環境を変えれば子どもも変わる! 「雰囲気に流されて」勉強してしまう状況をつくるには?―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
サッカーワールドカップも終わりましたね。
史上最高のサッカー選手と言われるリオネル・メッシが、唯一獲得したことがなかったのが、このサッカーワールドカップの優勝でした。
年齢的に最後となる今大会でそのメッシ率いるアルゼンチンが優勝し、メッシが大会MVPを獲得。
できすぎな有終の美だったのではないかと思います。
さて、そんな出だしからスタートした今回の記事ですが、実は私はサッカーにはあまり興味がありません。
それなのになんとなくニュースに上がってくるから記事を読んでしまったり、「中継中」という表示に釣られてABEMAのサイトに飛んで視聴してしまったりしました。
これは生徒たちも同じだったようで、小6の受験直前期の子どもたちも数名、ワールドカップを見ていて夜更かしをしたとか、勉強がはかどらなかったとか言っていました。
サッカー少年で、ワールドカップを楽しみにしていたならまだしも、野球少年で知っているサッカー選手の名前もそれほど多くない子たちですら、そんな感じです。
「なんで中継を見たの?」と聞いたところ、「親が見ていたから」とのこと。
人間とはなんと流されやすいものなのでしょうか。
そこで、今回の記事では、「子どもが勉強するようになる環境づくり」についてお話をしようと思います。
Contents
周囲の環境が人の行動をうながす
多くの人は自分の意思で自分の行動を決めているように思っていますが、それは間違っています。
実は、人間は環境や雰囲気に流されて行動を選択しています。
ですから、環境を変えれば、人の行動は勝手に変わっていきます。
有名なのは、ニューヨークの治安を大きく改善したジュリアーノ市長の事例です。
彼はニューヨークの街で割れた窓ガラスを修繕し、地下鉄の落書きをきれいに消しました。
荒れた雰囲気だった街は綺麗になり、そこで発生する犯罪が大きく減少しました。
「割れた窓ガラス」や「地下鉄の落書き」という環境が、人々を犯罪という望ましくない行動に駆り立てていたのです。
こうした「環境によって人の行動が変わること」は心理学の実験でも確認されていて、実験のためにわざと「放置自転車」を設置しておくと、その周辺ではごみのポイ捨てをする人や信号無視をする人が増えたそうです。
おもしろいものですよね。
子どものやる気を引き出す環境づくりに必要な3つの要素
ということは、子どもたちの行動を変えたいと思ったら、「子どもにお説教をしてやる気を出させる」よりも、「子どもがやる気になる環境を整える」方が、簡単だし効果的だということです。
子どもを観察しながら、勉強に限らずさまざまな物事に対して、この子がやる気になるのはどんな状況なのか?を分析してみましょう。
そのときの視点として、「周りの人」「周りのもの」といった要素を考えてみると、やる気になる状況が掴みやすくなると思います。
1. 身近な家族の姿勢・かかわり方を再チェック
まずは「周りの人」について。
塾ではやる気になるけれど、家だとやる気にならないという子は多いですが、その理由は「周りの人」であるケースが多いです。
いっしょに勉強する友達や勉強を見てくれる先生がいるとやる気になるけれど、そうした人たちと離れたら、やる気を失ってしまう。
習いごとでも同じように、チームメイトやコーチと一緒に練習をするときには頑張るけれど、ひとりで家で自主練習はなかなかできない。
そういうタイプの子は、親が一緒に勉強をしたり、親が勉強を見てあげたりすると、頑張りがまったく変わってくることがあります。
実際、家でもよく勉強を頑張っている子の中には、親御さんが一緒になって算数の問題にチャレンジしているというケースが、ときどきあります。
親御さんが資格の勉強をする傍らで、一緒に勉強をしているという子もいました。
親が何をしているかは、子どもの行動に対して大きな影響を与えるのですね。
兄弟がいる場合にも、年上の兄弟がいて一緒に勉強をしているという子は家でも勉強しやすい一方で、年下の兄弟がいて下の子は遊んでいるという場合には、家では勉強しにくいようです。
これもまた、わかりやすい話ですね。
あなたのご家庭では、お子さんの周りでほかの家族は何をしていますか?
お子さんが勉強したくなるように、変えられることは何があるでしょうか?
2. 家の中の学習空間を勉強モードに
次に「周りのもの」について。
割れた窓ガラスがあると犯罪が増えるのと同じように、ゲーム機があると遊ぶ時間が増えるのは、想像しやすいのではないかと思います。
リビングの一番良い位置にリラックスできるソファーがあり、そこに寝そべるとちょうど見やすい位置にテレビが置かれていたりしたら、当然、子どもはそこでテレビを見る時間が長くなるでしょう。
そうしたリビングは、子どもの勉強という視点から見れば「窓ガラスが割れているリビング」です。勉強以外の行動をとりやすい環境になっているのです。
それとは逆に、成績がいい子のご家庭は、リビングに勉強机があり、勉強道具が整頓されていて、勉強しやすい環境が整っている傾向があるそうです。これは、以前、家庭教師をしている友人が言っていたことです。
もちろん、子どもの勉強する場所がリビングではなく、子ども部屋というご家庭もあるでしょう。
そうした場合には、リビングはリラックス空間でもいいですが、代わりに、子ども部屋が引き締まる空間、勉強に集中しやすい空間になっている必要があります。
あなたのご家庭では、お子さんが過ごす空間は、何がしやすい環境になっていますか?
お子さんが勉強したくなるように、変えられることは何があるでしょうか?
3. 塾や学校。家庭外の環境との役割分担もあり
ここまではご家庭の中での環境づくりについてお話ししてきましたが、子どもにとっての環境は、家庭だけではありません。学校や塾や習いごとなども、子どものための環境のひとつです。
リラックス空間と頑張る空間を、家庭と塾で分けるのも、悪いことではありません。
塾の自習室に入り浸って勉強して、家ではまったく勉強しない優秀生もいます。
お子さんの周囲の環境をトータルで考えたときに、どこかで頑張れる環境があればそれでいいのです。
年末年始の特別講座なども、家庭と塾の役割分担の1つの例ですね。
親にとっても他の兄弟にとっても、年末年始は仕事・学校が休みになり、ホッと一息くつろげる時期になります。
そうして家族がリラックスして過ごす家の中で、受験生の子どもが1人だけ勉強をするというのはとても難しいものです。
しかし、塾でみんなが頑張っていると、一緒に頑張るのはそれほど難しいことではありません。
伸学会でも大晦日・お正月には毎年授業を実施していますが、生徒たちはよく集中して頑張っています。
それも、いやいややっている雰囲気ではなく、楽しそうに参加している子がほとんどです。
実は伸学会は創業した当時は年末年始の特別講座は設けていませんでした。
年末年始は私が休みたかったからです。
しかし、小6の受験生のお母さんたちから、「父親・兄弟がダラダラ過ごす中でこの子が勉強するとは思えません。そして勉強しなかったら私が爆発します! 授業をしてください!」と突き上げにあい、泣く泣く特別講座を開講することになりました。
ただ、やってみたら生徒たちが喜んで参加してくれるので、私もこうした講座を企画するのが楽しくなりました。
今は開講して良かったと思っていて、自分自身でも「みんなと一緒なら頑張れる」を実感しています。
保護者さんたちから良いきっかけをもらい、私も家庭と塾で役割分担をすることの大切さ、そして頑張れる環境の大切さに気付くことができたということですね。
また、ご家庭の外の環境を変えることで、子どもの行動がガラリと変わるケースもあります。
以前、5年生から転塾してきたある生徒のお母さんから、「伸学会に入塾してからは、息子が自分で受験すると決めてスケジュール管理や勉強を自主的にするようになり、夫と『環境は大事だね』と息子の変化について話しています」とおっしゃっていただきました。
逆に、伸学会に合わずに他塾に転塾した子もいますが、転塾先でうまくいくようになることもあるでしょう。
家庭内の環境を振り返ってみて、いい環境を作れているように思えるのにうまくいっていないのであれば、家庭の外の環境について考えてみるとよいのではないでしょうか。
いっぽうで、何度も転塾してみたりと、外の環境を変えているのに子どもの行動が変わらないのであれば、「割れた窓ガラス」は塾ではなく家の中にあるのかもしれません。
その時は、家庭内の環境を見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
こうして考えていくと、子どもが勉強したくなる環境づくりというのも、さまざまな要素を考えなければいけないので難しく思えるかもしれません。
ですが、うまくいかない原因を「子どもにやる気がないから」とか、「この子がダメな子だから」とか考えるよりは、ずっと前向きな考え方だと私は思います。
試行錯誤しながら、あなたのお子さんに合ったよい環境を見つけていってくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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