中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

適性検査型の模試を受けるベストタイミングはいつ?|公立中高一貫校合格への道#3

2023年5月17日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

今回は、公立中高一貫校の受検を検討している保護者の方に向けて、適性検査型模試を取り入れるベストなタイミングについてお伝えしていこうと思います。

「適性検査型の模試をそろそろ受けようかな?」「通っている塾の模試だけでいいのかな?」とお考えなのであれば、受検学年の6月頃に開催される模試は、最も良い選択肢といえます。

適性検査型の場合、模擬試験はちょうど本番1年前を迎える2月ごろ、それから夏休み前の6月ごろ、9月ごろ、11月ごろ、このような時期にこぞって開催されます。

5年生の2月ごろ、つまり一つ上の先輩受検生が本番を迎える時期から次の年度の模試は始まりますが、模擬試験の受検者数が増えてくるのは大体6月の模試からです。

また、内容も受検学年として本格化してくる時期でもあります。

なので、現状の立ち位置も、これから補強すべき弱点も、より正確に把握できるのが6月頃に開催される模試なのです。

とはいえ、まだまだこの時期、模試を受けさせるのもすんなりいかないことも多々ありますよね。ということでまずは、6月頃に開催される模試を受ける目的や狙い、メリットをお伝えしていこうかと思います。

6月に適性検査型の模試を受ける目的【その1】

模試を受ける狙いの1つは、何といっても、モチベーションを維持する効果が非常に高いことです。

6月は、ただでさえやる気が出づらく、新学期の疲れやゴールデンウィーク明けのなんとなくの不調感を持ち越し、お住まいのエリアによっては運動会や移動教室が終わったばかりで燃え尽きてしまい、勉強に対しても前向きな気持ちになれない子が非常に多くなる時期です。

梅雨時期は、大人でも同じような状態になりやすいと思いますが、中学受験生にとっては、この後いよいよ「天王山」と呼ばれる夏がやってくるので立ち止まってはいられません。

6月の停滞をいかに防ぐかによって、夏の加速度が変わると言っても過言ではありません。

模試を受けるのは、緊張もしますし、場合によっては悔しい思いをすることも当然考えられますが、それも含めて、順位がつくという経験は気持ちを切り替え、奮起するきっかけになります。

ドキドキしながら入った会場で、大勢のライバルの存在を肌で感じることもそうですし、検査開始前の独特の空気感や、見知らぬ人たちの中で受ける緊張感など、受検生であることを改めて実感するきっかけとなります。

ただなんとなく夏を迎えてしまうよりも、6月の模試でいまの成績と向き合った方が、これから迎える貴重な夏休みに、何を優先して取り組むのか考えられることでしょう。

公立中高一貫校受検は6年生の1年間が勝負ですから、密度の濃い対策を夏に実施するためにも、夏前には模擬試験を受けておきたいところです。

6月は模試の難易度も上がり平均点がぐっと下がる時期なので、初めて挫折を味わい大泣きする子もいます。悔し泣きする我が子を見るのは親として本当に居ても立っても居られない気持ちになりますが、その悔しさを知っている子の夏の頑張りは、見事です。「あの涙があったからこそ」と思えるときが必ず来ます。

6月に適性検査型の模試を受ける目的【その2】

2つ目の目的は、早い段階で自分を客観視できるようにするためです。

まだ先の話ではありますが、直前期になってくると、自分の実力を俯瞰して捉え、弱点と向き合い、得意を伸ばす……、そういった戦略を立てながらラストスパートをかけていくことになります。

この「自分を俯瞰できる力」は、合格者が必ず持っている能力だと私は思っています。

特に公立中高一貫校が行う適性検査の場合、暗記すれば点が取れるような問題ではありませんから、日々、自分の記述を精査し、答えが一つではない問題にもめげずに自主的に取り組み続ける力が必要です。

親から言われたからやる、塾の先生に怒られたくないからやる、といった、他者ありきの頑張りだけでは、あの高い倍率を突破する事は難しいです。

いまの実力を客観的に捉え、今後の方向性やペース配分を自分でも考えなければいけないのです。これは、自主自立を重んじる公立中高一貫校が生徒に求める素質でもあります。

模擬試験にチャレンジし、その上で、自分が感じた課題を言語化することが、客観的な自己分析のはじめの一歩となります。

一朝一夕でできることではないので、なるべく早い段階で模試を受け、そのたびに保護者の方と話し合いながら、感じた課題や弱点について親子で分析する機会を設けてください。

模試は、無限に受けられるわけではありません。秋以降にも模試のラッシュは来ますが、運動会や学校行事などと重複して受けることができないことも例年あります。

適性検査型の模擬試験は採点に時間がかかることもあり、ほとんどが12月で終わりを迎えます。1月に実施される模試がないわけではありませんが、結果が返ってくるのが本番直前になることもあり、模試の結果からトライ&エラーができるという意味では、年内に受けられる模試が最後になるでしょう。

そう考えても、6月から 12月までのこのわずか半年ほどしか、模擬試験を受けるチャンスはないのです。まだ余裕のある6月のうちに、1つでも受けておくことをおすすめします。

6月に適性検査型の模試を受ける目的【その3】

6月に模擬試験を受ける3つ目のねらいは、模試の特長を早期に把握することです。

適性検査型の模試は、模試を主催する塾や団体によって、形式や、成績表の作りが全くもって異なります。

男女別の順位が出るところもあれば、得点しかわからないものもあります。問題ごとの非常に細かい得点分布が出るも模試もあれば、そうでない模試もあります。

細かければいいというものではありませんし、模試によって合う・合わないがはっきりあります。成績表うんぬんではなく、同じ学校の子がたくさんいたからイヤだ、というケースもありました。

先ほども書いたように、これから先の時期に何度か模試のシーズンが訪れますが、模試同士の日程や学校行事の日程と被ることもあり、全てを受けられるわけではない以上、秋以降は最優先で受ける模試、見送る模試、の取捨選択を保護者の方は求められるようになります。

いよいよ受検勉強が本格化してきた時期に、どの模試を優先すべきなのかあわてずに済むよう、なるべく早い段階から予定が合う模試を幅広く受けておくことを勧めます。

受検者数が多い模試や、解説授業がわかりやすい模試、志望校の先生が登壇する保護者セミナーがセットになっている模試……など、主催している団体や塾ごとに模試の特長を把握しておくと良いですよ。

「模擬試験?絶対ヤダ!」という本人の抵抗にあった場合

受検学年になったら、なるべく早い時期に模擬試験を受けるべきだ、と保護者の方は感じていたとしても、この時期はまだ、模試を受けることに強い抵抗を感じる子も多いはずです。

例えば、「まだ作文の対策はしていないから」「まだ適性検査のことは、よくわからないから」など、様々な理由が出てくると思います。

塾に通っている場合は、塾が主催している模擬試験を今後受ける予定だから大丈夫、といった考え方もあるでしょう。

保護者の方も、そろそろ受けさせた方が良いのではと思いつつ、受けることで自信を喪失させてしまうのではと思うと決めきれなかったり、どこまで強く模試を受けるよう説得すべきか悩んだりすることもあると思います。

けれども、断言しますが、抵抗があるのは今の時期だけです。

必ず慣れますし、いよいよ受検本番に向けて熱意も高まってくると、模試の機会を逃さない方が自分のためになる事は、ちゃんとわかってくれます。

「仕上がっていないから」「まだ中途半端な分野があるから」「習っていない範囲から出るかも」という不安は、対策を始めたばかりの時期だけのものではありません。

一つ上の先輩方も、まったく同じ不安を抱えながら、本番、志望校の門をくぐってきたのです。

完璧な実力が身についた、という自信や、もう不安は無い!という境地になることは、これから先、訪れません。逆に、「点が取れないのでは……」「まだ仕上がっていないのでは……」といった不安があるからこそ、しんどくても「あと1問」と頑張る気力が湧いてきますし、油断せずコツコツ取り組むこともできるのです。

つまり、不安だからと自分の実力を知る機会を先送りするのではなく、「この不安は本番までずっと共存する相棒なのだ」と認めて、思い切って今の手持ちの力で勝負することが大切なのだとお伝えください。

特に6月が模試デビューになる子は大きな不安を感じるかもしれませんが、抱えている不安を少しでも軽くするために、そして、不安の正体を1%でもクリアにするために受けに行くのだと繰り返し伝えてくださいね。

まとめ

さて今回は、「適性検査型の模試はいつから受けるべきか?」というテーマでお伝えしてきました。

まだまだ手探りで進めるしかない時期ではあるのですが、塾に通っている方もそうでない方も、まずは一度、直近で申し込める模試がないか、ぜひ検索をしてみてください。

規模の大きな塾に通っているのであれば定期的に大きな模擬試験があるはずですが、それとは別に、もう一つ、解説授業がある模試や、私立中学を貸し切って行われるような外部模試も探してみてください。

通っている塾で受けられる模擬試験は、いわゆる「ホーム試合」です。

本番は全く違う空気感がありますから、場慣れのためにも、「アウェイ」の会場で受けることも、良い経験になります。

また、通っているところとは別の塾の模擬試験を受け解説授業を聞くことで、緊張感から普段通っている塾の授業よりたくさんの学びが得られることもあります。

模擬試験は、「そろそろ今年出そうだぞ」と、その道のプロ達がにらんだジャンルや傾向が詰まった貴重な資料でもあります。

模擬試験に出題された問題と非常に似たような問題が本番出題されることもあるので、スケジュールが合う模試は積極的に参加するようにしてみてください。

受けた模試の問題や解説、解き直した用紙などをきちんとファイリングし、直前期にもう一度取り組めるような仕組みづくりも、今のうちから整えておきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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