中学受験ノウハウ 連載 書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く

数ヶ月の入塾待ち、入塾テスト5倍。知られざる人気の単科塾、国語塾・算数塾・実験教室も 書籍『やってはいけない塾選び』杉浦由美子さんに訊く#6

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中学受験のための塾というと、サピックスや四谷大塚、日能研といった大手塾のように、算国理社の四科目を教えるイメージがあります。しかし、国語塾や算数塾など、一教科だけを独自のメソッドで指導する塾も昔から存在しています。

なかには、生徒が殺到し、なかなか入塾できないところも。それでいて、校舎は少なく、派手に宣伝もしないから、ベールに覆われた存在である単科塾。

書籍『中学受験 やってはいけない塾選び』には、人気の単科塾がいくつも登場し、丁寧にその特徴や授業の様子が描かれています。

フォトン算数クラブのように、今回はじめて取材に応じたという塾も。

著者でノンフィクションライターの杉浦由美子さんに、単科塾について訊いてみました。

書籍『中学受験 やってはいけない塾選び』

科目で違う? 中学受験における単科塾に通う目的

――中学受験を目指す子どもは単科塾にどのような目的で通うのでしょうか? 四教科型の塾に通いながら、さらに単科塾に通う生徒が少なくないとのこと。時間的にも費用的にも大変そうにみえるのですが……。

単科塾には、苦手な科目を克服するために、もしくは、得意な科目をさらに強化するために、通います。科目によって、ある程度、傾向があります。

読解が苦手な子たちが国語塾に駆け込んでくる

国語塾は、国語が不得意な子が駆け込む先になっています。

今、子どもが漫画すら読まなくなっているので、読解力が伸びづらく、国語に苦戦するケースは多いです。

読解力を鍛えるためには、「なぜ文章の内容を理解できないのか」をきめ細かく分析する必要があります。そうなると、国語塾はマンツーマンでの指導が主流になり、結果、授業料は高くなります。それでも、今回取材した直井メソッド国語専門塾は、入塾は常に数ヶ月待ちです。

算数好きな生徒たちが集まってくるのが算数塾

いっぽう、算数塾は、算数が得意な子が集まる場所であることが多いですね。

中学受験は算数で差がつくので、算数が得意な子はさらに磨きをかけます。

関西の算数塾は面倒見がいいので、「大手塾のフォローとして、個別指導か算数塾か」という選択になります。算数が得意な子は算数塾を選ぶことも多いようです。

灘中志望の受験生が、「こんなに算数ができるなら、もっとハイレベルな授業を受けた方がいいよ。算数塾が合うんじゃないか」と勧められて入塾するのが、兵庫と大阪にあるさんすうLAB.です。大手塾よりも高度な授業をし、合格発表までサポートをしてくれます。

関東ですと、単科塾ではありませんが、算数教育に長けるエルカミノにも算数が得意な生徒が集まっています。筑駒算数コースの授業を見学しましたが、ほかの大手塾に通う算数の猛者たちも参加していて、楽しそうに難問を解いていました。

その中で趣向が違うのが、フォトン算数クラブです。「特別に算数が得意ではない普通の生徒」のためという元々のコンセプトが興味深かったです。今、入塾のハードルが最も高い塾のひとつがフォトン算数クラブですが、その人気の理由も本書では詳しく言及しています。

理科の実験教室には入試トレンド対応に加え体験としての価値も

――最近は、理科の実験教室も単科塾として人気があるように感じます。これは、どういった背景があるのでしょう?

まず、中学受験の理科の入試問題の中で、実験に関する問題が増えてきていることがあります。

座学で理科の実験について勉強しても、結局は暗記になってしまいます。暗記ってすぐ忘れちゃいますよね。

でも、実際に実験をやれば、目で見て、手で触れるので、体験として記憶に残ります。

実験教室を取材していると、先生の説明を聞いているときは眠そうにしていた子が、血液が酸素に触れ、あざやかな色に変化すると、本当に目をキラキラとさせるんですよ。その子は「血液は酸素に触れると色が変わる」ということを暗記ではなく、目で見て知るから、まず忘れないでしょう。

今は、本格的な理科の実験ができない小学校も増えていますから、実験教室に通うのは、中学受験を越えた体験を得る機会にもなります。

ただ、4年生以降だとなかなか時間がなくて、実験教室まで手が回らないケースもあります。中学受験を考えるなら、実験教室には低学年のうちから通うのもいいと思います。

単科塾こそ低学年から通うメリットがある

――今、実験教室への通塾をスタートする時期のお話が出ましたね。単科塾全般としては、いつごろから通うといいのでしょうか。フォトン算数クラブは、小2からのスタートですね。

算数塾で早くから図形や立方体に触れておくと中学受験に有利

低学年のうちから、なにかしら算数の勉強をさせるご家庭は多いですね。

公文式やそろばんに通うお子さんが多いですが、ああいった教室は図形や立方体をやりません。中学受験を意識するなら、算数の単科塾で図形や立方体の問題に触れておくといいでしょう。

国語塾で読解を娯楽にすれば中学受験そのものが楽しくなる

国語塾も同じです。

低学年のうちに「読解力が足りないかもしれない」と感じたら、早めに通塾し、読解力をつければ、一人で本が読めるようになって、読書は娯楽となります。

国語が得意な子は、塾のテキストの文章も「娯楽として読む」ことができます。だから、講師に「この文章、続きが読みたい」ということもあります。そうなれば、中学受験の勉強も楽しいものになります。

単科塾は教養や素養が身につく「習い事」でもある

学年が上がってきて、中学受験が近づくと、一教科だけにじっくりと時間を割くことは難しくなることが一般的です。

中学受験を目指すことがきっかけであったとしても、単科塾は、教養や素養も身につけられる「習いごと」として、低学年期から利用するのもいいと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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杉浦由美子 専門家・プロ

ノンフィクションライター。会社員や専門学校講師などを経て、2005年からライターとして活動を開始。『AERA』『婦人公論』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『文春オンライン』、朝日新聞『論座』などで教育やジェンダーなどの記事を執筆する。『女子校力』(PHP新書)、『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)など著書多数。