中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

子どもの脳を働かせるコツ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年5月22日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

あなたはお子さんにどんな風に育ってほしいですか?

賢い子に育ってほしい。
優しい子に育ってほしい。
社会の中で活躍していってほしい。

いろいろな願いがあると思います。

そうした願いを叶えるためには、子どもの脳を育てていく必要があります。
論理的な思考力も、他者に対しての共感力も、社会に貢献しようという意欲も、全て脳の働きだからです。

でも、脳を育てると言われても、何をしたら良いのかわかりにくいですよね。
そこで、今回の記事では、子どもの脳の成長を加速させる秘けつについてお話しします。
ぜひ最後まで読んで活用してください。

私たちの中にいる2人の自分

私たちの中には、相反する2つの自分がいます。
一方は原始的な本能で動く自分、もう一方は理性的な思考で動く自分です。
本能は直感や感情と言い換えることもできます。

原始的な本能を司る脳を、私たち伸学会では「1階の脳」と呼んでいます。
それに対して、理性的な思考を司る脳を「2階の脳」と呼んでいます。

「自動的プロセス」と「統制的プロセス」、「システム1」と「システム2」など、書籍や研究者によって呼び方は異なりますし、脳の構造を「は虫類の脳」「ほ乳類の脳」「人類の脳」と3つに分けて説明している本もあったりします。
しかし基本的な考え方はだいたい同じです。
本能で衝動的に行動する自分と、理性で冷静に行動する自分が、私たちの中にはいるのです。

1階の脳の育て方は?

「学習」はその多くが1階の脳によって行われています。

1階の脳の働きは、心臓を動かしたり、汗をかいたり、食べたものを消化するために内臓を動かしたりといった、自動的なものが多くを占めます。

「記憶」もまた自動的な働きで、思い通りに学んだことを覚えておくことはできません。せっかく勉強したことを覚えておきたいと思っていても、勝手に忘れてしまいます。

また、忘れたいと思うトラウマも、勝手に思い出されてつらい気持ちになったりもします。

コントロールがとても難しいのです。

しっかりと記憶力を働かせるためには、記憶のメカニズムに合わせて、適切なやり方で学習することが大切です。

例えば、「何度も使う知識」は、「覚えておかなければいけない」と脳は判断して、忘れずに保存しておいてくれるようになります。適切なタイミングで解き直しをすることはとても効果的な学習です。

▼子どもが自分から解き直しをやろうと思うようになる効果的なサポートはこちら

そして、記憶力も能力の1つなので、使うことで磨かれます。

実際に、記憶を司る脳の海馬という部分は、よく使うことで発達して大きくなることが知られています。

また、前回の記事でお伝えしたマインドフルネス瞑想を継続的に行うことでも、海馬は発達して大きくなるそうです。

記憶力がアップしたら嬉しいですよね。

ぜひマインドフルネス瞑想を習慣にしていきましょう。

2階の脳の育て方は?

「もしこれをしたら、結果がこうなる」といった未来への見通しや、「あのときこうだったから今こうなっている」という過去の振り返りといった論理的な思考は2階の脳が担当しています。

他者への共感力や優しさ、想像力も2階の脳の働きです。

目の前の欲求を我慢し、理想の未来を手に入れるために必要な行動をとる自己コントロール力も2階の脳の働きです。

更に、自己を客観視する能力も2階の脳の働きです。

「人間力」と言われるようなものは、その多くが2階の脳の働きだとイメージしていただくと良いと思います。

模試などでの成功や失敗を分析して改善策を考える力や、現時点での自分の状況を客観的に分析して今後の計画を立てる力も、2階の脳を鍛えることによって身についていくのです。

2階の脳を育てる方法も、考え方としては、1階の脳を育てる場合と同じです。

人間の能力は、筋肉であれ脳であれ、負荷をかけて使うことでパワーアップします。

では、具体的にどうやったら、2階の脳を使うことができるでしょう。

子どもの独り言を遮らないで

まずは、言葉をしっかりと使わせることです。

2階の脳が司る理性的・論理的思考力は、人間のコミュニケーション能力の進化から派生したと言われています。

言葉を上手に使わせれば、子どもの2階の脳の成長を促すことができます。

「子どもが独り言を言うようになる」ことは、2階の脳の成長の第一歩です。

独り言を言う子どもは、思考を外に垂れ流してはいますが、考えるために自分に話しかけているのです。

子どもが考えを口に出しているときに、論理的思考力が成長しています。

子どもの発言を遮らずに、たくさん喋らせて考えさせましょう。

この子どもの独り言を利用した効果的な教育法が、「シンキング・アラウド法(思考発話法)」です。

問題を解くときなどに、子どもに考えていることをそのまま言葉にしてもらうことで、私たち大人はその子が何が分かっていて何が分かっていないのかを確認することができます。

そして、私たち大人が独り言を言いながら作業し、思考プロセスを見せてあげることで、お手本にさせることもできます。

また、独り言を言うことで、本人も自分の思考プロセスを確認できます。

うまく言葉にして説明できなかったら、自分がよくわかっていないのだということに気付くこともできます。

「考えるとは、言葉にすること」「わかっているとは、言葉で説明できること」とは、私たちが繰り返し生徒たちに言い聞かせていることです。

子どもの「話す」をサポートする

さらに、会話を通じて2階の脳を育てる方法も大切です。

問いを投げかけて、考えさせ、子どもに話をさせるほど、子どもの脳の成長を加速させてあげられます。

親子の会話において親の発言量と子どもの発言量を比べてみてください。

親の発言が多ければ多いほど、それは子どもの言葉を奪い、成長を妨げることになるので注意が必要です。

子どもが考えを言葉にするまでは時間がかかります。

じっくり待って、出てきた言葉に対してさらに質問を投げかけることで、子どもが考えて言葉を発するのを支えてあげましょう。

結果から原因を考えさせる

そして、何か良い結果・悪い結果があったときに、なぜそういう良い成果を出せたのか、なぜそういう失敗をしてしまったのか、原因を考えさせることも、とても効果的な2階の脳を使う訓練です。

ただし、悪い結果に対して原因を考えさせようとしても、子どもがイライラしてしまったり落ち込んでしまったりして、冷静に2階の脳を働かせられないことも多いです。

ですから、はじめは、良い結果があったときにその成功の秘訣を考えさせる事から習慣にしていくと良いでしょう。

本人が自分でうまく答えを見つけられない時には、問いを投げかけて考えさせてあげるのが効果的です。

例えば、「良い結果になったときと悪い結果になったときは、何が違うんだろう?」といった問いかけです。

マインドフルネス瞑想で大脳皮質を鍛える

さらに、2階の脳を育てるためにも、マインドフルネス瞑想は効果的です。

マインドフルネス瞑想を行うことで、大脳皮質が厚くなるそうです。

マインドフルネス瞑想は、脳の様々な部分で容積や密度に変化が起こることが報告されています。

脳が物理的・肉体的に鍛えられて変化するのです。

こんなに良い効果があるのですから、続けるしかないですね。

まとめ

以上、子どもの脳を働かせ、鍛えるコツでした。

1階の脳も2階の脳も、どちらも重要な役割を果たしています。

特に人間らしい能力を発揮し幸せな人生を送るためには、2階の脳の働きが重要です。

ぜひお子さんの脳を小さいうちから育てていってあげてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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