国語の情景描写を例文でわかりやすく解説! 登場人物の気持ちや物語の展開を推測するコツ

2023年3月08日 みみずく

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中学受験国語では、説明文や論説文などの説明的文章と並んで物語文が頻出です。しかし、物語文が苦手な受験生が少なくありません。特に、情景描写の解釈は「わからない」となりがちです。このような苦手意識のある受験生をサポートするために保護者ができることを紹介します。

情景描写が物語文で果たす役割

情景描写は物語文で重要な役割を果たします。その役割について解説します。

情景描写とは何か?

物語文の中で風景について描いている文章が情景描写です。「暗雲が太陽を覆い隠した。」と書かれていれば、雨が降る前兆であるとわかります。主人公が急な雨でずぶ濡れになる場面の前に、空の様子が描かれることがあります。しかし、こういった単純な情景描写は、国語の設問にはなりません。

情景描写が重要な理由

物語文で重要なのは、登場人物の心情を印象付けたり、その後の展開を暗示したりする情景描写です。中学受験国語の物語文では、こうした情景描写を解釈させる問題がしばしば出題されます。特に御三家の麻布中はかなり秀逸な問題を出してくることで有名です。

実際に「暗雲が太陽を覆い隠した。」という情景描写を例文に使い、解釈してみましょう。

【例文1】太郎はビルとビルの間を歩き続けていた。どの方向に進んでも、見たことのない光景が視界に飛び込んでくる。異世界に迷い込んだような錯覚に陥り、どんどん足が重くなっていく。

暗雲が太陽を覆い隠した。

【例文1】には、太郎が道に迷って歩き回っている様子が描かれています。「暗雲が太陽を覆い隠した。」は、「どんどん足が重くなっていった。」という比喩(たとえ)とあわせて考えると、太郎の不安や恐怖の気持ちを表していると解釈できます。

【例文2】花子は病院へ急ぐ。

――最後の最後くらいはお母さんと一緒にいたい。お母さんの手を握っていたい。それがせめてもの親孝行だから……

暗雲が太陽を覆い隠した。

【例文2】には、母が入院する病院へ向かう花子の様子が描かれています。「暗雲が太陽を覆い隠した。」は、直前の「最後の最後くらいは~」という花子の思いをふまえると、花子が母の死に立ち会えないことを暗示していると解釈できます。

情景描写が苦手な子どもへの働きかけ

情景描写が苦手な子どもに「もっと問題を解きなさい」「読書をしなさい」などの声がけをするだけでは、あまり効果は期待できません。より具体的な働きかけが大切です。

物語文の情景描写について話し合う

保護者は、子どもと一緒に物語文を読んで、情景描写を見つけたら、それにどのような効果があるのかを子どもと話し合うとよいでしょう。設問になっていない情景描写もすべて解釈することが大切です。

【例文3】隆と由美は屋上から夜の街を見下ろした。

宝石を散りばめたような光の数々。建物の窓から漏れる明かり、車のライト、街灯、信号、ネオン看板……。その一つ一つが、人々の生活を支えるため、懸命に輝いている。

昼間とは違った街の表情を眺める男女は、いつの間にか手を握り合っていた。

【例文3】は本文の最後の場面だとしましょう。保護者は子どもに「この後、隆と由美はどうなると思う? 『宝石を~輝いている。』という情景描写をふまえて考えよう」と問いかけます。

子どもは「2人で屋上から飛び降りる」というとんでもないことを言うかもしれません。しかし、保護者はそれを否定せず、「宝石を散りばめたような」という比喩や、「人々の~輝いている」という表現に着目させ、「情景描写はプラスかな? マイナスかな?」と聞いてみましょう。子どもが「プラス」と答えたなら、保護者は「それなら、隆と由美はどんな気持ち?」「2人の未来は明るいのかな? 暗いのかな?」などと誘導しながら、子どもに改めて考え直させます。

このような親子の話し合いが子どもの思考を促し、物語文を適切に読解する力を育むきっかけになります。ちなみに、【例文3】は、隆と由美がこれからこの街で一緒に暮らしていくことを決意する場面として書きました。

作文で情景描写を使うように促す

保護者は子どもに、学校の作文などで情景描写を使うように促しましょう。情景描写も実際に使っていく中で慣れるからです。

たとえば、子どもが作文で「徒競走で一位になってうれしかったです。」と書いたとします。これに対して保護者は「うれしかった気持ちを太陽で表現するとどうなるかな?」と聞いてみます。子どもが次のように書いたら褒めてあげましょう。

【例文4】徒競走で一位になった。太陽がいつもより明るく輝いていた。

【例文4】のように、「うれしい」「悲しい」などの直接的な気持ちを情景描写で表現できるようになれば、作文の出来も良くなります

情景描写に慣れれば物語文が得意になる

情景描写に慣れると、登場人物の気持ちやその後の展開を適切に推測できるようになって、物語文が得意になります。保護者にとっても情景描写の解釈は意外と難しいもの。「こう」と安易に決めつけるのではなく、子どもと一緒に話し合うなかで、新しい発見を見つけていってください。

※記事の内容は執筆時点のものです

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この記事の著者

家庭教師/ライター。墨田区・台東区を拠点に活動している個人家庭教師。家庭教師を本業としつつ、ライターとしても活動しています。モットーは「好きな人を応援する」。小学生の指導科目は国語・算数(数学)・英語・理科・社会・作文など。「楽しく学びながら、中学の準備をする」ことを目標に指導をおこなっています。

Webサイト:みみずく戦略室 墨田区・台東区のプロ家庭教師&ライター
https://mimizuku-edu.com/