【理科】示相化石と示準化石は「3つの出題レベル」ごとに攻略しよう
理科では出題頻度が低めの「地層・化石」の分野。基本をしっかり押さえていれば着実に得点できますが、いざ出題されると失点してしまう子は多いようです。
入試本番でそんな悔しい思いをしないために、今回は「地層・化石」のなかでも対策がシンプルで良く、得点源にもなりやすい「示相化石と示準化石」についてわかりやすくまとめます。
3つの出題レベル
示相化石と示準化石について入試で問われるときは、おおよそ3つの出題レベルに分類されます。
レベル1:示相化石と示準化石の意味を問う問題
まずは地層や化石の基本知識を問う問題。
基本レベルなのでとても簡単ですが、実際の入試問題でも出題されています。
化石とは、地面のなかで固まった動物や植物のこと。
川や海、湖の底に動物や植物が沈み、その上に泥が積み重なることによって長い年月をかけて固まったものです。
示相化石で「環境」がわかる
化石を調べると、その化石が見つかった場所が「かつてどんな場所だったか」を推定できます。
たとえばサンゴと聞いて、「暖かい南国の海」がパッと頭に浮かんだ子も多いのではないでしょうか?
つまりサンゴの化石が見つかった場所は、かつては暖かい海であったと推定できますね。
このように、かつての「環境」がわかる化石を示相化石といいます。
示準化石で「年代」がわかる
化石を調べると、その化石が見つかった地層が「いつの年代だったか」を推定することもできます。
たとえば、アンモナイト。
巻き貝のような見た目の生き物で、いまからおよそ3.5億年前に地球上の広い範囲に生息していました。つまりアンモナイトの化石が見つかった地層は、3.5億年前に積み重なったことが推定できますね。
このように、地層ができた「年代」がわかる化石を示準化石といいます。
“特殊な条件”がないと化石にならない
ちなみに、地球の地面の下はたくさんの化石で埋め尽くされているのでは? と思ってしまうかもしれませんが、実はそうではありません。
たとえば死んでしまった動物が、大きな川や、海の底に沈んだとき。
この場合は、
・水面に浮かび上がってくる前に、その上に泥や砂が積み重なった
・ほかの動物や、水の流れによってその骨がバラバラにならずに済んだ
といったことを経たあと、骨になった部分が長い年月をかけて「石の成分(※)」に置き換えられることで、ようやく化石になります。
つまり、かなり“特殊な条件”が重ならないと化石にならないのです。
植物の場合には、沈んだところがたまたま低酸素の場所で、腐りにくい環境だったときに、長い年月をかけて「石の成分」に置き換わることで化石になります。
つまり植物も、特殊な条件が積み重ならないと化石になりません。特に“死んだ植物”はすぐに腐ってしまうので、動物よりも化石になりにくいことが知られています。
※化石は、動物の骨や植物が「石の成分」に置き換わってできたもの。動物の骨や植物そのものではなく、化石の成分は“石”なんですね
レベル2:環境や年代と紐づける問題
レベル2は少し難易度が上がり、具体的な化石の名称をもとに環境や年代を推定する問題が出題されます。示相化石や示準化石の出題形式では特にメジャーな出題のされ方です。
攻略には暗記が必要ですが、示相化石は4種類、示準化石は6種類(3種類×2)を押さえていれば大丈夫。それぞれの化石について、その環境や年代をパッと思い出せるようにしておけばOKです。
示相化石……4つの“代表選手”を押さえよう
まずは示相化石です。
4つの“代表選手”と共に、それぞれが生息していたと推定される環境を押さえましょう。
※淡水:塩分をほぼ含まない水(川や淡水湖の水など)
※汽水:海水と淡水が混ざった水(汽水湖の水など)
示準化石……「3時代×2化石」で押さえよう
つぎは示準化石です。
3つの時代ごとに、それぞれ2種類の化石を押さえましょう。
※年代はおおよその目安です
レベル3:高度な思考力が問われる問題
最後のレベルは、高度な思考問題です。
地層や化石の基本知識を駆使して考えさせる問題が出題され、難易度の高い上位校で次のような出題が目立ちます。
- 「示準化石の条件」を考えさせる問題
- 「特殊な状況の化石」について考えさせる問題
「示準化石の条件」を考えさせる問題
中学入試では、示準化石として役に立つ化石の条件を考えさせる問題が出題されたことがあります。
まずは、どんな化石でも示準化石となり得るのか考えてみましょう。
たとえば、長い期間に渡ってずっと生きている動物の化石。これは年代を絞り込めないので、示準化石としてはあまり役に立ちそうにありませんね。
示準化石として役に立つ条件は、主に以下のとおりです。
- 地球上の広い範囲に生息していること
- 生息していた期間が短いこと
では、下のイラストの「青化石」「緑化石」「赤化石」のなかで、示準化石の条件にあてはまる化石はどれでしょうか?
先ほどもお伝えしましたが、示準化石として役に立つ条件は主に以下のふたつです。
- 地球上の広い範囲で生息していること
- 生息していた期間が短いこと
では青化石・緑化石・赤化石について、それぞれの条件に当てはまるかどうか考えてみましょう。
まず「広い範囲で生息している」のは、4つの地層すべてに登場する青化石と緑化石ですね。この時点で、赤化石は示準化石としては役に立ちません。
次に「生息していた期間が短い」のは赤化石と青化石です。緑化石は、古い地層から新しい地層までタテに長く存在しているので「生息期間が長い」と考えられます。
以上のことから、示準化石として役に立つ条件を両方とも満たしているのは青化石です。
実際の入試では、示準化石として役に立つ化石の条件が問題文の中に書かれていることも多いです。ここで問われているのは知識ではなく、あくまで「思考力」だからですね。
「特殊な状況の化石」について考えさせる問題
たとえば、アサリの化石が大量に見つかったとします。
アサリは示相化石なので、かつての環境が推定できますが、そこは「かつて“浅い海”だった」と必ず言えるでしょうか?
アサリの二枚貝がバラバラだったらどうでしょう。
この場合、死んだあとに水の流れなどによって運ばれた可能性もあります。そのため、この化石は示相化石として役に立つとは限らないのです。
一方、二枚貝が合わさった状態で化石になっている場合は、その場所で死んでから運ばれていないと考えられるので、示相化石として役に立ちそうですね。
実際の入試では、いろいろな考え方が書かれた選択肢が準備されており、そのなかで最も論理的に説明できているものを選ぶ、という問題が出題されたことも。
これも知識として知っているかを問う問題ではなく、思考力を試す問題であったといえるでしょう。
【補足】時事問題としての出題
これまで出題頻度が低めだった地層や化石の問題が、2018年から2022年にかけて多くの学校で出題されました。
その理由は、地層や化石が注目される出来事が起きたから。
そう、2020年に、ある地質時代が「チバニアン」と命名されたことですね。
チバニアン
チバニアンとは、千葉県市原市の地層が由来になって命名された「地質時代の区分」のこと。日本の地層が由来となって地質時代の名前がつけられることは日本初だったこともあり、大きく報じられました。
当然のごとく、中学入試でもこのニュースと関連させるかたちで、これまであまり出題されていなかった示相化石や示準化石の問題が多くの学校で出題されました。
ちなみにその年の時事問題に呼応して、単元別の出題頻度が大きく変動することは中学入試では珍しくありません。
時事問題を意識すれば、本番の入試を有利に運べることもありますよ。
まとめ
「地層と化石」の分野のなかから、今回は化石について、3つの出題レベルごとに解説してきました。
レベル1:示相化石と示準化石の意味を問う問題
示相化石……環境がわかる
示準化石……年代がわかる
レベル2:環境や年代と紐づける問題
示相化石……4種類
示準化石……6種類(3時代×2種類)
レベル3:高度な思考力を問う問題
まずは着実に得点できるように、レベル1とレベル2の知識は最低限身につけておきましょう。難関校を目指す場合には、レベル3まで押さえておくと安心ですね。
今回紹介した内容をしっかり踏まえ、入試に対応できる力をつけていきましょう!
※記事の内容は執筆時点のものです
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