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資格・検定を利用して、はじめてのテストを経験しよう|低学年のための中学受験レッスン#9

専門家・プロ
2023年3月06日 宮本毅

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中学受験を目指す多くのお子さんは、いまや小学校低学年から塾通いを始めます。
進学塾では、低学年クラスでも1日2時間の時間割が一般的です。
しかし、そこはまだまだ小さな子ども。最初から集中力を絶やさずにずっと座っていられる子は少ないでしょう。

塾の場合、高学年の子も同じ机と椅子を使うので、まだ背丈が小さな子にとっては机の高さが合わないケースも多く、クッションや足置きなどを置いて対応している塾もあります。小学校低学年・中学年の子にとっては、塾に通うというだけでも大変なことのようです。

しかし、そうはいっても入試本番は、長時間座ってテストを受けなければなりません。
中には算数・国語が各60分、理科・社会が各40分の合計3時間以上なんて学校もあります。関西の私立中では、試験日が二日間にわたって設定されているところもあるほどで、12歳の子にとっては過酷すぎるテストに対応できるようにならなければなりません。
少しずつでも「座って試験を受ける」という体験をさせて、そうした環境に慣れさせておく必要がありそうです。

そこでおススメしたいのが「資格・検定」です。増進会ホールディングス(Z会グループ)がおこなった「小中高生の資格・検定取得に関する調査」[*1]によりますと、小学生のうち、約54%が何らかの資格・検定を持っているそうです。小学生の半数以上が何らかの「資格・検定」を持っているなんて、すごいことですね。

ここでは「受験してみるとよい資格・検定」について、3つ紹介したいと思います。

珠算能力検定:計算力を鍛えるにはそろばんが有効です

まずはなんと言っても、「珠算能力検定」です。
中学受験にもっとも直結する「資格・検定」といっても過言ではありません。

私の教え子に、小4で二段をとった子がいましたが、この子の暗算力はやはり半端なく高く、算数のテストなどで計算間違いをするということはまずありませんでした。
一般的には小6で1級(段ではなく級です)をとるくらいが平均的なようですので、小4で二段というのはちょっととびぬけている感じで、参考になりづらいかもしれません。私が小5で2級という一般的な少年でしたので私のお話をさせていただくと、やはり算数は大好きでした。

よく「算数の力と計算力は違う」といって、計算力を軽視する人がいますが、私はその見解には少し疑問を感じます。
たとえ深い思考力や算数的なひらめきがあったとしても、計算力がなければ計算に手こずってしまい、せっかくの思考の流れを阻害してしまいます。

よどみなく問題を解くためには、計算力は絶対に必要です。その力を幼少期から鍛えられるということで、珠算検定は大変有効な手段だと考えています。

漢検、日本語検定、ことわざ検定:語彙と漢字の知識は国語力アップに直結

塾講師を長くやっていると、昔と今の子ども達を取り巻く環境と能力の変化が肌で感じられることが多いです。
環境面だと、「昔に比べて勉強すべきことや覚えるべきことが格段に増えたな」「今の子は習い事の数が多すぎないかな」といった感じですね。

子ども達の能力の変化について特に顕著に感じるのは「国語力の低下」です。現代の小学生は、本当に、危機的なほどに、国語力が低下していると感じます。

「活字離れ」が引き起こす国語力の低下

国語力の低下といっても、では「国語の何が低下したのか」という話ですが、まずもっとも感じるのが「読解力の低下」です。

今の子ども達は本当に文章を読むことができなくなってしまいました。それも「長い文章」だけでなく「短い文章」も読めなくなってきており、たとえば算数に出てくる非常に短い問題文でさえも、理解することが難しい子が出てきてしまっています。

一方で、中学受験の国語の問題は年々長文化してきています。そればかりではありません。理科や社会のリード文(問題文の一番最初に書かれている説明文)も長文化してきており、もはや「国語ができない子は上位校には受からない」状況となりつつあります。

子ども達の国語力が低下しつつある主たる原因は、子ども達の「活字離れ」です。今の子はとにかく本や新聞を読まなくなりましたよね。

情報はインターネットからとってきてしまうため、情報ソースは文字情報から映像情報となっています。映像は一時に膨大な量の情報を取得できるので、ただ単に「情報をとる」という目的にはとても有効なのですが、これに慣れてしまうと、本当に文字情報を取れなくなってしまうのです。

そもそも文章を読む経験値が少ないので、そりゃあ国語ができない子が増えるよね、って話です。

日本語の力をはぐぐむために検定を活用しよう

では、どうやって文章を読む力を育てればよいのでしょう。

日本の教育における国語とは、いいかえれば「日本語」のことです。
私たちがかつて英語の勉強をしようと思ったとき、必死に勉強したことは何ですか?英単語を覚えようとしましたよね。

それと同じことを国語学習でもするべきなのです。「語彙力アップ」こそが文章読解の一丁目一番地です。

ぜひ「漢字検定」「日本語検定」「ことわざ検定」などを活用して、子ども達の「語彙力アップ」を目指してください。

ニュース時事能力検定:社会科学に強い子は将来社会に出たときにも活躍できる

次に紹介したいのは「ニュース時事能力検定 (N検)」です。

上の項目では子ども達の国語力が低下してきている、というお話をしましたが、昔に比べて今の子ども達の能力は何も「低下」ばかりしているわけではありません。
これも強く感じるのですが、今の子ども達は昔の子に比べ「社会科学、特に政治や経済への関心が高い」と感じます。とてもポジティブなことだと思います。

私の教え子たちに塾の授業の「算数・国語・理科・社会」の中で、どの授業が一番楽しかったかを尋ねると、多くの生徒が「社会」と答えます。
もちろん私が面白おかしく政治や経済の話をするので、楽しいと感じているのかもしれませんが、そこに興味・関心を抱いている子は以前に比べてずいぶん増えたなーと感じます。

インターネットの功罪の「功」の部分ともいえるでしょう。政治や経済の話が、子ども達にとって身近なものとなってきたということだと思います。

中学受験の世界でも、たとえば「老人の孤独死を防ぐにはどのような方法が考えられるか」とか「年代別投票率推移のグラフを見て、問題点とその解決策を答えよ」といった、社会人向けの入社試験といわれても疑わないような問題が当たり前のように出題されています。
政治や社会・経済に無関心では、中学受験は乗り切れない時代となっているのです。

「ニュース時事能力検定 (N検)」の4・5級は小学生向けの試験となっており、そうした社会科学へのとっかかりとして、また子どもたちが社会への関心を持つきっかけとして活用できるでしょう。もちろん中学入試の時事問題対策としても有効です。

小学生の時にはあまり手を出さない方がよさそうな検定とは?

では、中学受験を目指す子があまり手を出さない方がよさそうな検定ってあるんでしょうか。

中学受験のため、という観点からすると、私は「理科検定」などの「自然科学系」の検定には、どちらかというと後ろ向きな考えです。最近人気の理科実験教室や探求教室では、自然科学系の検定の受験が推奨されることも多いため、「えっ?」とお思いの保護者の方もおいでかもしれません。

なぜかというと、中学受験の理科って「ものすごく難しい」のです。本当にビックリするくらい難しくて、大人でも解けないような問題がたくさん出題されます。

もちろん算数なども難しいのですが、算数の場合は中学や高校で「習わない」じゃないですか。中学や高校で習うのは「数学」で、「算数」とは違うものです。だから、中学受験算数は多くの大人にとって、難しいというよりも「習ってないから解けない」ものなんです。

しかし、それとは違って、中学受験理科の問題は、「天体」然り、「電気」然り、中学や高校でも習うものがほとんど。にも関わらず、問われる内容が難しすぎて、大人でも解けないわけです。

一方、理科実験教室や探究教室の場合は「楽しさ」をメインにしますよね。子ども達に「楽しかったー」「また来てみたい」と思わせリピーターにすることで商売が成り立ちますので、「楽しさ」に特化した商品展開となります。「自然科学系」検定の受験も、その延長にあるのです。

もちろんそれはそれでありなのですが、そうした体験をしてきた子たちにとって中学受験塾の理科の授業は「楽しくない」わけです。なぜって「難しすぎるから」。落差が大きすぎるために、理科実験教室や探究教室出身者の多くは中学受験塾の理科で大きな挫折を味わってしまいます。それならば最初から「理科は楽しいもの」という先入観を持たない方がいいわけです。

また、中学受験理科が知識偏重型から思考力偏重型へと変質していることも、「資格・検定」をお勧めしない理由です。

まとめ

「資格・検定」もいろいろなものがありますので、ぜひ調べてみてくださいね。ただ、あれもこれもと手を出すよりは、子どもの興味・関心をよく見極めながら、必要なものだけチャレンジするのがよいと思います。

参考文献

[※1] Z-KAIグループ「【栄光】小中高生の資格・検定取得に関する調査を実施しました」

※記事の内容は執筆時点のものです

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