラスほど、乱暴だったり、授業中うるさかったりする男子がいたりするんですよ。

女子の親御さんが「騒ぐ男子がいて他の子が困っている」とクレームを入れても、中小塾だと対処してくれないという話もよく聞きます。

その高偏差値男子を辞めさせたくないからです。開成や灘の合格実績を出してくれそうなんですから。

結果、迷惑をかけられた女子の方が転塾することがよく起こるのですが、次はトラブルにちゃんと対応してくれる塾がいいですよね。

生徒間のトラブルと大手塾のメリット

四谷大塚や浜学園といった大手塾は、生徒間のトラブルがあった時、キチンと対応してくれるという話はよく聞きます。

大手塾は高偏差値の生徒がひとりぐらいいなくなっても困らないからです。

転塾にともなうカリキュラムのズレにはどう対応する?

――実際、転塾となると、一番気になるのがカリキュラムのズレの調整だと思います。たとえば、まだ「流水算」を習ってないのに、新しい塾ではもう済んでいたという場合、そのままだと「流水算」は抜け落ちてしまいます。どうすればいいんでしょうか。

転塾先のフォロー体制は確認しておくべき

転塾してくる子へのフォロー体制にも、塾によって差があります。

何もしてくれない塾もあれば、カリキュラムのズレを指摘し、「まず自分たちで勉強してください。わからないことがあったら質問にきてください」と言ってくれる塾もあります。

中小塾だと「うちは大手塾からの転塾は大歓迎で、万全のフォロー体制です」とPRしているところもあり、講師がマンツーマンで特別授業をして、ズレを補ってくれることもあります。

転塾の際、どの程度、フォローしてくれるか、本書には各塾に質問して回答を載せていますので参考にしていただければ幸いです。

転塾が成功すれば受験はぐっと楽しくなる!

転塾してうまくいくか、転塾後にうまくカリキュラムのズレに対応できるか。

不安なことも多いと思いますが、転塾自体は決してネガティブなことではありません。多様な中学受験塾がしのぎを削る現在、よりお子さんや家庭に合った塾に転じることは当たり前のことです。

今は、過去の授業動画を視聴できることも多く、以前に比べたら転塾後のカリキュラムのズレのフォローも、ずっと楽になっています。

家庭やお子さんに合う塾を選び直すことに成功したら、受験が楽しいものになる可能性も大きいですよ。

たとえ実際に転塾しないとしても、転塾も視野に入れながらほかの塾の情報を知ることは、視野を広げるためにもおすすめです。

※記事の内容は執筆時点のものです

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杉浦由美子 専門家・プロ

ノンフィクションライター。会社員や専門学校講師などを経て、2005年からライターとして活動を開始。『AERA』『婦人公論』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『文春オンライン』、朝日新聞『論座』などで教育やジェンダーなどの記事を執筆する。『女子校力』(PHP新書)、『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)など著書多数。